【感想・ネタバレ】海賊とよばれた男(上)のレビュー

あらすじ

すべてのビジネスマンに捧ぐ。
本屋大賞の話題作、早くも文庫化!

ページをめくるごとに、溢れる涙。これはただの経済歴史小説ではない。

一九四五年八月十五日、敗戦で全てを失った日本で一人の男が立ち上がる。男の名は国岡鐡造。出勤簿もなく、定年もない、異端の石油会社「国岡商店」の店主だ。一代かけて築き上げた会社資産の殆どを失い、借金を負いつつも、店員の一人も馘首せず、再起を図る。石油を武器に世界との新たな戦いが始まる。

石油は庶民の暮らしに明かりを灯し、国すらも動かす。
「第二の敗戦」を目前に、日本人の強さと誇りを示した男。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

開いて1ページ目「この物語に登場する男たちは実在した」

この一言ですごく気持ちが引き締まった。一体どんな物語なんだ…と。

読み進めてみると第二次世界大戦の前後を生きる一人の男、国岡鐵造の生涯を描いたものだということが分かった。

もちろん時代柄、納得しかねる部分も無いわけではないがそれを差し置いても真っ直ぐな姿勢が私の目にはとてもカッコよくうつった。「黄金の奴隷たる勿れ」「生産者と消費者が共に得をするのが正しい商い」こういう部分が実社会で実施されづらいのは、時代のせいではなく人間の根本的な思考なのだろうと強く感じた。

下巻にも期待。

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2025年02月28日

ネタバレ 購入済み

幾重もの苦労を乗り越える鐵蔵

国岡鐵蔵の国岡商店、エネルギーの将来は石油にあると考え、石油の販売を始める。
明治の終わりから戦前の昭和そして戦後と一貫して石油製品の販売事業に携わった。
事業の初期は、日本は未だ家の燃料は薪や炭が中心であり、自動車も数えるほどしか走っていなかった。
そん中、機械油に活路を開くも、外資系との品質の差は歴然だった。
国内市場は既存の大手会社が市場を形作り、石油を売りたくても売れないという状況ではあったが、販売の地を満州に移したことで、満州鉄道に機械油を納入することが出来、なんとか商店の活動も軌道に乗るのだった。
国岡商店は社長、鐵蔵の「社員は全員家族である」という経営理念と、生産者と消費者直接結びつける斬新な販売方法をもってしても赤字続き、やがては運転資金の枯渇に見舞われて借金を重ねるほどの苦労続きだった。
上海に支店を出して、灯油の販売で売り上げを伸ばすのに成功する。
しかしその頃から、この地域に戦争の影が色濃くなった。やがて、満州事変が起きて、それから太平洋戦争に発展していった。
資源がもともと少ない日本は戦争の始めだけ奇襲作戦が成功したのみで、その後は負け戦さ続き。
シンガポール進出で獲得とした蘭印石油の発掘を援助することにはなるが、制海権を失った日本への石油の搬送は多くの運搬船が沈められて困難を極めた。敗戦は当然の結果だった。
鐵蔵の国や社会を思う気持ちは強かった。敗戦後もひたすら、他の企業がしないタンクの浚いや石油とは関係ないラジオの修理などの事業をして食いつないだ。
若い頃、鐵蔵に送られた「士魂商才」の言葉通り、そのままを体現した人の物語である。

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2020年06月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

サービスアパートの図書室で借りた。
敗戦の夏、国岡鐡造は借金以外なにもかも失っていた――。20世紀の産業を興し、戦争の火種となった巨大エネルギー・石油。その石油を武器に変えて世界と闘った男とはいったい何者か。
出光興産創業者の出光佐三がモデル。
2013年本屋大賞受賞。

鐵造が興した国岡商店は「人間尊重」を大事にし、創業以来、馘首も就業規則も出勤簿も定年もない。戦後、仕事がない時でも誰ひとりとしてクビにはしなかった。
「店員は家族」だと言って信頼していたからだ。
“「ぼくは若か店員たちば家族と思うとる。皆、優秀やけど貧しくて上の学校さん進めんやった子供たちたい。彼らば親御さんから預かったときから、兄であるぼくが彼らば立派な人間にする義務が生まれたとたい」”

戦後、石油を扱えなくなったので専門外のこともなんでもやった。定置網や醤油工場に社員を派遣したりラジオの修理も。

上に立つ者が率先して働く様子には惹き付けられる。だからか、大変な仕事でも社員はみんな前向きで。

印象的なのは、創業資金を無償で提供してくれた日田重太郎の言葉。
「絶対に諦めるな。もし失敗してすべてを失えば、一緒に乞食をしようじゃないか」
この言葉があるから、鐵造も頑張っていられるのかも。

海賊と呼ばれるようになった由来。
“国岡商店はどんどん販路をひろげ、ついには門司、下関の漁船と運搬船の七割近くの船の燃料を賄うまでになった。門司と下関の石油特約店たちは、関門海峡を暴れまくる国岡商店の伝馬船を「海賊」と呼んで怖れた。”

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2025年09月07日

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