あらすじ
すべてのビジネスマンに捧ぐ。
本屋大賞の話題作、早くも文庫化!
ページをめくるごとに、溢れる涙。これはただの経済歴史小説ではない。
一九四五年八月十五日、敗戦で全てを失った日本で一人の男が立ち上がる。男の名は国岡鐡造。出勤簿もなく、定年もない、異端の石油会社「国岡商店」の店主だ。一代かけて築き上げた会社資産の殆どを失い、借金を負いつつも、店員の一人も馘首せず、再起を図る。石油を武器に世界との新たな戦いが始まる。
石油は庶民の暮らしに明かりを灯し、国すらも動かす。
「第二の敗戦」を目前に、日本人の強さと誇りを示した男。
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幾重もの苦労を乗り越える鐵蔵
国岡鐵蔵の国岡商店、エネルギーの将来は石油にあると考え、石油の販売を始める。
明治の終わりから戦前の昭和そして戦後と一貫して石油製品の販売事業に携わった。
事業の初期は、日本は未だ家の燃料は薪や炭が中心であり、自動車も数えるほどしか走っていなかった。
そん中、機械油に活路を開くも、外資系との品質の差は歴然だった。
国内市場は既存の大手会社が市場を形作り、石油を売りたくても売れないという状況ではあったが、販売の地を満州に移したことで、満州鉄道に機械油を納入することが出来、なんとか商店の活動も軌道に乗るのだった。
国岡商店は社長、鐵蔵の「社員は全員家族である」という経営理念と、生産者と消費者直接結びつける斬新な販売方法をもってしても赤字続き、やがては運転資金の枯渇に見舞われて借金を重ねるほどの苦労続きだった。
上海に支店を出して、灯油の販売で売り上げを伸ばすのに成功する。
しかしその頃から、この地域に戦争の影が色濃くなった。やがて、満州事変が起きて、それから太平洋戦争に発展していった。
資源がもともと少ない日本は戦争の始めだけ奇襲作戦が成功したのみで、その後は負け戦さ続き。
シンガポール進出で獲得とした蘭印石油の発掘を援助することにはなるが、制海権を失った日本への石油の搬送は多くの運搬船が沈められて困難を極めた。敗戦は当然の結果だった。
鐵蔵の国や社会を思う気持ちは強かった。敗戦後もひたすら、他の企業がしないタンクの浚いや石油とは関係ないラジオの修理などの事業をして食いつないだ。
若い頃、鐵蔵に送られた「士魂商才」の言葉通り、そのままを体現した人の物語である。
Posted by ブクログ
【第10回本屋大賞】
国岡商店、今の基準で言うとブラック企業。人と人の距離が近かった昭和を感じさせる社風。社交性のない私的には、適度な距離間のある現在が好きですが、人が人に魅了されて「この人のために」ということがあった時代が懐かしくもあり。
先の大戦の官僚の愚かさと、軍部の狂気に振り回されながらも、鐡造の国を思う情熱に泣けること数回。
政治に関わる軍人は、特に先の大戦の軍人は、もはや軍人の誇りなどなく、国を守るという本来の職務を放棄していると思わざるを得ない。
共産主義、資本主義、君主制など国の在り方はいろいろありますが、国家とはそもそも何か、ということを本を読みながら考えました。
後半。実在の人物をモデルとしている鐡造への国岡商店店員の心酔ぶりが、ちょっとひきました。小説なので、そこはあまり気にしなくてもいいのかな?
Posted by ブクログ
国岡鐵造の熱い物語に引き込まれています!
詳しい感想は下巻で書くとして、これだけは書いておきたい。まさか『永遠の0』の主人公宮部の名が出てくるとは…‼︎
Posted by ブクログ
やはり歴史小説は面白い。
ただ、なぜ主人公を実名にしなかったのかという疑問が最初にわきました。
内容は個人の誹謗中傷など一切なくほとんど事実だと思われますが・・何か出光家から「待った!」がかかったのでしょうか?
それにしても、敗戦で負け犬根性に成り下がっていた多くの日本人の中で、孤立無援でこれだけ自分の信念を貫きとおし、その夢を実現させた彼の手腕はやはり驚異です。
その強引ともいえる手法には毀誉褒貶があるでしょうが、彼の信念に共鳴して集う多くの人間がいたという事実は、やはり魅力的な人たらしだったのでしょう。
昔、「民族資本」って何だろう?と思ってはいましたが、「外国資本」と対義語で使われていたのですね。
こうした事実をもっと早く知っていれば、出光SSでしか給油しなかったのに・・
とはいえ、企業の神格化はいけませんので、問題も指摘しておきます。
諸問題:(ウィッキペディア)
・出光タンカー廃油投棄事件 - 1980年(昭和55年)
出光のタンカーが洋上に廃油を不法投棄していた事件が発覚した。
出光は原油を運んだ空きのタンカーに廃油を積み込んで洋上で投棄していた。
当時、国会でも海洋汚染の問題として取り上げられた。
・公害防止協定の虚偽報告 - 2003年(平成15年)
愛知製油所において、愛知県および知多市との公害防止協定に基づく報告データを虚偽報告した。
2003年(平成15年)1月から2005年(平成17年)12月までの3年間、愛知県および知多市に報告した管理項目の報告データ1,454件中584件において測定データと異なっており、報告値を改ざんしていた。
この虚偽報告のうち、ばいじん総排出量1件、ばいじん濃度16件の協定値超過であった。
なお、ばいじん濃度16件中2件は「大気汚染防止法」および「電気事業法」の規制値を超過していた。
本事件は、電気事業法に関する中部近畿産業保安監督部の立入り検査(2006年(平成18年)2月22日)中、過去のばい煙管理項目について整合の取れない記録が確認されたことを契機に社内調査した結果判明した。
・北海道製油所の火災不届け事件 - 2003年(平成15年)
北海道苫小牧市の製油所における火災を消防署に届けず、報道された。
最初のタンカー廃油投棄事件は出光佐三が経営から既に退き、第4代の社長の時、しかも亡くなる1年前の出来事ですので、社名に泥を塗ったと烈火のごとく怒ったのでしょうね。
ヤマト運輸もそうですが、創業者がどんなに偉くても、その魂を引き継げない経営者にバトンタッチされると企業は容易に腐っていくという事例なのかもしれません。
文庫本での堺屋太一氏の解説は、元通産官僚としての「官僚の倫理と論理」について説明をしています。
ことごとく出光を目の敵にした当時の官僚には「愛国心」がないのかという疑問に対し、戦後の復興期に必要だった「供給安定、過当競争排除」こそが優先されるべき目標だったとしているが、抜け落ちているのは技術革新や企業努力によってのコスト削減での消費者への利益還元だったと告白しています。
ただし、官僚の企業寄りのスタンスは未だに彼らの省益確保という名目で温存されているのには困ったものです。
そして百田氏がこの小説を書くきっかけになったのが、
【朝日放送の人気番組『探偵!ナイトスクープ』に「アポロマークの首から下はどんな感じなのか調べてほしい」という依頼が送られたことがある。
ちなみに同番組のチーフ構成作家・百田尚樹は、後に創業者の出光佐三と日章丸事件をモデルとした小説「海賊とよばれた男」を著している】
というめぐり合わせだったことも面白い。