あらすじ
滅びゆく武芸の流派を調べる公儀武芸帖編纂所。編纂方の水軒三右衛門は、かつての相弟子・和平剣造から“まだ見ぬ娘”のことを託された。探し回ったところ、娘は剣術の女道場主となっていた。小太刀の遣い手の女道場主に、三右衛門から話を聞いた編纂所頭取の新宮鷹之介も心を配る。しかし、その道場に黒い影が忍び寄っていた――。落涙必至のシリーズ、第八弾。
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剣豪だといえ、結局生身の人間
将軍家斉の命で、新宮鷹之助は自宅内にある武芸帖編纂所で、廃れゆくそして人から忘れ去られる剣豪たちの武術を書き残している。
編纂所の編纂方は、いずれもその道に通じる達人たちであった。
そうした剣豪たちも思いも寄らないことで普通の人間に立ち返る。
三右衛門は風邪を引き高熱を出して3日間療養する羽目となった。その間、三右衛門は己自身の来し方行く末に思いを馳せるのである。
それを見た鷹之助は、病み上がりの三右衛門に3日ほどの休暇を与えた。
三右衛門は内藤新宿で噂に上る剣豪が、昔三右衛門が大和柳生で修行したとき、相弟子の和平剣造だと知り彼の住まいを訪れた。剣造は労咳を病んでいたが、果たし合いの約束を抱えていた。決闘の勝負は、見事に剣造が相手を倒して決着するのだが・・・剣造もその後体力気力をすり減らして病死する。思わぬ相弟子との死別だった。
剣造には柳生にいた頃、つき合う女、向田秀がいた。お互い武芸者故に離ればなれになり、しばらくして秀は娘を生んで、娘を武芸者として生きる術を授けて亡くなり、娘の行方も不明だった。
剣の道を極めるには、強い体で厳しい修行に耐えて、情熱を傾け、太刀型を求めてひたすら稽古に励む。しかもいつ果てるとも知れない孤独な人生を歩まねばならない。思いを寄せる女ができたとしても、寄り添うこともかなわない。
三右衛門は、今47歳。病気が引き金となり、己の身の処し方を想うに、大きな間違いは無かったと確信している。
休暇の後、頭取の鷹之助から、浅草の外れで道場を開いて、気炎流小太刀術の女師匠がいると教えられた。
芸者春太郎がこの道場に通い、小太刀術を習得した。そして武芸帖に書き残す資格があるほどの武芸と話すのである。
三右衛門が調査でその道場に通う中、その女師匠こそあの剣造と秀の間に生まれた娘、登世だと確信。
三右衛門には、登世に情が湧いた。周りの頭取始め編纂方からは、優しく応援の言葉を掛けられた。
しかし結末は、三右衛門の武芸者としての生き方で締めくくられている。