あらすじ
「天子諸芸能のこと、第一御学問なり」と禁中並公家中諸法度で規定され、政治的には無力であったとされた江戸時代の天皇。しかし、後水尾天皇や霊元天皇は、学問や和歌を奨励して権威を高め、光格天皇は天明の飢饉の際に幕府から救い米を放出させたばかりでなく、応仁の乱以降に失われた御所を復古再建させた。老中・松井平定信が説いた大政委任論など、幕末動乱の中で孝明天皇を権力の頂点に押し上げた原因を究明する。
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Posted by ブクログ
足利が武家のために立てた北朝の末裔、皇位が南北朝に別れたため朝廷の勢いが減じた流れで、武家社会という変革、そして戦国時代という荒波のせいでついに絶えかけた天皇・朝廷、江戸時代の天皇はこれを復古せんと時の権力者と利用・対立を繰り返すなかで政治的力を復活してきた
後水野・霊元天皇時代は文化・学問を通じた権威の再構築を目指す、政治的には無力化された天皇が、学問・和歌・朝儀の奨励により、ソフトパワーとして存在感を高めていく、禁中並公家中諸法度で「天子諸芸能のこと、第一御学問なり」と位置づけられた伝統を、積極的に活用した戦略が幕末の権威づけに役立った
剛腕光格天皇の積極的な役割が目立つ、個人的に「中興の祖」認定(笑)応仁の乱以降荒廃した御所の復古再建や、天明の大飢饉時に幕府から救い米を放出させるなど、民衆救済を通じた「君主」としての実践がカッコいい
閑院宮家(現皇室の直系)からの即位という傍系ながら、朝廷の権威を権力寄りに引き上げた生き生きとした描写が読み応えがある
文久年間が天皇家に激震をもたらした、朝幕の複雑な依存・駆け引き関係が複雑だが抗えぬ急流を思わせる、単なる抑圧ではなく、幕府が朝廷の権威を利用しつつ統制しようとする一方、天皇側が幕府の安定や経済支援をてこに「皇国」意識や朝儀再興を進めた緊張感あるバランスゲーム、勝者はどっちやろね
単なる「復活の流れ」だけでなく、文化・民衆・朝幕関係の多層性と長期的な皇統意識の蓄積が強調される一冊