あらすじ
偉大な師にして父親の親鸞に認めてもらおうと善鸞は東国行きを志願するが、父子の懸隔はかえって広がる。一方で最後の闘いの時も迫っていた。怪僧・覚蓮坊、謎の女借上・竜夫人、若き日に出会ったツブテの弥七、黒面法師らとの、永く深い因業が解き明かされる。そして、九十歳で入滅――。渾身の三部作、完結。
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Posted by ブクログ
飽く迄も人間として生き抜いた親鸞。悪人正機と他力本願、そして名号。すべてを語るのは難しいが、極限まで凝縮すれば凡そこの三大要素に帰結する。
何かの本で、或る人が松下幸之助に成功の秘訣を訊ねたとき、松下曰く、それは運だと答えたらしい。では運を得るにはどうすれば良いのかと訊ねると、曰く、徳を積むことだと。
成る程、いま、他力に就いて思索をめぐらせれば、このときの松下の言には頷かされるばかりである。
親鸞は作中、幾度も危機に陥った。それはもう開幕から暴牛に殺されかけ、六波羅童や傀儡師たち、対立する僧らや、果ては雨乞いの為に命懸けの念仏を唱える羽目にもなった。難行苦行の果てに幾度も命を落としかけた。
思い出したいのは、いつでも誰かと結んだ縁が親鸞の佑けになったということである。親鸞自身には、自力で状況を打開する術は無かった。しかし扶けて呉れる誰かがいつでも彼の側にいた。
名作『君たちはどう生きるか』の作中でコペル君は世間の人々を分子に喩えた。これも言い得て妙である。
或いは、世間とは途方もない大河のようなものかもしれない。人間はその中の水分子の一つ、1H₂Oに過ぎない。
河にはいつでも流れがあるが、分子の分際で河の流れを変えることは出来ない。流れをつくるためには、他の水分子と結合しなければならない。そうして結合に結合を重ね、遂に流れを変えるに至ったとき、それは果たして1 H₂Oの自力だろうか。
古今東西、凡ゆる哲学者や思想家たちが追究した真理の一端が、こんなところにもせせらいでいる。
Posted by ブクログ
本書にてシリーズ完結。
無知故にどこまでが史実かはわかりません。
もとより、親鸞に纏わる資料事態も少なく、その生涯には不明なところも多いようです。
始まりとなる青春篇が世に出た時から気になっていた本書を含めた三部作。
私の中の親鸞は本書の中が全てと言っても過言ではありませんが、出会えて良かったと思える作品でした。
内容(「BOOK」データベースより)
偉大な師にして父親の親鸞に認めてもらおうと善鸞は東国行きを志願するが、父子の懸隔はかえって広がる。一方で最後の闘いの時も迫っていた。怪僧・覚蓮坊、謎の女借上・竜夫人、若き日に出会ったツブテの弥七、黒面法師らとの、永く深い因業が解き明かされる。そして、九十歳で入滅―。入魂の三部作、完結。
著者について
五木 寛之
1932年福岡県生まれ。朝鮮半島より引き揚げたのち、早稲田大学露文科に学ぶ。PR誌編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門』(筑豊篇ほか)で吉川英治文学賞を受賞。81年より一時休筆して京都の龍谷大学に学んだが、のち文壇に復帰。2002年にはそれまでの執筆活動に対して菊池寛賞を、英語版『TARIKI』が2002年度ブック・オブ・ザ・イヤースピリチュアル部門を、04年には仏教伝道文化賞を、09年にはNHK放送文化賞を受賞する。2010年に刊行された本書は第64回毎日出版文化賞を受賞し、ベストセラーとなった。代表作に『戒厳令の夜』、『風の王国』、『風に吹かれて』、『百寺巡礼』(日本版 全十巻)など。小説のほか、音楽、美術、歴史、仏教など多岐にわたる活動が注目されている。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
五木/寛之
1932年福岡県生まれ。戦後朝鮮半島から引き揚げる。早稲田大学文学部ロシア文学科中退。’66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、’67年『蒼ざめた馬を見よ』で第56回直木賞、’76年『青春の門』で吉川英治文学賞を受賞。’81年から龍谷大学の聴講生となり仏教史を学ぶ。ニューヨークで発売された『TARIKI』は2001年度「BOOK OF THE YEAR」(スピリチュアル部門銅賞)に選ばれた。また’02年度第50回菊池寛賞を、’09年にNHK放送文化賞を、’10年には長編小説『親鸞』で第64回毎日出版文化賞特別賞をそれぞれ受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)