あらすじ
半島を形作る三国の平和がついに崩れ去る……。ソニンとイウォルが暮らす<沙維>は<巨山>に狙われ、<江南>も争いに巻き込まれる。平和を望む王女・王子たちは、密かに行動を起こし、平和を取り戻そうと動く。少女・ソニンが最終的に選んだ道は? ついに物語が完結する!
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Posted by ブクログ
まず、夢見の力というのが限定的な力なのがちょうどいいものでした。未来を見通すのではなく、夢で魂を飛ばしてある場所のことを視る。ただそれだけなのです。でも、それはどういう状態だったのか、何がおこっていたのか、場所はどこなのか。というのを知識でもって判断し伝えるということを巫女は行っているというとこです。
超越した力ではありますが、己の知識がなければただ無意味な力であり、賢くあるための教育と欲を抑えるためのルールが課されているがよかった。
そして、その夢見そのものができないことでただ人に戻るのですが、ソニンは賢かった。そして欲がないソニンがだんだんと人の世の嫉妬や羨望、悪い心を知りつつも、周りの人に恵まれてまっすぐ成長していくのがさっぱりとしてよかったです。
わかりやすく対照的なキャラとしてその知識を濫用したり、ふてくされる人がいたのがそれを顕著に感じるエピソードとしてありました。
はてしない物語と比べてしまって申し訳ないんだけれど、主人公が子供ゆえの傲慢さ愚かさや英雄になったが故の無敵感を得てそれから壁があって、その凝り固まった厚顔無恥な性格が清廉(といわずとも常識的)になっていくという物語が苦手です。大体が読んでて腹立たしく、もっと周りの意見を聞けよと思うので。その点、ソニンでは王子がその役割でしたが、主人公は欲がない子で"くもりなきまなこ"を持ちうる聡い子だったので、好ましい!と思う所以だったかと思います。
Posted by ブクログ
『天山の巫女ソニン』シリーズ最終巻。巨山国と江南国の同盟、巨山から沙維国への侵攻、そして三国の和平までが描かれ、未来への仄かな希望を見せて物は閉じる。
一番大切なのは「夢見であれ現実であれ、自分の目でしっかり観察することと、自分で考えることです。それはどこの国であろうと、いかなる世界であろうと変わりません」と言い切るソニンの姿は眩しく、そしてこの言葉がシリーズの底に流れていたテーマであることを再確認させられた。
柔らかいながら無駄が削ぎ落とされた文体と、さり気ないながら緻密に書き込まれた社会状況は、一見地味にも見えて、しかし説得力をもって響く。もっとこの世界のことを見ていたい、と思わされるシリーズだった。