あらすじ
京の邸に迎えられ匂宮の子を宿した中の君は、亡き大君の面影を求める薫の横恋慕に悩み、異母妹・浮舟を勧める。今上帝の女二の宮と結婚しながら心満たされない薫は、匂宮に迫られ身を隠した浮舟のもとを訪れ、宇治へと連れ去ってしまう。新ヒロイン浮舟の登場で「宇治十帖」はいよいよ佳境へ。第9巻は、早蕨、宿木、東屋を収録。
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Posted by ブクログ
この巻は、源氏が輝いていた時代の物語に匹敵するくらい面白い。ページをめくる手が止まらなくて、ついつい長湯してしまう(お風呂で読んでいるので)。
本巻では亡くなった大君に瓜二つの浮舟が登場。大君に未練たらたらの薫は、浮舟に恋をしてしまう。一方、薫とワル仲間の匂宮も、浮舟を一目見るなり恋してしまう。今まで散々一緒に女遊びをしてきた薫と匂宮が一躍恋のライバルになるところもこの巻の見どころだ。
今まで出てきた女性たちと異なり、浮舟は意思が弱い。アクシデントとは言え、どちらの男性とも関係をもってしまい、以後どちらかを断ち切ることができない。今までの物語では、いずれは妻として迎えることが多かったのだが、薫も匂宮も浮舟は単なる浮気相手のまま。紫式部は、女性の物腰が柔らかくて拒否せず意思が弱くて負い目があると、都合のいい女になりやすいことをよく知っている。こういった心理描写は本当に圧巻。
寂聴氏の解説によると、この後浮舟は「ドラマティックな運命を辿る」らしい。長い長い源氏物語の最終巻ということもあり、期待が膨らむ。