【感想・ネタバレ】翻訳夜話2 サリンジャー戦記のレビュー

あらすじ

サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の新訳を果たした村上春樹が翻訳仲間の柴田元幸と、その魅力・謎・真実の全てを語り尽くす。ホールデン少年が語りかける「君」とはいったい誰なのか? 村上が小説の魔術(マジック)を明かせば、柴田はホールデン語で、アメリカ文学の流れのなかの『キャッチャー』を語ってのける。永遠の青春文学の怖さ、ほんとうの面白さがわかる決定版です。「幻のキャッチャー・イン・ザ・ライ訳者解説」を併録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

大変に面白かったです。大満足です。

まず、「翻訳夜話2」ということで、第二弾の本ですよ、って事だと思うのですが、「翻訳夜話(1)」は、未読です。そっちを読まずに「2」から読むのって、ある意味アカンやんか、、、と思うのですが、すみませんコッチから読んじゃいました。また機会がありましたら、「(1)」の方も、読みますです。楽しみです。

で、本書の内容をザックリと言いますと、村上春樹さんと柴田元幸さんが、それぞれに
①翻訳というものはなんぞや?を語る。
②「キャッチャー・イン・ザ・ライ」という物語を語る。
③J・D・サリンジャーという人物について語る。
という本、だと思います。

翻訳論、キャッチャー~論、サリンジャー論、その三つを一気に読んじゃえてラッキーだね、という、お得要素の強い本だなあ、って思いましたね。

主に村上さんがガハハと語って、柴田さんが相槌&話の促しに徹する、みたいな組み合わせ?だと思いましたが、二人の息が合ってる感じがバンバンしまして、エエ感じに話が転がってるね、ってのはヒシヒシと感じましたね。

お二人の相性が最悪だったら、全然オモロない感じになってたんちゃう?と思うと、二人で論を進めることの、二人の相性の良さって、大事だなあ、って思いますね。村上さんと柴田さんは、人間的に相性が良いんだろうなあ、とかね、思った次第ですね。

ちなみに、自分は、サリンジャーについては、全然詳しくないと思います。まず、サリンジャーの作品は、絃移転では「キャッチャー~」しか読んだことがないです。それも

①大学生時代?か、大学生卒業してすぐ、ぐらいの時に、野崎孝訳の「ライ麦畑で捕まえて」を読んでみようとするが「あかん。意味わからん」で、読み終えることできず。

②三十代半ばくらいで、村上春樹訳の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を読んでみようとする。一応読み終えるも、「うーん。面白くないなあ」という感想を抱く。

③四十歳過ぎて、再び「キャッチャー~」の再読にチャレンジし、「うーん、やっぱ、そんなに面白くないなあ~」という感想を抱く。

というサリンジャー遍歴ですので、とてもこう、熱心なサリンジャー読者、とは言えない。全く言えない。

なのですが、この作品は大変楽しく読むことができた、というのはね、やっぱ俺は、村上春樹が好きなんだなあ~、というね、そこを理解できた、というね、ま、そんな感じなのですよね。

で、この作品を読んで「こらちょっと、その他のサリンジャー作品を読んでみたくなりましたよ!」とはね、正直ね、あまり、なりませんでしたね。ちゃんちゃん、なんですけどね。村上春樹はやっぱ好き、という思いは、ガンガン固まりましたけどね。

でも、なんだろう。サリンジャー、って人が、傑出した人物なんだろうなあ、ってことは、ヒシヒシと感じました。

個人的に感じたイメージで言いますと、
小説家としてのサリンジャー
ミュージシャンとしてのカート・コベイン(ロックバンド、ニルヴァーナのフロントマン)
この二人は、似ているなあ、って事を感じた次第です。

途轍もないムーブメントを生み出したこと。
人間的に、とても複雑な人物である。明け透けに言うならば、色々と問題のあるメンドクサイ人物、だと思われること。(途轍もない才能と、途轍もないとっつきにくさを併せ持つ)。
途轍もないムーブメントを生み出したことが、結局は本人を、一般的な幸福(と思われる状態)にはしなかったと思われること(サリンジャーは極端なまでの隠遁生活に入り他人とのコミュニケーションを拒絶し、カートは自殺してしまった)。

そんな事を、読んで思った次第です。

でもやっぱ、アレだ。色々と話をしつつも、村上さんが、サリンジャーが生み出した小説に対して、間違いなく愛情と敬意を持っている、ってことはシミジミと感じましたし、そこがなあ、、、好きなんだよなあ、、、ってね、思いましたね。村上さんが、村上さん自身が好きだ!と思うものに対しての思いのたけを語る文章を読むことが好き。つまるところ、そういうことなんですよね。

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2021年04月14日

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