【感想・ネタバレ】違国日記(9)【電子限定特典付】のレビュー

人間はいつから「大人」になるのだろう?

両親の死によって、独身の叔母・槙生に引き取られた中学生・朝。
家にこもりきりの小説家である槙生は、独特な感性の女性。
一方で、朝は両親が死んだことに対して現実感を持てない、大人びた少女。
似ているようで正反対の二人が、日々の暮らしの中でやがて心の距離を近づけていく作品。

槙生が仕事に熱中するのを、さりげなくサポートするしっかり者の朝。その姿はお互いの年齢を鑑みると、ちぐはぐな風景でちょっとおもしろい。
けれど、家の外側や、人間関係のこととなると、槙生は迷いながらも、母性というよりは理性によって、的確な言葉で朝を導く。
15歳の朝にとって、それらの言葉はすぐに理解できないこともある。けれど、現実と照らし合わせながらじわじわと納得していく健気な姿がとても印象的。

では30歳を手前にした自分は槙生と朝、どちらに近い地点にいるのだろう?と考える。
「自分はまだまだ子供」だと思う。けれど、朝が戸惑っている幼い姿を見ると「こうしたらいいよ」と言ってあげたくなることが多々あった。
どんなに大人びていても15歳の朝が大人ではないように、アラサーの私も着実に大人になっているのか、と気づかされる。
槙生を「違国」と感じながらも、朝も確実に「大人」へ近づいている様子を、そっと見守っていきたい。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

葬儀の時の自分の発言について、
良いことを言ったつもりで言った自分が最悪に恥ずかしい。でも言わなかったパターンよりはまし
と思っている慎生ちゃんがなんだか可愛い。


なぜ小説を書いているのか。
人生に目的があるのがうらやましいと言う朝と
えみりだが、大人たちにも子供だった時があることわかっていないのだろうな。
目的を見つけるまでにどれだけ足掻いて、
見つけてから今度はまた別のところにたどり着くためにどれだけ足掻いていることか。

作家3人のお茶会が可愛いし面白かった。

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2024年06月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今一番新刊を心待ちにしている本の一つ。

page42と43の流れが好きだ。
横にどーんと広いコマ三つの展開。
ヤマシタトモコさんのシンプルな線で描かれる世界の切り取り方が好きだ。
同じフォーマットの中で繰り返される日常、その中で朝とその周りの人たちと話して1日が過ぎていく、それを切り取る・・・みたいな。シンプルな線と深く切れ味の良い科白と、表現の広さと。

そのあとのpage43の朝の独白。
船のくだり、ぐうっと胸の真ん中を掴まれたよう。

健やかに育つ若いのちを見守るのは、なんで嬉しくてそして寂しいのだろうか
裏表紙の槙生ちゃんの科白そのものだ。

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2022年05月02日

ネタバレ 購入済み

わかりあえない → わかりたいけど を経て

「相手を想像してみよう」にたどりついたような気がする今巻

雑な感想だけど「尊い…」と思う


創作はしないけど「書かずにいられない」性分なので、「どうして書くの?」と聞かれると、自分も困るなぁなどとも

#感動する #エモい #切ない

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2022年05月01日

ネタバレ 購入済み

閑話休題的な

話が進むわけではなく、キャラ達の日常会話が溢れる巻でした。
子供の頃に槇生ちゃんみたいな人が側にいたらどんな子供時代になっただろうかと、考えてしまう。朝はこの先、どんな事が起ころうとも槇生ちゃんがいるかぎり、真っ直ぐなまま大人になって行くのだろうか。
槇生ちゃんのラノベ読みたいわ~

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2022年04月27日

ネタバレ 購入済み

今回は二人のおはなし

槙生さん、朝ちゃんとの関係が中心の巻。
最近は周りの人のことが多かったので、二人が中心なのは久しぶりかも?

自分自身、若い頃から思慮が浅かったんだなーと改めて思います。この本を読む度に。なので、読んでいる間や読んだあとは、有り難いことに色々なことに思いを巡らせています。

朝ちゃんが、『これから先に意味が分かることがあるかも』と話していて、自分もその経験があるので、“過去に言われたことが後になりストンとおちる”感覚を思い出しました。本当にこちらの本、言葉、間、が凄いなーと思います。

“もしも”の話にクスリと笑ってしまいました。ふふ。
次巻も楽しみです。

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2022年04月27日

匿名

ネタバレ 購入済み

第九巻

高校二年生の夏になった朝にはあることが気になっていた。
それは「才能」とはなにかということだった。
家に笠町が来て三人で話しているときに持ち上がったその議題は途中で終わってしまったが後日もう一度話題になったときに槙生に聞いたときに彼女が言ったのは才能とは「やめられないこと」だという……。

「才能」を持ついろいろな人たちを見てきて思うのはやっぱりやめずに続けることだなぁと、その人たちが血を流すかのようなつらい目に遭わされてもそれらを続けているのを見てそう思ったのを思い出した。

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2024年04月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

朝のように真っ直ぐに受け止めて真っ直ぐに疑問を持って真っ直ぐ投げ返す部分がまだ自分にもあると思っていると同時に、槙生のようにいじけた大人になってしまったと思うことがある。だけど槙生と同じように朝の真っ直ぐさが羨ましくも思う。そんな真っ直ぐにもがき悩み進む朝を見てるとなんだか妙に泣きたくなる。
「無力感を肯定しないでいてあげたい。まだ行けるからまだ止まらないでって。」という槙生の言葉に共感した。無力でいることは心地がいいからそこで立ち止まる人の方が多い気がしているけど、思考停止ってものすごく寂しい。もしかしたら肯定しないことってエゴイスティックで傲慢かもしれない。それでも人間を信じたい。

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2022年06月08日

ネタバレ 購入済み

ドラマチックさはないけれど

各エピソード、何が起きるということもないけれど、何気ない会話の応酬に、じわじわと沁み込むものがあったり、考えさせられたりします。

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2022年05月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自分よりできるっぽい人を見て、自分は立ち止まりそうになる。どうせどこにも行けないし、と言い訳するのは、どこに行けるかわからないから。でもどこかに行きたいし、その背を押してほしいし、行く先を照らしてほしい。朝が成長しているなぁと思うと同時に立ち止まりそうだなぁとも。槙生さんが薦めてくる本が『ふたりはともだち』なのが最初は意外に思ったけどちょうどしっくりきた。相手を否定しないし自分と同一視しないようにするけど隣にいるがまくんとかえるくんの話と思えば。それにしても木星さんかわいいですね。

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2022年04月30日

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