あらすじ
老中から町奉行所の同心まで、江戸幕府の職制には数あれど、一番怖い権力を持つもの──それが高級旗本「大目付」であった。なにしろ、自分より禄高が上の大名を監察するだけでなく、その気になれば、将軍直訴という特権を使って、老中の首さえも飛ばすことができたのだ。そんなおっかない役職に、若き正義漢、朽木隼人正三郎頼光が着任する。彼は下城すると、無役小普請組“光三郎”に変身して町を徘徊。世継ぎ騒動、抜け荷、家老の謀反などなど、諸大名の噂や情報を収集し、お殿様たちの不正、腐敗を容赦なく暴いていった。だがその行く手に、本人も真っ青になる大物の陰謀が明らかに!大目付光三郎、果たしてどうする!!頭が高いお大名たちを捕縛する、斬新な捕物シリーズ、いざ開幕!
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大目付、光三郎の鮮やかな活躍
徒目付の朽木隼人正、通称光三郎は、中山丹後守から推薦されて大目付に抜擢された。大目付は、大名諸侯や高家などの監視に当たるお役目である。
光三郎がお城に上がったその日、奏者番の控えの間で新米の奏者番を苛める他の古参大名を目撃し、それを咎める事から物語は始まる。
第一話は、重い病に罹り藩主が参勤交代で江戸に着任できず、代わりを勤める奥方が国元の殿様の病を気遣い、国に帰りたいと想いを巡らせる。家老が奥方によく似た女を身代わりに据えて、奥方が留守する一時を凌ごうと画策した。しかし「出女」は御法度である。
光三郎は、こうした不正の匂いがするネタを禹湯という湯屋の2階、お休み処で町人たちの会話を通して知るのである。禹湯の女中、お幹もまた光三郎の良い助っ人になる。また、大名の事情を知るために草子本などを商う荒木屋の主人とも懇意になる。さらに、光三郎は、同じ町内の幼馴染み、東雲又一郎も仲間に入れた。
第二話の抜け荷、第三話、お世継ぎのお家騒動、第四話の辻斬り、試し斬りの話しでも、事件性が疑わしい話しを禹湯で交わされる会話で知り、情報通の荒木屋で大名家の最新情報を聞き取る。
光三郎は、頭も切れるし剣の腕も確かだ。芯が通り、身を立てる歳の武士であり、これら四つの事件を鮮やかにそして明快に解決した。
しかしながら、光三郎を大目付に推薦した中山丹後守からは、光三郎の働きぶりが逆に非常に迷惑なものであったようで、丹後守は光三郎に刺客を送り殺害しようとする。
参勤交代や鎖国は、大名にはとても厳し過ぎる制度だ。彼らから不満が湧き出るのも当然だ。しかも譜代大名でも、災害や飢饉など財政上の問題がよく出る。他方で徳川幕府の硬直した体制が依然と続いている。不満を持つ大名も多かれ少なかれ居るのだろう。束縛がきつく融通の効かない幕府の政策。
光三郎も役目とはいえ、ためらう気持ちが全くなかったのだろうか。もちろんそうした気持ちがあれば、お役目を果たすのに陰りが出てしまう・・・
生きづらさを感じる時代である。物語の続編を楽しみにしたい。