あらすじ
旗本である朽木隼人正三郎頼光、通称、光三郎は、いつものように深川の湯屋の二階で酒を呑んでいた。そんなお気楽な姿を見て、周囲はみな無役で暇な役人だと思っている。ところがその正体たるや、恐れ多くも自分より石高の高い大名を取り締まる、大目付職に就く男であった。本当は誠におっかない存在の光三郎が、今日もあらゆる難事を追う──!近頃、江戸の町々で器量良しの娘たちが神隠しに遭うという噂が立った。この怪事件に大名が関わっていると睨んだ光三郎は探索を開始。ついにある公家と京都町奉行の悪巧みを掴む。だがその裏には、幕閣をも揺るがしかねない野心が……。将軍のおん為、光三郎の奮闘が始まる!上様に代わって邪なお殿様を捕縛する大捕物シリーズ、好評第三弾!
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出世競争
この物語の4件の事件は、京都から来た謎多き公家、穂波将監とその手下が実行したものである。穂波将監の姿形、すなわち何者なのかがなかなか浮かび上がらない。
江戸の寺を舞台に、忽然と消える8人の江戸小町の拐かし事件や、化猫で市中を恐怖に陥れ、不正な賭博が開催される事件など、穂波将監が企んだ悪事であった。
そして馴染みの大目付朽木光三郎は、穂波と連んで城中の奉行や老中たちの犯罪を暴いて成敗する。
江戸の街の安全と平穏を願う光三郎は、第三話で幼馴染みの東雲又一郎と一緒に穂波の探索を続ける中、忍びの一団に弓矢で襲われて足に深手を負った。大目付、長尾清之進が代わって穂波の行方を追及していたが、長尾自らの援護者である、城中で奏者番を務める大名に殺害された。光三郎は、奏者番たちに言葉巧みにカマを掛けて犯人を突き止め、長尾清之進殺害の咎で三輪丹後守を召し捕り、見事に清之進の仇を討った。
光三郎の活躍は見事であり、物語は快調に進んで読み易い。そして物語の核心は「出世」だといえる。
最後、第四話「側室」。
この一連の物語は、宮家の姫の嫁取りの話しが光三郎に寄せられた事が始まりである。しばらくすると、相手が変わり京都西奉行、新垣新三がその相手に変わる話になり、その話が変わったことに何か不信感を感じたる光三郎だった。
更に、将軍家治に、五摂家の一つ鷹司家の姫を側室にという話しが来る。家治には正妻との間に娘ばかり二人がいるが、世継ぎの男子がいないからだった。京都より旅して来て、姫君が城中大奥に入ったところを、光三郎はその時も依然と真偽を疑い、将軍に代わって大奥に入り確認をしようとした。姫が光三郎に短刀で向かってきたが、光三郎は姫を成敗し将軍を救ったのである。その姫君こそが穂波将監であり、当の穂波はすでに老人だという。ただ、穂波には二人の子供がいてそれも双子の姉妹、一人は先に述べた三輪丹後守の妻女であり、もう一人は男女不明の者になっていて、物語を読んで非常に惑わせるところである。
物語を読んで意外や意外、どんでん返しを喰らったが、非常に面白い物語で家治治世がどんな時代だったのか、リアルに考えるきっかけになった。