【感想・ネタバレ】わが闘争(下)のレビュー

あらすじ

世の趨勢につれ、亡霊のように消えては現れるヒトラー・ブーム。この無気味な現象は、いったい何を意味し、何を志向しているのか。その謎を解く鍵を秘めた本書、『わが闘争』。それは、独裁者ヒトラーの出現を許した混迷の政治風土と酷似する現代において、予想外の意味をもってわれわれに迫ってくる。ヒトラーが本書で語るその恐るべき政治哲学、魔術に近い巧妙な政治技術は、現代政治の虚構を見抜く有力な手掛かりとして、今なお多くの示唆を放っている。戦争体験のない世代が増えている現代において、若者はもちろんのこと、全国民にとって、批判的必読の書といえよう。ヒトラーが、世界制覇の戦略と思想とを自ら語った、世界史上稀有の政治的遺書を電子書籍で。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

(上巻のレビューから続く)
下巻のポイントは概ね以下である。(尚、ヒトラーが何を考えていたのかという視点なので、批判的解釈は加えていない)
◆ドイツ民族の未来は、人口増加・資源確保・農地拡張のための領土の拡大にかかっており、植民地政策ではなく、地続きのヨーロッパ大陸内部への進出が必要である。国境は固定的なものではなく、民族の力に応じて変化すべきものであり、国家は生存圏の拡張のために戦う義務がある。
◆平和主義は民族を弱体化させかねず、戦争は生存競争の自然な手段である。国家は常に軍備を増強し、国民に戦闘精神を植え付けるべき。戦争は恐れるものではなく、民族の力を証明し、未来を切り開くための手段である。
◆国際市場や輸入に依存する経済は危険であり、国家は自給自足を目指すべき。農業は重要であり、領土拡張によって食料と資源を確保する戦略が必要。経済活動は個人の利益ではなく、民族の生存のためにあるべきであり、国家はそのために計画的に産業を組織しなければならない。
◆ナチ党は国家の前衛であり、民族再生のために機能すべき。党は厳格な階層構造と規律を有して、忠誠心と能力により人材を選抜し、政権獲得後は、司法・教育・報道などを掌握し、党と国家を一体化させることで民族目的を実現する体制を築く。
◆ドイツ民族は世界秩序を再構築する使命を負い、アーリア人種の覇権を確立すべき。個人の幸福や自由は民族の存続に従属し、国家はそのために全ての力を集中すべき。歴史は力によって決定されるのであり、民族の強化と拡張が至上価値である。
ドイツ出身の著名なジャーナリストであるセバスチャン・ハフナー(1907~99年)は、著書『ヒトラーとは何か』の中で「今日の世界は、それが私たちに気に入ろうが入るまいが、ヒトラーがつくった世界である・・・かつて歴史上の人物で、さして長くない生涯のうちに、これほど根底から世界をひっくり返し、しかもその影響があとあとまで長く続いた人間が、ヒトラーをおいて他にいただろうか」と書いており、私は、それを意識して、二つの問いを立てて本書を読み進めた。
一つは、当時のドイツ人の中でヒトラーは特別だったのか、また、特別だったとすれば、何が特別だったのかである。この点については、第一次世界大戦後のドイツでは、敗戦、経済危機、ヴェルサイユ条約の屈辱から、国民の不満が極限に達し、また、反ユダヤ主義、民族主義、議会制への不信も広く存在しており、ヒトラーの思想は極端であったものの、当時のドイツ社会で完全に孤立したものではなかった。そうした中で、ヒトラーが特別だったのは、大衆心理を理解し、カリスマ性と卓越した演説力を持ち、政治戦術に長けていたという点なのである。
もう一つは、現代の国際情勢において、ヒトラーを他山の石とするなら、どういう視点を持つべきかであるが、こちらは枚挙にいとまがないであろう。単純なスローガンで人々を扇動し、(移民や反対政治勢力という)敵を設定して社会の分断を煽り、選挙や議会を軽視して民主主義制度を形骸化するアメリカ。議会制民主主義を否定して指導者に権力を集中し、民族主義に基づいて少数民族を弾圧する中国。国家主義のもと他国への侵攻を行うロシア。そして、反ユダヤ主義というタブーを逆手にとって、自ら民族主義・国家主義に基づきパレスチナを絶滅させんとするイスラエル。。。ヒトラーの思想・政治手法の全てではなくても、その一部または多くを実践する国は少なくない。
私は、「人間はもっと賢くなれる。もっと良い社会を作れる。」と考えるという意味で、理想主義者であり、「リベラル」である(但し、成長至上主義・科学万能主義は否定するし、「人間は過去に学ぶべき」という意味での「保守」には賛同する)。よって、仮に、今後ヒトラーのような素養を持った人間が現れても、「ヒトラーの悲劇」が再び起こることはないと信じているのだが、それは、民衆・社会が成熟し、そのリスクを見抜けることが前提なのだ。
究極の「他山の石」として、一度触れておいてもいい一冊かもしれない。
(2025年12月了)

0
2025年12月19日

Posted by ブクログ

こんなに読み切るのが大変な本は初めてだった。
ある程度歴史を勉強してから読まないと全然わからないと思います。

0
2011年07月27日

Posted by ブクログ

解説にもあるが、主張に一貫性があり、なぜヒトラーが独裁者になったか、ユダヤ人を虐殺したか、理解できる。正しいかはさておき、理論的に通っている。論破出来るほど歴史や政治を学んでいる人は少ないということをふまえると、悪魔的な本といえる。過去だからこそ冷静に読めたのだろうと思った。

0
2011年06月07日

Posted by ブクログ

上巻と合わせて読むのに時間はかかりましたが、引き続き興味深い一冊でした。第三帝国、ナチス、ヒトラーを「絶対的な悪」と言わざるを得ない欧米ではなく、日本だからこそ予断と偏見なしにこの時代と第三帝国を議論できるという点だけでも我が国は非常に恵まれていると思います。国家とは、社会とは、民族とは、という点を考えさせられる本でした。終盤は地政学っぽい視点に言及されてます。

0
2010年11月13日

Posted by ブクログ

どんな題目から出発しても、回答は一貫している。はっきり言ってここまで同じことを繰り返し繰り返し言われると、かえって頭に入らないような気がする。というよりか結論までの流れが頭の中に入ってるので、そこに行きつくまでの文章の印象が読めば読むほど薄くなっていくような感じ。ただ繰り返し言われたことは頭の中にはいる。ヒトラーはこの文書を演説化することで全ドイツを動かしたわけだから、ヒトラーの『一貫性』という才能は天才の領域と言っていいのだろう。
天才には2種類あると思う。驚くほど複雑な方と、驚くほど単純な方だ。ヒトラーは後者であり、後者の天才は現代においても絶大な支持を得やすい。ヒトラーは本書で「有能な政治家は有能な扇動者でもある」と語っている。さらに扇動の容量は「要点を絞って表現を変えながら繰り返し」言うことであり、大衆を扇動するためには単純さが必要であるようだ。実際政治家はシンプルに見られるものであるらしく(その論文はイグノーベル賞を受賞している)、だからこそより天才的な単純さが勝利し、人々の心を動かすのであろう。
『わが闘争』上下とも読んで、とにかく体力のいる本であり、国家政策を語るにしては内容はかなり抽象的ではあったものの、やはり当時のドイツの不満と理想(いまの日本に通じるものがかなりあると思う)をより正確につかみ取り表現した本であるのだと思う。つまりドイツ国民に共通する深層心理の何かを一気に引き上げたのである。同じドイツ国民であるユングの深層心理学を学べばこの点はもっと深く分析できるような気がしている。(手始めにマンガを読んだ。)
ナチ行動開始から90年近く経った今であるが、大衆心理はほとんど変わらないようだ。ヒトラーの大衆に関する分析はがかなり正確であったこともそこに証明される。ナチズムは死なない、というのが一番の感想である。

0
2009年10月04日

Posted by ブクログ

ナチスがどうして力を得たのか、それを知りたくて読み始めました。人間の弱った時に共通の敵を見つけ(悪いことはなんでもユダヤ人のせい)、選民意識(アーリア人種あげ)を持たせて自己を救うその理論がエグかった…。いろんな潜在的な差別や自尊心をくすぐっていくのがうまくて恐ろしい。

ヒトラー大衆を扇動する方法を知っており、その実行力があったと言う部分はやはり天才だったのかなと思います。
ただ、数々の虐待や戦争はヒトラー1人で成したものではなく、多くの人が賛同した故であることを刻んでおかねばなりません。ヒトラーは無から全てを作り出したのではなく、人々が潜在的に思っていることを都合のいいように言語化して展開したと。それがめちゃくちゃうまかった天才なんだと。
私もいつかその1人にならないように。戒めの本ですね。

ちなみに、読み物としては何度も何度も同じことをいろんな言い回しで書かれてます。なので、読みにくい。多分箇条書きにしたらすごい薄い本になるのに、ここまで言葉を尽くして言えるのかと言うくらいあれこれ言ってる。しかも賛同しえない理論展開なので(そらそう)頭に入ってこない文章も多いです。文章自体もよくわからないと言うのもあります。

0
2023年02月21日

Posted by ブクログ

上巻同様の理由で星は3つ。

上巻がヒトラー自身の神格化と思想の謳詠にあったわけだが、下巻は思考を凝縮化し仮想敵すなわちマルクシズムとユダヤ人を作り出し当時の大衆を惹き付け政権掌握をした手法と論説が述べられている。

書籍としては読み難いこと極まりないしアドルフ・ヒトラーが書いたものでなければ読まなかったであろうが、「窮鼠、猫を噛む」が如く賠償と外圧に苦しみ追い詰められたドイツ国民が世紀の大悪人に希望の光を見つけて一縷の望みを託してしまったことに第二次世界大戦の悲劇がある。諸悪の根源をシンプルにヒトラー単独に帰すのではなく、人類すべての連帯責任であったことは留意する必要はあろう。

0
2020年11月25日

Posted by ブクログ

上巻よりも更に斜め読み。難解。
ほとんど頭に入ってないかも……

私は否定的な感情を盾にしながら、覗き穴から常にチラチラ…怖いもの見たさとはこのこと。

ヒトラー。彼が独裁者になる前の本である。
国家社会主義ドイツ労働者党の党首として、彼は民主主義を民主主義で破壊し、最も優秀なヒトラーが大ドイツ帝国の復活を成すことに全てを懸けて行く。

彼はユダヤ人を世界から駆逐し、共産主義を倒し、最も崇高なアーリア人種の世界を作ることを夢見た。

その後、首相から国家元首として、独裁者に君臨し、ことごとく思想の具現化を進めるに至る。

よくもまあ、こんな本を書いたなぁと思う。
その時代にしか起こり得ない英雄的な発想と、狂乱の大衆扇動はたしかに、高揚感すらある。

ちなみにヒトラーの首相就任演説は一見の価値有り。
YouTubeなどでも見れるので、チェケラ!

0
2020年06月28日

Posted by ブクログ

上巻より、内容が明らかに過激になっている。アーリア人至上主義、マルクス主義・ユダヤ人への攻撃が激しくなっている。正直そこまで自民族を絶対視し、他を軽蔑するそこまでの理由はよくわからなかった。宣伝を重要視すること、人を動かす上で感情的な要素を重要視することはなるほどと思った。

0
2021年08月08日

Posted by ブクログ

上巻は嫌悪感なく読める部分もあったが、下巻は読むところが あまりない

民族主義的国家観
*国家は 目的のための手段
*国家の目的は 人種の維持
*指導者の権威は下へ、責任は上へ
*民族を存続させるために 歴史を学ぶ

世論
*世論の命令者になれ。大衆のしもべになるな
*偉大な成果とは 世論と対立し、理解されないもの

権威の3原理
*人気*強制力*伝統(ある期間継続)

宣伝と組織
*宣伝の目的は支持者を増やす。支持者=同意者
*組織の目的は党員を増やす。党員=一緒に闘う
*宣伝がうまくいくほど組織は小さくていい

0
2017年12月11日

Posted by ブクログ

行っていることは民族をちょっと入れ替えればいつでもどこでも言われている自民族優秀、他民族劣等論理で特別な内容じゃない。
また、100%悪な人間はおらずいつも一人一人の正義の争いで負けた者が悪になるんだろうから(受け売りでちゃんと調べてないが、聖書の中で神と悪魔で人を殺した数を集計すると神の方が人を圧倒的に多くの人を殺しているらしい…)ヒトラーのやった中にも経済政策などの良い面があれば評価し見習わなければ折角の人間の歴史の教科書になる部分を捨ててしまうことになるだろう。確かにヒトラーのみに責任を押し付けてお終いにすれば楽だろうが。
そして、気づかずに操られるのが宣伝の効果なのだから自分は操られていないと思っているのは既に術中に陥っていると思う位の方が良い様に思う。
これを読んで思ったのはヒトラーは取り立てて狂気の人では無く、一応今日でも読むことができる内容のそれなりの長さの書籍を書く能力があった事は間違い無いということだ。

0
2014年05月17日

Posted by ブクログ

我が闘争。このころのゲルマン民族東欧生活圏拡大思想が後世半ば現実したかと思うとぞっとする。
しかし、大衆の心を掴む演説方法。国家教育のあり方に対する意見は参考になった。

0
2013年12月25日

Posted by ブクログ

上巻からずっと思ってたんだけど、和訳が悪いのか本文が悪いのか非常に読みづらい。
あとヒトラーは若いころにユダヤ人によっぽどひどい目に合わされたんじゃないのかっていう感じのユダヤ人嫌いだった。

0
2012年07月12日

Posted by ブクログ

ドイツ人で当時に読んでいたら夢中になるんじゃないかな。自分たちアーリア人は文化創造の担い手で、戦争に負けたのも貧困も全てユダヤ人のせい、ドイツが戦争を起こすのは生存圏獲得のためだから正しいとか。
選ばれた人間が責任を持って決断する貴族議会主義はコスモ・バビロニアみたい。
イギリスに好意的な記述が多い。日本もちょっぴり出てくる。猿真似の国としてだけど。

0
2011年07月13日

Posted by ブクログ

これは、難しいぞぉぉww

下巻を読むとこの人(ヒトラー氏)は

確かに合理的は合理的なんだろうし

ユダヤ人と民族に対する歪んだ思想を持っていなかったら
↑ここ重要
雄弁家でリーダーとしてはふさわしすぎるのであろう

演説は書物より影響が大きい

と言い切っているあたり

自分の演説にどれほどの自信と実績があった事で

あろう

それに賛同した何百、否、何千万のドイツ国民

に指示され、あの毅然とした行動

行くとこまで来て引けなかったのかもしれない
が!
彼は彼の正義があったのであろう

それが第2次世界大戦へと導いた立役者のひとリなら

その正義は歪んだ正義にしか思えないけど…

ボロボロのドイツをリカバリー(復旧)させたヒトラー…

それは凄まじい闘争の中から刻まれた歴史。

反面教師+ヒトラー氏の良い所は吸収する!

歴史があって現在がある。

その歴史の中から未来が生まれると私は思います。
未来を見たくば歴史を知ることから。私はそう信じております。

是非、歴史に興味がある方は一読する価値アリ

0
2011年01月10日

Posted by ブクログ

国家社会主義を唱えるヒトラーが共産主義を毛嫌いする、これは国家社会主義と共産主義の違いを知らない自分には理解できないでいたことだし、なにが憎くてあそこまでユダヤ人を迫害したのかも理解できなかったが、彼の著作を読んで少なくとも彼が根拠にしたものがなんだったのかはわかった。

0
2009年10月07日

Posted by ブクログ

開始:20071031、終了:20071031

下巻では、アドルフ・ヒトラーの主張について記載されている。基本的にはアーリア人種(ドイツ民族)による支配、反ユダヤ主義、ヨーロッパにおける領土拡大である。自分たちを世論の実施者ではなく、世論の命令者と認識し、大衆を扇動していった様子が詳細に描かれている。
しかし、偏った間違った考えであったものの、彼の、理念に基づき、拝金主義を憎み、そして大衆を見方につけ、自分たちの尊厳を主張し、未来志向であった態度が、大衆をひきつけたのは事実である。これは、庶民は政治に関心を持たず、政治家は自己の出世と金のことばかり考えている、現代においても、きっと起こりうるべきものと思われる。しかし、そうした間違いを繰り返さないためにもの本書は一読の価値がある。一般的に私たちは、ヒトラーは戦争を引き起こした悪人だと教育される。実際には、ヒトラーという人物の背景を何も知ることなく、「20世紀最大の犯罪者=ヒトラー」という知識だけが詰め込まれてしまう。ものごとを一面だけでなく別の面からも見る、または背景を知った上で判断する、という能力を養う意味でも、有用な一冊といえる。しかい、訳が長ったらしくて読みにくい。

0
2009年10月09日

「小説」ランキング