あらすじ
旧き良き時代に生きた少年たちの青春浪漫。名門旧制高校・持堂院へ入学した摩利とその親友新吾、そして学友たちの友情物語。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
もっと有名であってもいい作品のひとつだと思う。
明治〜昭和の激動の時代を、命ある限り全力で生きた少年たちの物語。
漫画において前半と後半でガラリと作風・方向性が変わることはよくあることだが、この「摩利と新吾」もそのような例のひとつであるといえる。
普通はそれは単なる作者の方向転換でしかないのだが、この作品は後半がシリアスになればなるほど前半の「平和な時代」のお祭り騒ぎの青春がどれだけ輝かしく儚く愛おしいものであったのかを実感できる構成になっている。
後半の陰を描くには前半の光が必要だったわけで、その二項対立の構成で描き手側の事情を上手くカバーできているのが凄い。
作中の言葉の節々は心にぽつぽつと印象を残す。
それだけ木原氏の言葉の選び方が巧みだということなのだろう。
後半の展開は本当に胸に迫るものがあって、誰もが摩利と新吾のその関係性の純粋さと切なさを愛おしく思わずにはいられないだろう。
彼らの幸せ(というか摩利の幸せ)は決して叶わないことだと知っていても尚、幸せになってほしいと心から祈りたくなる。
今際の際に咄嗟に叫んだ新吾のあの言葉こそが、彼自身も知らなかった彼の本心であったのだと思う。
それだけできっと摩利は、報われる。