あらすじ
マルノウチ・スゴイタカイビル屋上。ひとり佇む復讐鬼の眼下では、痛ましい抗争を弔うために建てられた奥ゆかしい慰霊碑が、人知れず撤去されようとしていた。しかし、たとえ碑が消えようとも、あの闇のニンジャ抗争の日から始まった彼の復讐が終わることはない。ニンジャの生首を奪い、シャチホコにセンコとして供え、ひたすらに妻子を弔う。彼は己の中にいくつもの矛盾をはらみながら、過酷な都市のサップーケイへと突き進んだ。ーー「リフォージング・ザ・ヘイトレッド」
かろうじて命を繋ぎとめたフジキドは、ネオサイタマ辺境のごみ溜め場「ドリームランド埋立地」にて老人ニンジャ/マスター・ヴォーパルに理不尽な搾取を受けていた。かつての弟子を破ったフジキドの腑抜けた様子に憤りを覚えたマスター・ヴォーパルは、彼に問い続ける。「お前は弱い!」「目的は何だ。イクサに勝ちたいか? 望みを言え!」すべては彼の、最上の復讐劇のために。ーー「リヴィング・ウェル・イズ・ザ・ベスト・リヴェンジ」
初翻訳を含む6作を収録!
【収録作】
「リフォージング・ザ・ヘイトレッド」
「ヒア・カムズ・ザ・サン」
「ウィアード・ワンダラー・アンド・ワイアード・ウィッチ」
「リヴィング・ウェル・イズ・ザ・ベスト・リヴェンジ」
「レガシーズ・オブ・メガトリイ」(初翻訳)
「レイズ・ザ・フラッグ・オブ・ヘイトレッド」(前編)
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Posted by ブクログ
『ニンジャスレイヤー』第3部第6巻。
ニンジャスレイヤーが新たな境地へと達する「リヴィング・ウェル・イズ・ザ・ベスト・リヴェンジ」、ジェノサイドとエルドリッチの因縁が明かされる「ウィアード・ワンダラー・アンド・ワイアード・ウィッチ」、アガメムノンの目的や背景、そして対抗勢力が描かれる「レガシーズ・オブ・メガトリイ」など、第3部終幕に向けて意義深いエピソードが続く巻だけれど、白眉は巻末の「レイズ・ザ・フラッグ・オブ・ヘイトレッド 前編」だと思う。
社会の抑圧に対して音楽の力で対抗する、タニグチことDJゼン・ストームが、非力なモータルながら実にタフ。リスナーたちが体制側に逮捕拘束されないようにと、命を賭して行うラジオ放送での台詞も、いちいちクールで格好良い。
前編の最後では、デリヴァラーという名のニンジャとして蘇った息子・ニスイに救出され、ただ一人生き延びる場面が描かれるけれど、それは単なるハッピーエンドではなく、今後の葛藤を思うと難しさも感じさせる。
暴力でなく音楽を、とマイクロフォンに叫びながら殺されていたとしたら、それはそれで物語としては美しい結末だったろうけれど、生き延びてしまったことで、暴力の化身となった息子との関係性をどのように再構築するかという問題が生まれる。それがどのように描かれるのか、後編を読んで確かめたい。