あらすじ
【第28回講談社エッセイ賞受賞作】“本の海”めがけてざぶんと飛び込み、泳ぎだす。手にした一冊に始まり、次から次へと思いがけず繋がっていく本の世界。時間や場所を問わず、興味の趣くままに読み進めた全103冊、読書の真髄と快楽を余すことなく綴った一冊。食や暮らしの分野で人気の著者初の読書エッセイ。時を忘れて読む楽しさや幼い頃の記憶を呼び起こし、「読みたい」欲をかきたてる。
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どちらかというと食にまつわるエッセイで知られた平松洋子さんのジャンルにとらわれない書評集『のようなもの』。
のようなもの、というのは正統な書評集とはいいにくいからだ。
普通、主題の本を決めたらそれにまつわる感想やエピソードなどで構成するのが、普通の書評ならこの本は一冊から五冊十冊と広がっていく連想ゲームのようなエッセイなのだ。
たとえば冒頭、向笠千恵子さん(この人も有名なフードライター)が『日本の朝ごはん』で紹介されているさかもとという民宿に宿泊し、そのすばらしい経験を書きながら読んでいる本の内容にふれていくのだけれど、無理が無い。
これはかなり難しいテクニックの書評…というより読書日記だ。
一冊の本を読みながら十の本を思い出し、それを織り込みなおかつ日常のスケッチをいれ、なおかつ芯にしている本に最後は帰結していく。
だんだん読みたい本が増えてきてしまうのは、それぞれを的確においしいところを引っ張り出しているから。
俗物の極みと評されそうな叶野恭子お姉さまの著作と山下清の本の内容を同じ章につづる強引さ、しかもそれがしっくりくるという。
一冊読んで、別の本のことを思い出して取りに行くタイプの本読みならこの本はわかるわかるのかたまりだと思う。
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武田百合子、池澤夏樹、森茉莉、沢村貞子、宇能鴻一郎、小山清、開高健、獅子文六、室生犀星、古屋誠一などなど、気になる本がたくさん。メモしながら読んだため時間がかかった。平松さんの生活に本が溶け込んでいて、とてもうらやましく思った。特に好きなのは沢村貞子についての章。
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10年前のエッセイだけど、とても共感出き、引用されている本や写真集などにも興味津々。古い映画などは見るのが難しそうですが。
特に池部良さんのエッセイは私も昔から大好きで嬉しかった。佐野洋子さん、山田風太郎さんに触れた「すがれる」の章、我が意を得たりという感じでした。
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野蛮な読書とは何か。
丁寧に作られた食事を楽しんだ後、頂きものの「カステイラ」の包みを開けて、箸でそのまま食べるような読書だそうです。
”野蛮を許しあえる関係は、余裕のないガチンコ勝負とはちがう。もちろん、ただの粗野ともちがう。いってみれば、おたがいを知ったうえでの懐のふかさの競い合い(化かし合い、含む)。”
分かるような分からないような。
とにかく著者は、他分野に渡って造詣が深い。
そして基本的に丁寧な人なのであろう、本の読み方も非常に丁寧。
新刊本ではない、何度も読みこんだ本を、丁寧に、深いところまで読み取って紹介する。
だからタイトルに騙された、と私は思った。
こういう文章を書く人だと知っていたら、このような書き方をするのであれば、明治の文豪の文章を読むような、ちょっと力の入った読み方をしたと思う。
けれど「野蛮な」読書というので、全く無防備にこの本を手に取ってしまった。
う~わ~。
野蛮なんてとんでもない。
次から次へとするすると紡がれる、本や絵画や映画に関するあれこれが、気がつくと見事に織りあわされて差し出される。
「春昼」というタイトルで書かれたエッセイ、いや随筆と言ってしまおう、で、泉鏡花に辿り着くまで16ページも費やしている。
全部で18ページなので、実質1ページ程度しか「春昼」という作品には触れていない。
室生犀星からの、小川のような文章のたゆたいが、既に「春」なのである。
んむむむ。
”書店の棚のあいだを巡りながらほしい本を何冊も腕のなかに重ねてゆくとき、私はそっと神様に問うてみる。
(贅沢してもいいですか)”
これだけは、私にもわかる!
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著作きちんと読むの初めてだったけど、すごく好きだったので、遡っていこうと思う。食べるように読んで、読むように食べる。そのうちどっちがどっちだかわかんなくなってくる。
そうだ私も本読むの好きだった。もっと熱狂して、本から顔を上げたらぽかんとなるような、体験をずっとずっとしてたいんだったと思い出した。
伊豆断食道場が気になった。自分の身体の事だけ考える時間。いつか行きたいなぁ。
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優れた本読みの人。
食欲旺盛な人がもりもりと食べているのを見るのは、とても楽しい。著者の読書の仕方もそれと似ていて、すっきりする。
紹介された本のみならず、写真や映画、俳優に興味を抱いた。
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書評集。
最初は合わなかったのか、ひとつの章の中にたくさんの本が紹介されていて、めまぐるしく話が変わるのでだんだん読み疲れてきて、途中で読むのやめよう…でももうすこしと頑張って写真集の章まで読んでみたらこれがすごいよかった…!!
重い話にぐーっと引き込まれて、その写真集がすごく見たくなった。
凄いのは、どんな写真か見なくてもその写真を想像までできたということ。
その写真を見て自分が心震えるところまで想像できた。
頑張って読んでよかった。
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「読みたい」力を掻き立てる、洋子さんが日常に平行して野蛮に103冊の本を紹介していくエッセイ。
フードジャーナリストなだけあって、食の描写が凄いんです。書評も秀逸…。叶恭子の本が紹介されたと思ったら官能小説を紹介したり、平松さんの気取ってない柔らかな文章、クスッと笑えるユーモア。
個人的に"わたしの断食1週間"での断食中のひもじさと断食後の食への感謝と断食中の夜に読む正岡子規が印象的だった。
自分の表現力じゃこの魅力は伝わらない…贅沢すぎて感無量!読みたい本がまた増えました。読書好きな方(そうでない方も)是非是非是非是非絶対読んでみて下さい!平松洋子さんのような母親がいたらなあ…って心から思った。何度も何度も読み返していきたいエッセイでした。
Posted by ブクログ
読書にまつわる少し長めのエッセイ。読書だけでもないし、生活だけでもない。平松洋子さんの文章は初めて読んだけれど、構成と比喩がダイナミックで迫力がある。「わたしの断食一週間」で子規の『仰臥漫録』を読むっていうのはよーくわかる。私はやたら恋愛ものが読みたくなった、断食中。食を意識せざるを得ないからストレートに食の本に走るか別の欲求で埋めるかは性格が出るところだろうと思う。あと、「クリスティーネの眼差し」!写真集についての章が素晴らしい。実際写真見たことあるのは森山大道ぐらいだけど、恐ろしい鴉の写真を、是非見たいと思いました。宇能鴻一郎って芥川賞作家だったのか、知らなかった。
Posted by ブクログ
日常的に読書をしている人の生活に関するエッセイ。
無理して読書をしているのではなく、自然と読書が入ってきている感じが好ましいです。
逆に、読書案内的に読むと物足りないかもしれませんね。
日常エッセイとしてはいつも通り高品質なので、読書が趣味じゃない人にもお薦め。
Posted by ブクログ
ところどころに面白い本が出てきて、最後まで読んだけど、すごく好みのエッセイストではないなぁ。でも、知識やっぱり興味の深さが面白く、出会えなかったであろう本に出会えるのがよかった。
Posted by ブクログ
書評。前半は軽い感じで、後半は重量感のある感じで進められていく。日常的だけれどだしとかにこだわった和食を食べてる感じの書評だった。酒井順子の書評はもっと洋食な感じ。