【感想・ネタバレ】野蛮な読書のレビュー

あらすじ

【第28回講談社エッセイ賞受賞作】“本の海”めがけてざぶんと飛び込み、泳ぎだす。手にした一冊に始まり、次から次へと思いがけず繋がっていく本の世界。時間や場所を問わず、興味の趣くままに読み進めた全103冊、読書の真髄と快楽を余すことなく綴った一冊。食や暮らしの分野で人気の著者初の読書エッセイ。時を忘れて読む楽しさや幼い頃の記憶を呼び起こし、「読みたい」欲をかきたてる。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

どちらかというと食にまつわるエッセイで知られた平松洋子さんのジャンルにとらわれない書評集『のようなもの』。
のようなもの、というのは正統な書評集とはいいにくいからだ。
普通、主題の本を決めたらそれにまつわる感想やエピソードなどで構成するのが、普通の書評ならこの本は一冊から五冊十冊と広がっていく連想ゲームのようなエッセイなのだ。
たとえば冒頭、向笠千恵子さん(この人も有名なフードライター)が『日本の朝ごはん』で紹介されているさかもとという民宿に宿泊し、そのすばらしい経験を書きながら読んでいる本の内容にふれていくのだけれど、無理が無い。
これはかなり難しいテクニックの書評…というより読書日記だ。
一冊の本を読みながら十の本を思い出し、それを織り込みなおかつ日常のスケッチをいれ、なおかつ芯にしている本に最後は帰結していく。
だんだん読みたい本が増えてきてしまうのは、それぞれを的確においしいところを引っ張り出しているから。
俗物の極みと評されそうな叶野恭子お姉さまの著作と山下清の本の内容を同じ章につづる強引さ、しかもそれがしっくりくるという。
一冊読んで、別の本のことを思い出して取りに行くタイプの本読みならこの本はわかるわかるのかたまりだと思う。

0
2015年07月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

野蛮な読書とは何か。
丁寧に作られた食事を楽しんだ後、頂きものの「カステイラ」の包みを開けて、箸でそのまま食べるような読書だそうです。

”野蛮を許しあえる関係は、余裕のないガチンコ勝負とはちがう。もちろん、ただの粗野ともちがう。いってみれば、おたがいを知ったうえでの懐のふかさの競い合い(化かし合い、含む)。”

分かるような分からないような。

とにかく著者は、他分野に渡って造詣が深い。
そして基本的に丁寧な人なのであろう、本の読み方も非常に丁寧。
新刊本ではない、何度も読みこんだ本を、丁寧に、深いところまで読み取って紹介する。

だからタイトルに騙された、と私は思った。
こういう文章を書く人だと知っていたら、このような書き方をするのであれば、明治の文豪の文章を読むような、ちょっと力の入った読み方をしたと思う。
けれど「野蛮な」読書というので、全く無防備にこの本を手に取ってしまった。

う~わ~。
野蛮なんてとんでもない。
次から次へとするすると紡がれる、本や絵画や映画に関するあれこれが、気がつくと見事に織りあわされて差し出される。

「春昼」というタイトルで書かれたエッセイ、いや随筆と言ってしまおう、で、泉鏡花に辿り着くまで16ページも費やしている。
全部で18ページなので、実質1ページ程度しか「春昼」という作品には触れていない。
室生犀星からの、小川のような文章のたゆたいが、既に「春」なのである。
んむむむ。

”書店の棚のあいだを巡りながらほしい本を何冊も腕のなかに重ねてゆくとき、私はそっと神様に問うてみる。
(贅沢してもいいですか)”

これだけは、私にもわかる!

0
2020年10月01日

「エッセイ・紀行」ランキング