あらすじ
この世はヒト知れぬ生命に溢れている――。動物でも植物でもない、生命の原生体――“蟲”。それらが招く不可思議な現象に触れたとき、ヒトは初めてその幽玄なる存在を知る。蟲とヒトとをつなぐ存在――それが“蟲師”たる者。アフタヌーン・シーズン増刊から生まれ、アフタヌーン本誌の大人気作ともなった作品、待望の単行本第1集。
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見慣れた動植物とはまるで違う、生命の原生体に近いもの。
「蟲」と呼ばれる異形のものは、形や存在があいまいで、誰にでも見えるものではない。
そして、時に「蟲」は、ヒトと…ヒトの営みに作用する。
これは「蟲」とヒト、そしてその間に立つ者「蟲師」のお話です。
雪夜に耳を病む者が出る村(1巻)、生き神のいる島(3巻)、
天の糸を掴んで姿を消した妻(6巻)、死が伝染する里(8巻)など
数々の奇妙な現象、様々な特質を持った「蟲」と人々の様子が描かれます。
また、作品内の時代設定ははっきりとはしません。
登場人物のほとんどが和装に身を包むものの、主人公である「蟲師」のギンコは洋装です。
産業革命による機械文明とは無縁に、農業や漁業に従事する村里が広がっています。
定かではない時代設定において、摩訶不思議な「蟲」や人々の生き死にを描く『蟲師』という作品は、
どこでもない、あるいは彼岸でもあり此岸でもあるような、あいまいな世界の感覚をもたらします。
それと同時に、作品全体を取り巻く静けさ、妖しさに心惹かれてしまうのです。
幽霊や妖怪といった異形異類の存在を語る怪談や伝承に惹かれる方は、ぜひ読んでみてください。
民俗的で、幻想的な魅力漂う作品です。
感情タグBEST3
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匿名
良作
不思議な世界観にぐいぐい引き込まれて、夢中で読んでしまう。
読み返しても面白い。
どこからこんな世界観や発想が出てきたのだろう。
1個1個のエピソードから色々考えさせられてしまう。
緑の盃、阿と吽の話、毎回飽きない。
旅する蟲師と出会う人々
蟲師という仕事をしながら旅をする男、ギンコが先々で出会う人々と彼らに関わる蟲との出来事を記したお話。
蟲とは、「みどりのもの」と呼ばれ、一般的な昆虫とは違うあらゆる生命の源流となるもの。
蟲師とはその蟲に関するあらゆることを取り扱う医者のような人たちである。
1巻目はギンコのパーソナリティなどの情報はなく、旅をしながら仕事をする彼と、蟲で困っている現地の人々との会話で話が進んでいく。
『緑の座』は奥深い山に住む少年が左手で絵を描くことによってそれらを実体化させる力を持ち、半ば蟲となった少年の祖母との再会を描くお話。
『柔らかい角』は雪深い山奥で音のうるささに悩まされれた角の生えた少年と、同じ病で亡くなった彼の母親のお話。
『枕小路』は予知夢を見てしまう男の人生の最期を描いたお話。
『瞼の光』はどんな医者からも見放された光に過敏な少女と彼女を見守る少年のお話。
『旅をする沼』は移動する沼とともに生きる女性のお話。
この5編から成り立つ。
どのおはなしも蟲の及ぼす作用によって人生を否応なく変えられた人たちばかりだ。
そして迎える結末もすべてが後味のよいものでもない。
なんとなくボーッと見ているときに出てくる透明なものが蟲だったらちょっと怖い。