見慣れた動植物とはまるで違う、生命の原生体に近いもの。
「蟲」と呼ばれる異形のものは、形や存在があいまいで、誰にでも見えるものではない。
そして、時に「蟲」は、ヒトと…ヒトの営みに作用する。
これは「蟲」とヒト、そしてその間に立つ者「蟲師」のお話です。
雪夜に耳を病む者が出る村(1巻)、生き神のいる島(3巻)、
天の糸を掴んで姿を消した妻(6巻)、死が伝染する里(8巻)など
数々の奇妙な現象、様々な特質を持った「蟲」と人々の様子が描かれます。
また、作品内の時代設定ははっきりとはしません。
登場人物のほとんどが和装に身を包むものの、主人公である「蟲師」のギンコは洋装です。
産業革命による機械文明とは無縁に、農業や漁業に従事する村里が広がっています。
定かではない時代設定において、摩訶不思議な「蟲」や人々の生き死にを描く『蟲師』という作品は、
どこでもない、あるいは彼岸でもあり此岸でもあるような、あいまいな世界の感覚をもたらします。
それと同時に、作品全体を取り巻く静けさ、妖しさに心惹かれてしまうのです。
幽霊や妖怪といった異形異類の存在を語る怪談や伝承に惹かれる方は、ぜひ読んでみてください。
民俗的で、幻想的な魅力漂う作品です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ 2016年10月18日
ヌシの話が好き。切ない話が多い中、神様のような存在にうまく利用されちゃう、でもそれを受け入れちゃうギンコがよかった。骸草の話は今までになくドロドロしてたけど、その憎しみも愛情から生まれていて。人間の哀しさが出てたと思う。どの話もズーンと心に残ります。
Posted by ブクログ 2009年10月04日
ただ深々と静かに降り積もるように圧倒的に―水彩の美しさとどこか仄暗い世界観にきゅんきゅんします…!蟲と蟲師と人と―不思議な世界にどうぞごゆるりと
Posted by ブクログ 2009年10月04日
もう大好きです。
絵と話と世界観が絶妙にマッチしていて、切なかったり愛しかったり哀しかったりという、静かな感情が味わえます。ただそこに存在している「蟲」と、ただ存在しているだけではいられない「人」。どちらが良い・悪いではなく、「そういう存在」として受け入れ見つめている眼差しを感じるにつけ、「ホン...続きを読むマ好きやわ〜」と思うのです。
Posted by ブクログ 2009年10月04日
作者の方もおっしゃってたが、この巻の最後に収録されている作品は後味が悪め。私の理解が足りてないのだけれど、山に帰れなかったのはおっさんなのか少年なのか。もしも少年なのならば、ほんっとうに!後味が悪い。けど、それも含めてあの世界なのだと思うので、とくに嫌いになることはないな。後味は悪いが。
Posted by ブクログ 2009年10月04日
遥か彼方に忘れてきてしまった、神々との対話が描かれているような気持ちで読んでいます。「蟲」が人を伝って伝えることもあれば、人の心が憑かれた「蟲」によって見えることもある。
そんな、おばあちゃんから聞いたお話を聞いてるような気分になる心が震えるファンタジー。
Posted by ブクログ 2009年10月04日
2007年3月に映画化した、人間と「蟲」という生き物の物語です。時代背景ははっきりしていないけれど、大昔の日本のような感じで、和の好きな人にとっては面白いマンガになると思います。
Posted by ブクログ 2009年10月04日
蟲という妖怪のようなものにまつわる、不思議な世界な話、切なかったり暖かかったり、しんみりいい話ばかりです。アニメも素敵な時間の流れを味わえます
Posted by ブクログ 2009年10月04日
■いつもぼーっと読んで、少し考えてまた読み返す感じです。自然は厳しくても優しくても、ただそこにあるだけで善悪の区別はない、とゆー言葉を思い出しました。蟲もそーゆーもんだと思いました。…それにしてももう少しめくりやすい表紙にはならんもんでしょうか…?
Posted by ブクログ 2010年04月11日
“『……ヌシ どころか けもの一匹 いねぇ
しかし よく見れば あちこちに 山崩れの跡が あるな おそらく秋頃 台風に遭った 跡…… かなりの 規模だ
……その傷を 癒すため ヌシは 山を閉じて 山ごと冬眠 させているのか
……だが 弱った生物に とって 冬眠は そのまま 死んでしまう 事もある 賭...続きを読むけ――
となりの山じゃ もう春 なのに まだ 息を吹き返さない という事は……
……もう この山は 死を待つのみ ――――』
「このままじゃ 俺も 巻き添えか」”
「潮わく谷」
「冬の底」
自然の深さとか。
「隠り江」
「日照る雨」
ちょっと辛いかと思ったけど、いいエンドだった。
「泥の草」
後味が、苦い。
“「ヒトとヒトの 意識の間には 見えない 通路が あると言う
ちょうど この町に 張り巡らされた 水路のように 裏庭で すべての水路は つながっていて
そこには 五識を補う モノ…… 我々の言う “妖質”というモノが 流れている
だが 水かさが 少ない所も多く おまけに 入り組んでいて 地図もない
それでも水路は つながって いるので 望む相手に 会える事も たまにある
すると お互い同時に 相手の事を 思い出すような 事……
いわゆる “虫の知らせ”が 起こるわけです」”