あらすじ
ヴィレムは約束を守れず〈月に嘆く最初の獣〉(シヤントル)の結界は崩壊した。正規勇者(リーガル・ブレイブ)の命と引き替えに長い眠りについていた幼い星神(ほしがみ)は、その余波で空魚紅湖伯(カーマインレイク)とはぐれ、記憶を封じられたびれむと共に仮初めの平穏な日々を過ごす。その日、〈穿ち貫く二番目の獣〉(アウローラ)が浮遊大陸に降り注ぐことになるまでは――。〈獣〉に対するのは、アイセアとラーントルク。死にゆく定めの少女妖精たちと青年教官の、終末最期の煌めき。次代に受け継ぐ第一部、幕。
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脅威がなくなる事で平和は遠のき
2巻で奇跡の復活をしていたクトリだけに、4巻冒頭での遺体回収も何か奇跡のフラグではないかと思いたかったんですが、……。
浮遊島郡から魂が溢れ落ちる事は無いみたいなので…、と思いつつ読み始め…
直近の獣の脅威が遠ざかる事で平和になる筈との希望も空しく、新たな火種を抱えてしまうのはやるせないです。
その影響が、妖精倉庫の解体計画や、命を賭けて戦ってきた妖精たちの自由を更に奪い巨人兵器に縫い付けて組込む事だなんて…
この物語は完結し最悪の結末は避けられたものの、終焉の近いこの世界での日常はどうなるんでしょうね?
あと、気になるところ…
ネフレンのその後はどうなったのか?
リィエルという名の少女は、もしかして…?
そしてナイグラートたちの前に現れた青年とは…?
未来に託す終末物語
壮大な物語でした。三巻でクトリが亡くなり、四巻でヴィレムがケモノとなり、最終巻はどの様な結末になるのか気になって仕方ありませんでした。ここまで読んで、ようやくこの儚くも美しい物語の本質が分かった気がします。終わりかけの世界で、終わりかけの命で、終わりかかけの時間の中で、リーリァやクトリ、ヴィレムは、好きな人に恋をして、愛情を与え、戦い、自らの幸せとして納得する形で終末を迎えていました。そして、好きな人達に未来を託していきました。何より、そこに至るまでの物語の構成が本当に素晴らしかったです。心温まる人間ドラマ、徐々に明らかになる真実、終わりへと向かう世界や日常、そして最期の舞台等、巻数は少ない中でこれほど壮大な作品にまとめ上げる手腕は見事でした。また、絵に書いた様な悪人が最後まで登場しなかったのが特徴的でした(いない訳ではありませんでしたが)。それぞれの想い、偶然が重なり合い、最悪の結果を招いており、誰も悪い訳では無い、あるいは誰もが悪い、そんなことを伝えたかったのかなとふと思いました。筆者の願い通り、気づきのある作品で、後世に残る作品だと思います。改めて私はこの陽が傾く世界の物語が好きになりました。最後の結末は取って付けた様なハッピーエンドとも言えない形でしたが、この物語にはまだ先があるようです。ほんとに期待を裏切らず、次から次へとワクワクする作品です。アニメの続編が見たい気がしますが、物語の構成的に難しいのと、売上的にも厳しいのでしょう、、、