あらすじ
春の陽だまりの中、幼い少女妖精・ラキシュは《聖剣》セニオリスを抱え夢想する――。
それは500年前の出来事。正規勇者(リーガル・ブレイブ)リーリァ14歳、準勇者(クァシ・ブレイブ)ヴィレム15歳。人類を星神(ヴィジトルス)の脅威から救う兄妹弟子の日常は、なかなかにデタラメで色鮮やかで……。
それは少しだけ前の出来事。死にゆく定めの成体妖精兵クトリと、第二位呪器技官ヴィレム。想い慕われる一分一秒は、忘れ得ぬ二人の夢となる。
「終末なにしてますか~?」第一部、外伝。
感情タグBEST3
聖剣セニオリスを携えし三代の…
リーリァ、クトリ、ラキシュら、極位古聖剣セニオリスに因り得た力を振るい、因縁を宿命づけられた少女たちのサイドストーリー。
リーリァは素直な少女だった。無垢だった。聡明だった。
怪物に滅ぼされたディオネ騎士国の元姫君で、ヴィレムの妹弟子で、人間をやめる才能があり、星神エルク・ハンクステンを討伐する事を運命づけられ、讃光教会の定めた二十代目の正規勇者となった存在。
空洞だった、人間として大事なものが既に欠けてしまった存在だった。
その存在が、本音をこぼす事ができたのは、兄弟子であるところの…。
クトリは年長者としての存在を幼体の妖精たち示したいと背伸びしつつも、その行いそのものが子供だと言われつつ、名前のない感情に気付いてしまい、ヴィレムの事を意識せずにはいられず…。
出会いの日から間を置かずに帰れぬ戦いに赴く筈だったのに、還りたい思いを抱いてしまうクトリ。
妖精郷の門を開かずに力を使う方法を得る為の、ほんの僅かな、でも大切な時間の逸話。
ラキシュは、言葉は穏やかで、気質は和やかで、威厳に乏しい娘。
でも、セニオリスを「最悪の宿命を持った者にしか扱えない遺跡兵装」と言われれば、「優しくて厳しいけどチャンスをくれる剣」と返せる程には成長した彼女。
それなのに、セニオリスに選ばれし者の宿命は変えられないのか…?
ところで、
遺跡兵装・聖剣の構成要素なっている護符(クリスマン)、それが人間族が地上で栄えていた昔に、地下迷宮の奥深くで採れたという『忘失物質(通称ハイイロ)』を素材としているってのは、ティアットらのその後と何か関連してくるのかな…?
Posted by ブクログ
すかすかの番外編。本編では物語の背景を織りなす重要人物でありながら出番の少ないリーリァと、3巻で退場する運びになってしまったクトリがメインとなっている。
特にクトリが登場する話が再び読めたことは非常に嬉しい所
本編で描かれるリーリァは既に覚悟完了して勇者としてのイメージに準じている印象がかなり強かったのだけど、こちらで描かれているリーリァはもう少し他の顔も見せる
この話では国が滅び一人生き延びた事で周囲から悲劇の主人公として扱われるようになった頃にあのヴィレムと出会ったと判る。ヴィレムの下手ながらも決して諦めずに剣技を上達させようとする姿に憧れと同時に嫌悪を抱いてしまったのか
ヴィレムはこれまでも化け物エピソードが散々披露されてきたけど、その異常性の根源にあるのはどれほど無理な道だろうと努力を諦めず進み続ける点。
対してリーリァは類まれな才能を数多く持ち、勇者に相応しいエピソードを備えている。いわば努力しなくても、むしろ避けようとしても物語の主人公に収まってしまうタイプ
そんな特別すぎるリーリァからすれば、本人がその気になればいつだって普通の人間として過ごせるのに、勇者を目指し一種異様とも言える努力を繰り返し続けるヴィレムの姿は特別なものと映ってしまうのだろうな
これでもしヴィレムがリーリァを勇者として扱っていればああまで親しい関係性にならなかった気がするけど、出合い頭の発言が響いたのか、ヴィレムはそこまでリーリァを勇者として扱わず。
かと言って何とも思ってないわけでもなく。「あんたはあたしを何だと思ってる」「リーリァだと思ってる」という遣り取りはリーリァ以外他の誰にも適用されないと思えば、リーリァにとっては嬉しい特別扱い
それでいて時々普通の女の子として扱おうとする辺り、ヴィレムって厄介な人間である
勇者になってしまったリーリァにはもうどうやっても手に入らないものを平然と差し出そうとしてくるヴィレム。それは厄介な行動では有るけれど、同時に何もかもを無くし自分の感情すら判らなくなったリーリァにとっては貴重な行為なのかもしれない
ヴィレムから貰った下手くそなお守りを握り締めて幸せを噛みしめるリーリァの姿はどこか年相応のような、それでいて年不相応のような印象を感じさせた
クトリの話は第一巻ラスト付近の頃。だからクトリはまだまだヴィレムへの気持ちをはっきりさせてないし、ヴィレムもクトリへの依存が鮮明となっていない
まあ、それでも端から見る分にはクトリのヴィレムへの好意があまりにはっきりしすぎていて、読んでいるこちらが恥ずかしくなるような部分もあるんだけどね?
特にヴィレムが遠くへ行ってしまうと勘違いして暴走して告白紛いの発言をかますシーンはちょっと微笑ましい
そういったこの作品にしては非常に珍しい暖かな日常が描かれる。もうすぐティメレとの戦いが待っているとは思えないほど
それ程までにヴィレムが示した希望は大きいものだったのか
そして勘違い騒動を通して、いつの間にか自分の中に芽生えていた感情の名前をはっきり自覚したクトリ。
その恋心が後々あのような幸福に辿り着くのだから感慨深いものがある
そういえばクトリの話の中でネフレンについての言及が
彼女はいつの間にかヴィレムのお隣ポジションを確固たるものにしていたけど、背景にはネフレン自身の虚無感が関係していたのね
世界の全てを一度失ったヴィレム、前世に世界が消えてしまうのではないかという虚無を抱いたネフレン。どこか似た部分を抱えた二人だから、ネフレンはヴィレムを守るためにそして自分の安心できる場所を見つけるためにヴィレムの隣りにい続ける道を選んだのか。
その決意が後々、ヴィレムと一緒にとんでもない場所まで辿り着いてしまうのだから驚きである