あらすじ
冴えない風貌のせいで周囲からは侮られがちの、北町奉行所同心・亀無剣之介。厄介な難事件を押しつけられては、ぼやいてばかりのしょぼくれた中年男だが、じつは見かけと違い、とんでもない才能の持ちぬし―小さな矛盾や、下手人のわずかな隙も見逃さず、たちまちのうちに完全犯罪を瓦解させる、凄腕の同心であった。そんな剣之介が担当することになったのは、女絵師殺しの事件。被害者の娘は、年若ながら新鋭絵師として期待され、その才に嫉妬した同僚絵師の仕業かに思われた。だが、ただひとり、剣之介だけは、ほかに真犯人がいるかもしれない、と直感するのだが…。爪を隠した天才が上級町民の罪を暴く、完全新作・ここに開幕!
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Posted by ブクログ
久方ぶりに このシリーズ読みました。
亀無剣之介 ルックスも髪はふわふわ 肩の力が抜けた人で 捜査力が表には 出ないタイプ
この人の人間的な魅力で すすんでる話しです。
あんまり悪い奴が出てこない。
最後のヤブ医者殺しも アレルギーを利用した殺しです。
殺された医者は 三人のお妾さんはいるけど
みんなに 夢だった店を持たせたりしている。
殺人事件だけど なんかふわっとしているお話しです。
嫌な事件が多いなか こういうお話し いいですね!
Posted by ブクログ
モジャモジャ頭で風采がちっとも上がらないあの!同心。
亀無剣之介が帰ってきた。役者でも通るような美形でやり手の隣に住む与力、松田。その妹で、出戻りのお志保も健在。
亡き妻の残した一人娘、おみちもますます元気。
そんな同心の見てくれとは違い、推理力は飛び抜けて今回も3つの事件を大解決。
Posted by ブクログ
時代物の倒叙ミステリーは珍しい。このシリーズは好きで読んでいたが長らく中断していた。久しぶりに新作が出たので嬉しい。
くせっ毛と冴えない風貌のせいで侮られがちな同心・亀無剣之介。だが彼はひらめきとこれと見込んだ被疑者や手がかりから離れない姿勢から「ちぢれスッポン」と呼ばれる名探偵でもあった。
第一話「裁けない同心」は、隠れキリシタンだった薬屋の息子が、キリシタンをやめたいと仲間に打ち明けるも受け入れられない。そのことで仲間を殺めてしまう。しかし何と被害者は犯人を庇うために自ら現場を離れ喧嘩の末に殺されたかのような工作すらして果ててしまう。
当然犯人は犯行の痕跡を消し去ってしまう。隠れキリシタンという特殊な関係に加えて被害者が犯罪の痕跡を変えてしまうという、こんな難しい犯罪を亀無はどのように暴くのか。
第二話「浮世絵の女」は絵描きの師匠が男女の関係にもある女弟子を殺していまい、何かしらの工作をして向かいの小料理屋に行くシーンから始まる。小料理屋から犯行現場である工房を見ると、障子窓越しに死んだはずの女弟子が絵を描いている姿が影として映っている。つまり犯人である師匠は被害者を生きているように見せかけアリバイ工作をしたのだ。その後、工房に入った別の弟子が可哀相に犯人として捕らえられてしまう。
亀無は捕まった弟子が犯人ではないと感じるが、真犯人とアリバイトリックをどう暴くのか。
亀無の捜査は至って基本的で、現場検証と聴き込みに尽きる。しかしその中で抱いた微かな違和感や見過ごし勝ちな小さな発見を疎かにせず追求していくことから真実に辿り着く。
それでも亀無が思い至らなかったところもある。上記の二話では真の動機だ。第一話では隠れキリシタンであることに耐えられなくなった末なのかと思っていたが、そうではなかった。第二話では男女の関係に不安を感じたのかと思っていたらそうではなかった。
倒叙ミステリーと言っても最初から何もかも明かされているのではなく、書かれていなかったことが最後に明らかになるところが面白い。
表題作でもある第三話は病気が治らないことに苛立つ料理屋の女将と、彼女の治療を拒む医師の姿が描かれ、その後医師が謎の死を遂げる。
状況から毒殺が一番ありそうなのだが、犯人らしき女将は医師に毒を盛る機会はなかった。一体どうやって医師を殺したのか。
この第三話では犯人は女将だろうと思われるのだが、そのトリックは書かれていない。
亀無はまたも丹念に医師が死んだ日に会った人々を捜査していくのだが、なかなか解決の糸口が掴めない。
ところがここでついに『ひらめき』が降りてくる。それを導くのが松田与力の妹で亀無が密かに思いを寄せる志保だ。
このトリックと、病が治らない苛立ちだけではない動機が最後に明らかになるのは先の二話と同じパターンだが、この話では更に犯人すら知らなかった真実も明かされて面白い。
その最後を締めくくるのが真面目なのか不真面目なのか分からない松田与力だ。見た目は役者顔負けの美形で、殺しの事件で解決出来ないものはないと言われるほどの仕事振りなのだから町民たちからも人気が高い。
しかしその事件の解決を担っているのは亀無だし、普段はふざけているとしか思えない話をするくせに最後の美味しいところは持っていってしまう。なんだか割を食ってばかりの亀無だがそれが自分の役回りと諦めている。
シリーズが再開したのだとすれば嬉しい。妻を亡くして一人娘を育てる亀無と志保の関係の行方も気になるし、松田を狙う者たちとの政争の行方も気になる。
同じ倒叙ミステリーの、大倉崇裕さんの「福家警部補」シリーズと比べるとややアッサリしているが、こちらも読みやすくて面白い。