あらすじ
作中にふんだんにちりばめられた近代詩そのもの凄さに酔い、架空の街で虚実の境を徘徊する、朔太郎、白秋(はくしゅう)、犀星(さいせい)らの作品からイメージされたキャラの圧倒的な存在感に酔い、膨大な資料を下敷きに緻密に物語を組み立てた作者の過剰な愛情に酔う。話題集中の近代詩歌俳句エンターテインメントをこの機会にぜひ!
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近代詩歌俳句、と聞いてみなさんは誰を思い浮かべるでしょうか。正岡子規?与謝野晶子?中原中也? そもそも学校の授業では、近代文学そのものに接する時間をそう長くは持てなかった方も多いかもしれません。
本作は、□街(詩歌の「し」・短歌の「か」・俳句の「く」で「しかくがい」!)という近代日本のような架空の街に住む、萩原朔太郎や北原白秋、室生犀星、三好達治、正岡子規などの詩人や作家本人ではなく作品イメージをもとに創作されたキャラクターたちが、詩を作ったり、作れなくて苦しんだり、街はずれの丘の上にある天上松にかかっている身元不明の縊死体を見つけて検証したり考察したりしながら、ひいては文学と戦争の関係が匂わされたりする、詩歌俳句ファンタジーマンガです。読んでいて次から次へとジェットコースターのように話題が転換していくので、支離滅裂なようにも見えますが、史実とフィクションのバランスが非常に絶妙で、読み進めずにはいられないほど先が気になるのです!
キャラクターとして登場する詩人に全集があればすべて読んでいるという作者の知識がふんだんに生かされた本作、すべての文学少年少女&元文学少年少女必読の書です! 作中にちりばめられたいろいろな作品が気になった方は、それぞれの詩人の詩集なども是非ご一緒にどうぞ。
感情タグBEST3
性の苦しみ
表紙の通り、女性についての表現が多い巻です。
女性がなかなか自立できない時代の苦悩が感じられましたが、現代にも通じることが多々あります。
それに伴う男性の苦しみもあり、性の難しさ・テーマの重さを感じました。
Posted by ブクログ
こんなにも美しく哀しい女たちが描かれているのに朔の独走なのがすごい。
毎回言ってる気がするけど、読むたび自分の教養の無さを痛感するのに面白く読めちゃうのはすごい。
Posted by ブクログ
"内"の1巻に"性"の2巻、"外"の3巻、そしてこの"愛"の4巻。痛烈な皮肉と壮絶な陶酔はそのままに、閉塞した世界にもようやく光が差してきた。雨のシーンはあまりに痛ましく叙情的。また、彼らは詩人モチーフではなくあくまで作品モチーフのキャラクターである、ということの意味が4巻にしてようやくわかった気がする。この物語は"人物"のキャラクターでは描けなかった。脚色や装飾ましてや捏造ではなく、あるがままの自然体でこの無尽の膨らみを持つ世界やキャラクターを描くのは困難である。だからこそ初期から「朔は朔」と強調してきたのかもしれない。などと思ったり。