あらすじ
若者になった「私」はジルベルトへの恋心をつのらせ、彼女の態度に一喜一憂する……。19世紀末パリを舞台に、スワン家に出入りする「私」の心理とスワン家の人びとを緻密に描きつつ、藝術と社会に対する批評を鋭く展開した第二篇第一部「スワン夫人のまわりで」を収録。〈全14巻〉
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Posted by ブクログ
語り手の初恋、スワンの娘・ジルベルトとの恋についてあれこれと語り手が考えを巡らせるが、ジルベルト自身の印象は薄く、スワン一家、特に第一部のタイトル「スワン夫人のまわりで」が最初から最後まで通底している印象の第3巻。
ジルベルトは語り手の中のこうあってほしいと思う理想のジルベルトが描かれ、スワン夫人(オデット)については、服装、趣味、会話が事細かに描かれている。
話の筋としては単純なのに、その情景も空気も心情も丸ごと作品に閉じ込められている。
流麗な文体の中に語り手の若さが出ていて(憧れの作家に会いその風貌に落胆したり、相続した壺を売って「毎日ジルベルトに花を贈ることができる」とウキウキする)クスっとしたり、うろたえたりしました。恋は怖い。
スワン夫人と女性たちのサロンでの会話もぞわぞわします。上流階級に生きるというのは心が休まらなさそう。
注釈が丁寧で助かっています。これがなかったら私には手の届かない作品です(;´∀`)
巻末の「読書ガイド」のユゼフ・チャプスキ『精神の荒廃に抗するプルースト』やココット(高級娼婦)の詳細な説明、馴化園(ジャルダン・ダクリマタシヨン)の説明も興味深いものでした。