あらすじ
天皇や貴族を取り巻く政治的な事件を追い、渦中に生きた人々を見いだし歌を味わう。また、防人の歌、東歌といった庶民の歌にも深く心を寄せていく。歌集を読むだけではわからない、万葉の世界が開ける入門書。
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Posted by ブクログ
入門書を求めていた自分には大変読みやすく、面白く読めた。
以下、解説より
ーー本書は優れた万葉集入門であるが、同時に古代史概説とでも呼びたいような性格をも有している。それはまるで中国の正史を読むような、簡潔で格調高い文章で綴られている。逆にいえば、古代の歌集を読み解くことが、そのまま古代史たりうるという、詩と重層する歴史を有したことについて、わたしたちはもっとホコリを抱いていいのかもしれない。
簡潔な正史の風韻は、万葉集の大歌人たちにも及んでいる。ーー
地の文で時代を追って政情、大歌人の立場、心情などを語り、その著名な歌の意味を読み解いていく。このスタイルが、歌を読みつけない自分には理解しやすかった。
歌ばかり並んだ本では挫折しがちだが、代表的な歌をポイントで取り上げられているので、丁寧に読むことができた。
古代から奈良末期へと時代が下がるにつれ歌の質が変わっていく様子も理解できて良かった。歴史という大きな物語の中の歌のことであった。
Posted by ブクログ
万葉集の歌がどのように生まれたのか、古代の歴史をひもとくことでその背景と由来を語る。天智帝から持統帝の時代に起きた有間皇子や大津皇子の悲劇、大伯皇女の悲しみ、高市皇子と十市皇女の悲恋、穂積皇子と但馬皇女の激しい恋など、愛と哀しみが自分の心をみつめることにつながり、数々の歌が生まれた。柿本人麻呂は、律令国家へと歩みゆく日本の青春を天皇賛歌に託して歌った。しかし、出来上がった藤原京や平城京は理想とは遠く、やはり権謀術数と人間の醜さが渦巻いていた。そして、大伴旅人や家持は歌に救いを求めた。その救いは、苦しい生活を強いられた民衆にこそ必要だった。だからこそ、無名の人々の歌には家族や男女の愛があふれている。
Posted by ブクログ
元号の決定に重要な役割だったとされる筆者。万葉集研究の大家による古代史。
万葉集の歌そのものより背景となる歴史を語る1冊。歌はそれほど多くは出てこなく、また歌の解説は少ないので、単に歌の鑑賞のためなら他の本を当たった方が良い。
ある程度、万葉集を読み込んだ人向けの内容のように思う。
Posted by ブクログ
最近、古典に興味持ち、文庫本を読み漁っているのですが、角川ソフィア、読みやすいです!
それに加えて、本書は、万葉集の代表的な詩歌と、それが詠まれた背景は書かれており楽しく読めます。
「中大兄が万葉に残す歌は少なくてその心情をさほど伝えてはいないけれども、九州の地に死した母帝の亡骸をいだいて大和に帰るとき、
君が目の 恋しからに 泊てて居て かくや恋ひむも 君が目を欲り
と母をしたっている。(中略)
大化以後はまことに古代史における一大転換の時であった。それなりに新時代の誕生は輝かしくはあったけれども、一面それは血と非情を代価として得た輝きであった。その非情の歴史の中に非情たり得ないのが人間だからである。この人間にささえられて、万葉集は芽ばえた。」(p.49)
この解説を読んで、以前ニュースで、3.11の震災について、被災地の方々が川柳を読む会を開いていたことを思い出しました。
そのニュースでは、震災の辛い経験を川柳に載せることで、辛さが昇華されるのだと、心理学者が解説をいれていました。
辛い時、美しい詩歌に載せてうたうことができる文化を持つ日本人。
それを理解できり日本人で良かったな、と思いました。