あらすじ
『空、はてしない青』著者が贈る渾身の感動巨編
もう一度、あなたと。
車椅子生活を余儀なくされたフランソワのため、二人はパリの郊外に移り住む。すべてを再出発させるのだ。しかし、順調にみえたのも束の間、互いを傷つけあう時間が長くなっていく。暗闇から抜け出すため、フランソワが望んだのは子どもを持つことだった。「子どもをつくらせてくれ。そうすれば、すべて終わるから」彼に生きる希望を与えようと、若き恋人・エレオノールは新しい命を迎えることを決意する。それは不可逆の運命の分岐点だった。
失われた脚と尊厳。それでも人間は、立ち上がれるのか?
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Posted by ブクログ
本書『立ち上がる時』は、2026年本屋大賞の翻訳小説部門で第1位を受賞しました『空、はてしない青』の著者メリッサ・ダ・コスタの作品です
『空、はてしない青』は、若年性アルツハイマーと診断され余命2年を宣告された青年が最後の旅に出る感動作です
死に向かっていくなかで描かれている感情や描写、その美しい静けさが印象的でした
一方、『立ち上がる時』は荒々しい感情が感じられる一冊です
パリ代表する舞台俳優としてキャリアの絶頂にいたフランソワ
美術系の学生で、劇団を愛し、劇場の案内係をしているエレオノール
激しい恋に落ちたふたりは肉欲に溺れ、周囲の心配をよそに、フランソワは妻と離婚してエレオノールと暮らすことになる
その矢先、フランソワはバスにはねられ下半身不随になってしまう──
そこからはふたりが再生していくまでの出来事が描かれています
それは美化された物語ではありせん
下半身が麻痺している感覚、仰向けに寝たままの病院生活、過酷なリハビリ、一変する性生活、車椅子に適合していない環境、他者への依存、連絡が途絶えていく友人たち…
その中で、苦しさに耐えられず現れてくる暴力的な感情、激しい怒りの数々、相手のことを思えば思うほど生まれる気持ちのすれ違い
この辛さに私自身、何度本を閉じようかと思ったことでしょうか
しかし、読む手が止められませんでした
ふたりの再生に向かって、「よっこらしょ」と立ち上がる時もないままに上巻364ページ、下巻357ページを一気読みです
きっとメリッサ・ダ・コスタは伝えたかったのだろうと思います
立ち上がる時は「よっこらしょ」のかけ声も大事だが、誇り高く、美しく、凛として立ち上がりなさい
病気や障がい、さまざまな困難にぶつかっても信じた相手とともに立ち上がりつづけなさい
と
Posted by ブクログ
フランソワが舞台上でセリフを語るシーンで、自然と涙がこぼれてきました。このシーンにたどり着くまでが本当に長かった…衝突を繰り返してゆく2人の行く末が気が気じゃなくて…。『旅行中に流産してしまうのでは』とか、『レオが出て行ってしまうんじゃないか』とか、物語が悪い方向に進むかもと思うと怖くなって、本を閉じて離れる時間が必要でした。
それもこれも、作者が言う通り、文章中に最大限のディテールを盛り込んでくれたから。頭の中で映像化され、しっかりのめり込むことができました。
フランソワのために赤ちゃんをつくると決めたレオに、『え!?妊娠したらもう戻れないよ!?』と、イザベルと同じように、私もレオをたしなめてました。
赤ちゃんができると浮き足立つフランソワにたいして『そんな呑気にして!レオの気持ちも考えてよ!』と腹が立つこともありました。
上巻では激情的なフランソワが下巻では穏やかになったのに、今度はレオが激情的な態度を取ったりして…このカップルに振り回されて少し疲れたこともありました笑
そんな2人を見守ってきたからでしょうか。
最終章の舞台シーンではレオとイザベルの隣に座り、椅子に座るフランソワを私も観ていました。観客が息をのむ音や、暗転する照明を感じて、涙があふれてきました。
『再生(レジリエンス)』文学の作者メリッサ・ダ・コスタ。「空、はてしない青」に次ぐ感動作品でした!
訳者あとがきによると、フランスではもっと作品を出していて本作が8作目だそう。日本で訳されていないだけで他にも出されていたんですね…要チェック!
人生で一番好きな作家さんです。
あともしかして本作この表紙にしたのって、『読者であるあなたたちも数ある窓のひとつで、孤独を感じるなら窓開け放して語り合おう』ってことなんでしょうか…!考えられているなぁ〜!!
Posted by ブクログ
下巻でも絶望や孤独、そして介護の現実が重く描かれ、登場人物たちの苦悩が痛いほど伝わってきた。物語の中ではなかなか時間が進まず、p71の時点でもまだ事故から1年ということに驚かされる。ようやく穏やかな日々が訪れたかと思えば、また問題が起き、互いに傷つけ合ってしまう場面も増えていく。個性の強いフランソワに対して、レオがよく向き合い続けているなと感じた。胸が締めつけられるような展開が続く中で、最後に希望が感じられるラストがよかった。
Posted by ブクログ
《絶望の淵に立たされた時、人はどう生きる力を取り戻していくのか》
SNSで見掛けて気になった作品。
パリを代表する舞台俳優・フランソワは交通事故に遭い下半身不随に。秘密の関係を経て彼と結ばれるはずだった若き恋人・エレオノールは未来の全てをなげうち、彼を支えようとするがー…。
物語が始まる前のページから引き込まれた。
「空、はてしない青」の読者なら、きっと「あ!」ってなるハズ。
この名言、めちゃくちゃ好き。
今作も設定がすごい…!
法的に見ればレオはフランソワのそばにいる必要はないわけで、フランソワもレオにそれを強制することはできない。
お互いに離れたければいつでも離れられる関係。
夫婦、親子など法的にも制度的にも結びついた関係だったら義務も責任も伴うし、面倒を見ることはある意味当たり前のことなのかもしれないけれど、(むしろ放棄するなんて…ってなりそう)この関係性だと決して当たり前のことではなかったと思う。
だからこそ、自発的にフランソワと関わろうとするレオの姿に胸を打たれたし、自分だったらどうするのかを考えさせられた。
心理描写が繊細で、読んでいる間中胸が詰まりそうなのに物語の進め方にはすごくエンタメ性があって、次で何が明かされるのか、この人はどう変わっていくのか、と推進力がすごくて、読む手が止まらなかった。
絶望の描き方が容赦ないからこそ、小さな変化や人との交流がめちゃくちゃ効いてくる。
そして綺麗事だけではない、支える側・支えられる側双方の厳しい現実の描写がフィクションでありながらノンフィクションのような生々しさで胸に迫った。
頑張れば立ち直れる!という単純な物語ではなく、
小さくて具体的な愛の積み重ねが、もう動けなくなっていた人を少しずつ立ち上がらせていくところが胸にグッときた。
人は、一人では生き直せない。
でも、人と関わることで、もう一度歩き出せるのかもしれない。
「空、はてしない青」に通ずるような作品で、読後感も近く感じた。