あらすじ
蒙古軍襲来! 圧倒的迫力で描く完結編! ついに蒙古が来襲した。対馬沖に現れた3万数千人の大船団。国の命運を賭け、執権・時宗は父・時頼の遺した途方もない秘策に出た。兄・時輔らが率いる九州武士団を軸に、日本軍は蒙古軍と激闘を重ねていく。誰のため国を守るのか。国とはなにか。歴史の転換期を生きた男たちを圧倒的迫力で描く怒涛の完結編! (講談社文庫)
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Posted by ブクログ
ついに蒙古軍が襲来する。
となると、時宗自身は鎌倉から動けないので、この巻の主人公は時輔。
全四巻のうち、前半2巻は父・時頼が主人公で、最後の1巻は兄・時輔が主人公。
だけど、これは蒙古襲来に対する鎌倉幕府の物語なので、父の生き方から兄の活躍に至るまでが対蒙古に焦点を絞ったことで、元寇のときの執権・時宗が全体の主人公となる。
神風が吹いたことで、日本は元寇に勝ちを収めることができた、という定説とは違い、この本では周到に元を迎え撃つ準備をしている。
だった1回、徹底的に元を叩き潰すことができたら、二度と元は日本にやってこないだろう。
負けない戦いではなく、絶対に勝たねばならない戦い。
そのためには、多くの武士に死んでもらわなければならない。
御家人にとって領土はとても大切なものだ。
しかし国土はどうか。
国という概念がない場合、そこにある地面は誰のものなのか。
住んでいる者たちが、住んでいる範囲だけを守れればいいのか。
元との戦いの場を大宰府に決めた。
九州各地の武士が、鎌倉の武士が、東北の海の民が一体となって、日本という国を初めて意識する。
日本という国を守るために、一体となる。
吉田松陰が九州を旅したときに元寇襲来図を見て、初めて藩から国へと視野を広げることになったように、もしかしたら孝明天皇のかたくなな攘夷主義の根幹は、過去に一度外敵を防いだという実績にあったのかもしれないと思った。
元も日本も決定的な勝敗を認めることがないままに、一度目の元寇は終わり、改めて大軍を投じてきた二度目の元寇。
たった一度で勝ちきるはずだった鎌倉幕府には、もう一度九州の武士団に「死んでくれ」ということはできなかった。
そのために、時輔が縦横無尽に活躍するのが今巻の目玉だ。
しかしそれは常に、時頼や時宗の存在あってのことなのだ。
歴史小説というのは、結末が決まっているのでしょうがないのだけれど、これほど大きな出来事の結末があまりにもあっけなくて、最終章を二度読みしてしまった。