あらすじ
「ローレライは、あなたが望む終戦のためには歌わない」あらゆる絶望と悲憤を乗り越え、伊507は最後の戦闘へ赴く。第3の原子爆弾投下を阻止せよ。孤立無援の状況下、乗員たちはその一戦にすべてを賭けた。そこに守るべき未来があると信じて。今、くり返す混迷の時代に捧げる「終戦」の祈り。畢生の大作、完結。【2005年3月公開 映画「ローレライ」原作】 (講談社文庫)
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Posted by ブクログ
2004年(第1回)。8位。
思い通りにいかなかった浅倉は呆けている。戦艦乗組員はやった!そしてこれが玉砕だなw そしてその前にナーバルは切り離された。お前たちは生きろ、と。
宮崎にたどり着いたナーバル。そこから故郷へ、居場所なさそうだから東京へ。戦友のおうちにやっかいになり、サラリーマンとなり、子を作り、家族を作り、家も手に入れ。
平成。確かに浅倉のいうとおりになっているのかもしれない。二人の馴れ初めは子孫に話していないけれど。パウラ、最後はドイツ語しゃべっちゃうんじゃないかなぁ・・・。話せばよいのにね。壮大な物語だった
Posted by ブクログ
ローレライはあなたが望む終戦の為には歌わない
昭和20年。敗戦色の濃くなる日本に、崩壊したドイツから戦利戦艦・イ507がもたらされた。このイ507には世界の戦争を覆す秘密兵器があり、世界がこの戦艦を狙っていた。
巨大な力を持つイ507をめぐる争いは、それぞれの国家の「あるべき形の終戦」を目指す戦いとなる。手に入れた日本軍は- というお話。
か、かっこいい・・・
福井作品は「亡国のイージス」に続いて第二弾。もともと映画化の話が先にあり、その為に書かれた原作。それゆえにちょっとSFチック。
SFというか、なんていうか。潜水艦に女の子は、ないよね・・・。至るところに映画化に向けたご都合主義とサービスがあるのでそれだけが難点。それを除いたところは最高に面白いんだけど。
最初に言っておくと、歴史ものではないです。過去の「戦争」の事実のみを使用したフィクション。それを踏まえておかないと結構肩透かしを食らいます。
最初、「ローレライ」とか「彼女が歌っている」とか書いてあるのを見て、「あぁ、艦長はお父さんで副長がお母さんで潜水艦は彼女って言われてるしね。歌ってるってのは稼動音かな」と思ってたわけで。 いや~、まさか文面どおりだったとはね。上記以外のところは最高に良かっただけにガックリなのですわ。
イ507を取り巻く人々の思惑や裏切り、そして動機。登場人物が魅力的なのは脇役に至るまで、人物の描写が細かいから。まるで自分がイ507に乗船してるかのような錯覚に陥ります。
物語初期の乗組員が集まってくるところ、それと終盤の船から見上げた空の青さ。この2点の風景はハッキリとイメージできるくらい。あの状況で見上げた空の青さ、というものが読んでいるこちらにも感じられます。
海風の吹く中、太陽が眩しいくらいのスコーンと抜けた、悲しいくらいの青空だったんだろうなぁ。暑さは感じないんだけど。
映画版ではヘイリーが「モーツァルトの子守唄」を歌っているらしいけれど、これはピッタリ。
映画版では物足りなかった方、原作をオススメしますぞ。
Posted by ブクログ
完結。
悲しくも納得のゆく「伊507」の最期。
(朝倉大佐の末期のあっけなさは残念だけれど)
散り逝く男達の勇姿。
哀しさの滲む戦後ニッポンの平和。
良くも悪くも“現代っ子”に育ったヒロインの子や孫の描写に、一気に現実に引き戻されつつ、そんな現実世界に生きる者にも未来への希望を抱かせてくれるラスト…。
ここまでの長編をこんなにも短期間で読ませられてしまう、福井ワールドの魅力を再確認。
★4つ、9ポイント半。
2014.10.31.了。
“平和ぼけ”日本への警鐘に満ちた終章は、全作品を通しての、筆者から読者へのメッセージなのだろうな。
「人類資金」にも通じる筆者の危機感が伝わってきた。
※文庫「人類資金7」の刊行は、いつになるのだろうか……。「2014初夏発売」のはずだったのが、もうすでに「晩秋」なのだけれど(苦笑)。
Posted by ブクログ
戦争というとりわけ重いテーマのノンフィクション調部分と、「美少女が秘密兵器の中核だった」というライトなSF調の部分。
最初はその2つが何だかかけ離れているように思え、どちらの気持ちで読み進めば良いのか戸惑ったが、
長尺で細かく描き込まれた物語を読み進んでいく中で、違和感は払拭された。
その後のストーリーの流れは王道で、ある意味で安心して読むことが出来たように思う。
重いテーマを引き付けて考えさせてくれるというのは、これこそ物語の力だなぁ。
絹見艦長より、田口掌砲長より、フリッツより、
時岡軍医長の最期のシーンに一番胸が詰まった。
他の人たちは何だかんだ言って軍人で、格好良くはあるけどあまり共感は出来ず(ごめんなさい!)、
彼が私には一番近い感覚の持ち主だったのだと思う。
男性の登場人物が大半。主体も大部分が男性の物語の中で、
最後が女性の姿で締め括られていたのは印象的。
高齢となったパウラから10代の娘孫に向けた視点。
その直後の孫から祖母に向けた視点。
終章で滔々と語られるのは決して明るくはない現実だけれど、これから静かに最期に向かおうという女性と、未来に向かう女性を対比させたラストシーンは、希望があって良い終わり方だと思った。
全体を通して、娯楽作ながら社会派の良作だと思いました。
まぁ…でも…ちょっと長かったかな。笑