あらすじ
街の路地裏で夜から朝にかけてオープンする“キッチン常夜灯”。チェーン系レストラン店長のみもざにとって、昼間の戦闘モードをオフにし、素の自分に戻れる大切な場所だ。店の常連になってから不眠症も怖くない。農夫風ポタージュ、赤ワインと楽しむシャルキトリー、ご褒美の仔羊料理、アップルパイなど心から食べたい物だけ味わう至福の時間。寡黙なシェフが作る一皿は、疲れた心をほぐして、明日への元気をくれる――共感と美味しさ溢れる温かな物語。
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Posted by ブクログ
小説に出てくるお店で、頼むから自宅近くにあってくれと切望しているのは、『みをつくし料理帖』シリーズ(髙田郁)の「つる屋」と、〈ビストロ・パ・マル〉シリーズ(近藤史恵)の「ビストロ・パ・マル」の2つだったんだけど、そこに「キッチン常夜灯」が追加されました。
牛ホホ肉の赤ワイン煮、じゃがいものグラタン、仔羊料理、シャルキュトリー盛り合わせ、アップルパイ、日々品を変えて出てくるスープたち。
どれも!全部!美味しそう!
なんでうちの近くにないわけ?
夜9時から朝までという営業時間は、私の生活ペースにはちょっと合わないので、できればもう少し早めにオープンしてほしいところだけれど、あえてその時間から、みんなで夜を越すために開けているというのが、そのお店の空気感や想いを体現しているようで、いい。
願わくば、シェフと堤さんが、このスタイルの営業で体調を崩されませんように。
ファミレスの店長として、浅草にある店舗を仕切り、鎧を脱げなくなった主人公が、料理とお店の雰囲気で、少しずつ肩の力を抜いていくストーリー。
ファミレスどころか飲食系の経験はバイトすらないけれども、人に何かを任せるのが怖いというのは分かる。私はそれをこじらせてフリーランスみたいな仕事の仕方をしているけれど、だれかに任せるなら全部自分でという安易な方法はどこかで限界が来るから、それをどうバランスを取るか(仕事を断るか)というのは常に課題だ。
お客さんをコントロールできない(仕事を断るという選択肢がない)ファミレスのような業態だったら、なおさら、だれかに任せるという選択をできるようにならないといけない。
店舗内でもう一人だけいる社員との関係性も少し作れたようで、他人事ながらほっとする。
この間読んだマカン・マランの料理は、自分で作る料理に少し手をかけてみようかなという気分になったけれども、こちらはどれも、いいからプロが作った美味しいものを食べたい、という気分になる。
美味しいビストロでふわふわいろんなものを頼むような食事なんて久しくしてない。
あー、キッチン常夜灯が家の近くに現れてはくれないものか。
子どもが寝た後、一品だけなら、夜遅い時間が苦手な私でも行けるんじゃないだろうか。
Posted by ブクログ
美味しいご飯と自分自身との対話。疲れていると自分の扱いが雑になる。そうなると周りも見れなくなる。でも必死で懸命だから余裕がない。そんな中でも、人はご飯は食べる。美味しいご飯が無機質だった食事を変える。感情が動く。そこでようやく、張り詰めて押し殺された自分の存在と周りの人たちに気づく。
主人公のみもざさんが徐々に、鈍くなってしまった思考を取り戻していくのが妙に身近に感じれる話。
忙しかったり責任感だったり、いつの間にか私たちってすり減っていて、視野も思考も鈍くなりがち。少しでも余裕があれば読書なり旅行なりセルフリカバリーできるのだろうけど、ないなら生きる為に不可欠な中で出会いたい。キッチン常夜灯はみもざさんにとってそういう出会いだったと思う。