あらすじ
聖なる都市バンコクは、環境省の白シャツ隊隊長ジェイディーの失脚後、一触即発の状態にあった。カロリー企業に対する王国最後の砦〈種子バンク〉を管理する環境省と、カロリー企業との協調路線をとる通産省の利害は激しく対立していた。そして、新人類の都へと旅立つことを夢見るエミコが、その想いのあまり取った行動により、首都は未曾有の危機に陥っていった。新たな世界観を提示し、絶賛を浴びた新鋭によるエコSF
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Posted by ブクログ
まずジェィディーがあっさり処刑されてしまったのがすごく残念でした。
しかし亡霊となってカニヤに付きまとってたせいであまり死んだ感じがしなかったんで少し嬉しかったです。
あの後ジェイディーがちゃんと成仏してくれていることを願います。
カーライルがナーガの鱗をなぞりながら階段をのぼる場面や、戦闘用メゴドントがホク・センを襲う場面など細かな場面まで書かれているので映画をみているようでした。
特にエミコがソムデット・チャオプラヤを殺す場面ははっきりとは書かれていませんがスピーディーで爽快でした。
正直世界観や種子バンクのことは半分分かったような気がするレベルでしたが、
登場人物が個性的でギ・ブ・センのような悪意のあるキャラクターにも愛嬌があってどの勢力のキャラにも肩入れして読めたのでどの人物の章でも飽きませんでした。
戦闘の終わり方とその後の話が助長に感じましたが、ラストのカニヤの決断は読んでてすっきりしました。
結構派手な場面が多いのでハリウッドで映画化して欲しいです。
Posted by ブクログ
バチカルビという名前、舞台がタイ、ヒューゴー・ネビュラ受賞、バイオSFと聴いて、「ひょっとしてアド・バード的なSFか?」と思い手に取ってみた。半分正解といったところだった。
水位上昇で沿岸核都市が水没している近未来、石炭石油は枯渇してゼンマイが主力のエネルギーとなっている。遺伝子操作の動植物や人造人間が闊歩している、魑魅魍魎なタイの都市の政変劇を複数視点で描く。
主人公の一人、秘書型アンドロイドが表題の「ねじまき。少女」のエミコ。
環境省直属のパトロール隊「白シャツ隊」の副隊長で笑わない女カニヤ。
この二人の後半の活躍が、この物語の核心読ませ処。
正直、前半は世界観を把握するのに時間がかかり若干退屈、舞台背景や政変劇の内実など理解半分のところ(読み飛ばしてしまっていると思う)もあって、これは後半ついていけないかもなぁ、と危惧したのだが、そこは余り心配しなくても女性2人が突拍子もない大活躍をしてくれて、十分に楽しめた。
Posted by ブクログ
前巻のラストもキツい展開だったけれど、物語はさらに鬱々してきて最終的にかなり疲労感を覚える読書となった。
ジェイディーと対話するカニヤの姿の痛ましさ。
虐げられ続けてきたエミコの暴発。
大きな不運と少しの幸運に振り回されるホク・セン。
図らずも急転直下の事件の引き金を引いた形になってしまったアンダースンの失敗。
…それぞれの行動が一気に絡み合いながら迎えた大流血の惨事。
決してバッドエンドではないのだろうけど、結局最後の勝者となるのは新人類であることが示唆されていて、何とも言えない気分になる。
この過酷な世界を生きる上では当たり前なのだろうけど、登場人物たちはかなり即物的な生き方を強いられていて、その苦しさを想像してもなお感情移入は難しかった。見るべきは、ジェイディーの勇敢な死や、ホク・センがマイに見せる優しさ、アンダースンが最期にすがったもの、その中にある血の通った心なのかもしれない。けれど、 どうにもそこに気持ちを合わせていくことができなかった。
生存にかけてのエミコの欲求の強さに、心底ビビッてしまったというのも大きいかもしれない。