あらすじ
故郷を滅ぼされ、復讐のため後宮へ上がったハウファは、不死身の光神王を倒す法を求め、文書館の地下深くに隠された建国の秘史に至る。
やがて彼女は神宿の御子を産むが、同じ日に第一王妃のもとにも王子が誕生していた……。
多崎礼、もうひとつの革命の物語。
中公文庫『夢の上 夜を統べる王と六つの輝晶 2』を改題し、書き下ろし番外短篇「輝晶の欠片 伴走者の遺言」を新たに収録。
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Posted by ブクログ
夢の世界に再び魅了される。『夢の上2 紅輝晶・黄輝晶』多崎礼著 書評
前作『夢の上1 翠輝晶・蒼輝晶』が発売されてから約一年、待ちに待った続編を手に取ると、その魅力に再び引き込まれ、ページをめくる手が止まりませんでした。
前作で心を奪われた独創的な世界観が、今作ではさらに深化しており、物語の展開に引き込まれ続けました。美しくも残酷な夢の世界で繰り広げられる登場人物たちの葛藤や成長に胸が熱くなり、読み終わった後も興奮が冷めやらぬままでした。
物語の概要
物語の舞台は、夢と現実が交錯する幻想的な世界。主人公・ハウファは復讐を遂げるため、不死身の光神王を討つ方法を探し続けています。彼女は王の側室として後宮に潜入し、文書館の地下に隠されたサマーア神聖教国建国の秘史を解き明かすべく動きます。その過程で、光神王の秘密と、この世界の根幹を揺るがす真実に直面することになります。
今作では、ハウファに加え、彼女を取り巻く登場人物たちの思惑が交錯し、物語に深みを与えています。
考察と所感
本作の最も際立っている点は、その世界観の美しさと精緻さです。多崎さんの作品は、言葉一つひとつが美しく、情景が鮮やかに目に浮かぶように描かれています。夢の世界の描写は幻想的でありながら、どこか現実世界とつながっているような感覚を覚えます。
また、物語の構成にも感嘆を覚えます。複雑に絡み合う人間関係や、過去と現在が交錯する展開に、読者は飽きることなく引き込まれます。特に、終盤の怒涛の展開には息を呑みました。その迫力は、まさに圧巻です。
さらに、この作品は単なるファンタジー小説にとどまらず、現代社会への警鐘も含まれているように感じました。例えば、権力者の腐敗や情報操作による民衆の扇動など、現代社会でも問題となるテーマが、この夢の世界で見事に描かれています。
『夢の上』という作品は単なる娯楽小説ではなく、読者に深い問いかけを行うものであることが伝わってきます。
おすすめの読者層
・絢爛たる世界観を持つファンタジー小説を愛する読者
読み応えがあり、奥深い物語を求めている読者
・多崎礼さんの他の作品を読んだことがある読者
・普段あまり本を手に取らないが、読みやすい小説を探している読者
また、本作は前作を未読でも楽しめる内容になっていますが、前作を先に読んでおくことで、より深く物語を堪能できるでしょう。
ぜひこの機会に『夢の上2 紅輝晶・黄輝晶』を手に取り、多崎礼さんが紡ぎ出す夢の世界に浸ってみてください。きっと、あなたもこの物語の虜になることでしょう。