【感想・ネタバレ】永遠の詩08 八木重吉のレビュー

あらすじ

言葉のひとつひとつに悲しみと愛があふれる詩人。

●今日的に意義のある詩人を採り上げ、その代表作を厳選。
●現代仮名遣いによる本文、振り仮名付きで読みやすく。
●各詩には詩人(高橋順子・矢崎節夫・井川博年)による解説をつけ、作者の生い立ち、作詩の背景、詩のもつ魅力がよくわかる。
●各詩人の人生と詩集が一目でわかるビジュアル年譜(写真とイラスト入り)。
●巻末には魅力的な執筆陣によるエッセイを収録。

癒しに満ちた傑作詩を鑑賞解説付きで収録。

本シリーズの最後、第八巻を飾るのは、今の時代にこそ読んでほしい、〈かなしみ〉の詩人、八木重吉。みじかく、とつとつとしたことばで、泣きたくなるようなさびしい感情を詩につづった。すべての詩に鑑賞解説付き。

永遠の詩シリーズは、今日的に意義のある詩人をとりあげ、代表作を厳選しました。わかりやすい解説で、詩があなたにもっと近くなります。

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Posted by ブクログ

フォロワーさんのレビューで知った詩集。

うつくしいことばと、純粋さに、わたしの忘れかけていた何かが共鳴した、ような気がした。
重吉の詩のことばを借りれば、「ほそいがらすがびいん」と鳴って、壊れるように。
壊れた「がらす」は粉々になって、光にきらきらと反射してプリズムとなる。

重吉の詩を読んで「びいん」と鳴ったひとは皆、そのうつくしさに惹かれるのだろう。

重吉はずっと、かなしさを抱えてた。
愛する妻と愛らしい子たちはいても。
平安な日々を送っていたときも、詩では「はらにたまっていくかなしみ」と書いていたことを知って、後に妻の富美子さんは、『八木をひたしていた【かなしみ】とはなんだったのだろう、としきりにおもわずにはいられない』と、回顧している。

人間の抱える深いかなしさって、結局、ひとりで生まれて、ひとりで生きて、ひとりで死んでいくってことに尽きるのではないだろうか。

でも、重吉の【かなしさ】は、わからない。

重吉は29歳のとき結核で幼い子と妻を残し夭折している。
最期は妻の名を呼びながら亡くなったそうだ。

好きな詩。

[草に すわる]

わたしのまちがいだった
わたしの まちがいだった
こうして 草にすわれば それがわかる


[ああちゃん!]

ああちゃん!
むやみと
はらっぱをあるきながら
ああちゃん! と
よんでみた
こいびとの名でもない
ははの名でもない
だれのでもない


[あかつちの]

あかつちの
くずれた土手をみれば
たくさんに
木の根っこがさがってた
いきをのんでとおった


短詩が好きだな、と思う。
短詩ではないけれど、「この世の中から活動写真と芝居と写真道楽と別荘をなくしてしまえ」
と息巻く[なんというわからぬやつらだろう]、宮沢賢治の[雨ニモマケズ]を思い出した[こういうくらしができたなら]も、いい。





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2023年10月20日

Posted by ブクログ

書店で表題作に胸を突かれて購入した詩集。
なんて美しくて悲しい詩なんだろう。
それでも、日差しを受けてキラキラ光る雨粒や、降り注ぐ光、雲間からの青空が浮かび、光に満ちて神々しい。

29歳でこの世を去った八木重吉。
名前は重々しい響きだけれど、彼の紡ぎ出す言葉達は、コロコロと楽しげで、軽やかで、美しくも悲しい。
可愛らしささえ感じる素直な目線と柔らかい文章、
そして唯一無二の表現力に、貴方もきっと心打たれるはず。

「果物」
秋になると
果物はなにもかも忘れてしまって
うっとりと実ってゆくらしい

うっとりと実るだなんて表現、他に誰が出来ようか。
たっぷりと果汁を含んで甘く熟している様を思い浮かべ、口の中まできゅっとするほどだ。
詩を読んだ私達までうっとりしてしまう。

他にも「朝の あやうさ」や「草に すわる」、「涙」、「悲しみ」など、かけがえのない言葉達と共に、重吉の正直な心の内に触れることが出来る。
きっと貴方の心のオアシスになるだろう。

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2022年09月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

八木重吉の名前を知ったのは最近なのですが、どこで知ったか忘れましたが(アンソロジーかなにか?)とにかく、この人の詩集をもっと読んでみたいと思わされました。
それで、探したらこの『永遠の詩』のシリーズが一番入手しやすいとわかり、このシリーズを集めだしました。はじめに八木重吉ありきでした。
とても透明感があって、とってもピュアで美しい詩ばかりでした。
私のレビューより、ご存知ない方の為に、短い詩が多いので何篇かまとめてご紹介します。


「素朴な家」
この明るさのなかへ
ひとつの素朴な琴をおけば
秋の美しさに耐えかねて
琴はしずかに鳴りいだすだろう

<解説より>
八木重吉の詩で一番好きな詩に「素朴な琴」をあげる人が多い。言葉のリズム、選び方や配置、すべてが完璧。よぶんなものがまったくない、みごとな四行詩である。
題名については諸説あるが、次の郷原宏の解釈が優れていると思う。
「素朴な琴」は詩人その人の象徴であろう。自然の美しさに耐えかねて鳴るのは、詩人の心が美しいからである。
なお<琴>といえば西洋楽器のリラ(竪琴)のようなものと思われがちだが、結婚前に夫人が習っていたという日本の琴から発想したのではないかと思う。この詩は現在、八木家の墓地の一画に建てられた重吉像の傍らにある詩碑に刻まれている。


「花になりたい」
えんぜるになりたい
花になりたい


「ほそい がらす」
ほそい
がらすが
ぴいん と
われました


「虹」
この虹をみる わたしと ちさい妻
やすやすと この虹を讃めうる
わたしら二人 きょうさいわいのおおいさ


「花」
おとなしくして居ると
花花がさくのねって 桃子が言う


他の詩にも好きなものがたくさんありすぎて困るのですが「おおぞらの こころ」「白い 雲」「春」「母をおもう」「涙」「光」などもよかったです。


八木重吉(やぎ・じゅうきち)
1898年(明治31)~1927(昭和2)
東京都町田市相原の農家に生まれ、師範学校時代に、キリスト教の洗礼を受ける。その後、英語教師となってからは、最愛の夫人との暮らしの中で、人間存在のかなしみを問う、奇蹟の詩を生んだ。わずか29歳で夭折。没後、詩集が次々に出版され、そのピュアな精神に心うたれる読者は増え続けている。

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2019年11月10日

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ずんがつんと響くのではなく、じんわりとあたたかい水がさわさわ沁み入ってくるような、とても静かながらも溢れ出ることが出来る根にある強さを感じました。年を重ねるごとに意識して見えなくした感情や、無意識のうちに消してしまった想いという、スポンジみたくすかすかになってしまった私を潤すように、ゆっくり、ゆっくりと沁み入るんです。それこそが詩であり、言葉のあるべき姿だと私は思います。

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2011年03月06日

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こんなにも心にしん、とひびく詩があるかと驚く。
人は、限りない幸せの中にあってもどこか底の方では終わりのないさびしさと生きてる。
さびしさだけが唯一本当の隣人。
静かにせつなく、どこまでもやさしい詩。

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2010年08月20日

Posted by ブクログ

人形 という詩が好きだ
桃子(娘)との何気ない日常が
飾らない柔らかい言葉で書かれていて
子育てしてるとそういう時に
ニヤってしたくなる時あるよねって
共感。

若くして亡くなったせいか
序盤からそこはかとなく漂う寂しさ。

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2024年07月04日

Posted by ブクログ

八木重吉さんの詩集ですね。
「永遠の詩シリーズ」八巻目です。
「永遠の詩シリーズ」はこの作品が最後です。思えば、詩へのいざないの出会いでした。
全八巻、いずれも私には近しい詩人たちでした。詩集と言うとなんだか別の世界の言葉のように感じられていました。
このシリーズの作品はわかりやすく、心に実にしみてきます。
八木重吉さんの詩集は初めて読みましたが、軽やかでいて美しい響きがあります。
短い言葉の中に、思いの丈をこめて解き放したかのようですね。自由律俳句のような簡略化の極みが感じられます。
八木重吉さんの生涯が詩句の解説で寄せられていますが、小さな幸せをつかみながらも、若い身で病に倒れなければならなかった苦節の晩年が窺えます。基督教の信仰の支えと奥さんの愛情が、美しく詩編を導き出したようです。
詩人の生来の優しさと愛情の深さがあふれでる詩編ですね。

  春

 春は かるくたたずむ
 さくらの みだれさく しずけさの あたりに
 十四の少女の
 ちさい おくれ毛の あたりに
 秋よりはひくい はなやかな そら
 ああ きょうにして 春のかなしさを あざやかにみる

解説の井川博人さんは「日本人の心の中に、詩があるかぎり、八木重吉は生き続ける。」と断言されています。
八十篇の詩には、八木重吉さんの思いが吐露されています。

詩人の言葉
『 私は、友が無くては、耐えられぬのです。しかし、私にはありません。この貧しい詩を、これを読んでくださる方の胸へ捧げます。そして、私を、あなたの共にしてください。』「秋の瞳」序

余韻の残る詩篇が、なぜか物悲しく感じられるのは、私だけかもしれませんが、哀歌の響きを感じます。

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2023年03月11日

Posted by ブクログ

「かなしみ」というのは愛情に通じ、
やさしさや美しさ、さみしさにも通じている。
それを感じる1冊だった。

作者は「かなしみ」を人間存在の原点としていた、
と解説に書かれてあったけど、詩を書くってそういうことなのかもしれない。
必ず死ぬことを義務づけられて生まれ、死ぬことを前提に生きる人間のかなしみ
自分も、大切な人も変わりゆくことを、いつか消えてなくなることをわきまえて、目の前のものを見つめている視線を感じた。

「貫ぬく 光」と「虹」という詩がすき。

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2018年12月02日

Posted by ブクログ

男性詩人はなんとも儚げな印象の詩が多いですね。表紙の詩には思わずハッとするような透明感のある儚さがありました。冒頭に「こんな簡単な詩、自分にも書けると思った」みたいな前書きがありましたが、そういう前書きがあってなお、「なんでこれをもって詩としたんだろう?」と思うような短くてさらっと書いたようなサッパリした詩がたくさんありました。「えんぜるになりたい」という文句がありましたが、ほんとうに、「えんぜる」のように軽やかですね。わたしは宗教をもたないのですが、最後の詩には涙ぐんでしまいそうになりました。

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2014年03月09日

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