あらすじ
孤独な魂、傷つきやすい心。永遠の天才。
●今日的に意義のある詩人を採り上げ、その代表作を厳選。
●現代仮名遣いによる本文、振り仮名付きで読みやすく。
●各詩には詩人(高橋順子・矢崎節夫・井川博年)による解説をつけ、作者の生い立ち、作詩の背景、詩のもつ魅力がよくわかる。
●各詩人の人生と詩集が一目でわかるビジュアル年譜(写真とイラスト入り)。
天才詩人、中原中也の傑作詩を収録。
中原中也は、不安定な時代に生きる傷つきやすいこころを、中也節といわれる独特のリズムにのせてうたった。やさしく、やるせなく、時に残酷に。青春の喪失をうたうことに命をかけた詩人は、わずか30歳でこの世を去った。
永遠の詩シリーズは、今日的に意義のある詩人をとりあげ、代表作を厳選しました。わかりやすい解説で、詩があなたにもっと近くなります。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
この永遠の詩シリーズは8人の詩人が取り上げられていますが、最も早熟の天才は中原中也ではないでしょうか。
高橋順子さんの解説によると、幼いころは神童といわれ、17歳で女優と同棲、のちに失恋、愛児文也の死、そして自身の早すぎる死まで短くて波乱に満ちた生涯だったようです。
中也のファンとしても有名な川上未映子さんも巻末のエッセイ「悲しみとはいったい何か」で中也の背負っていた悲しみについて語られています。
その作品は、静かで明るいものから激しさを秘めたもの、七五調までと多岐にわたってその天才ぶりをうかがわせています。
「春と赤ン坊」
菜の花畑で眠っているのは…
菜の花畑で吹かれているのは…
赤ん坊ではないでしょうか?
いいえ、空で鳴るのは、電線です電線です
ひねもす、空で鳴るのは、あれは電線です
菜の花畑に眠っているのは、赤ン坊ですけど
走ってゆくのは、自転車自転車
向こうの道を、走ってゆくのは
薄桃色の、風を切って…
薄桃色の、風を切って…
走ってゆくのは菜の花畑や空の白雲
ー赤ン坊を畑に置いて
<解説より>
1934年(昭和9)10月、長男文也が生まれた。長男の誕生は中也の憂いをはらう出来事だった。
この詩はその翌年に発表された。赤ン坊の誕生を寿ぐもろもろのものたち…。
あまりに明るく透明なので、なにか怖いほど、第三連で自転車は向こうの道を走っているのだが、第四連では風景が走っている。詩人の心が走っているのだ。「妹よ」とともに諸井三郎により歌曲として発表された。
「帰郷」「盲目の秋」「生い立ちの歌」「頑是ない歌」「一つのメルヘン」「月夜の浜辺」もよかったです。
中原中也(なかはら・ちゅうや)
1907年(明治40)~1937(昭和12)
幼時より神童とうたわれ、中也節とよばれる独特のリズムが耳に残る詩を生み出した。
しかし、繊細すぎる心と体は徐々に変調を来たし、30歳の若さで病没。死後、その評価は高まり、いま、もっとも愛唱される詩人の一人である。
Posted by ブクログ
「私はその日人生に、椅子を失くした」だと思い、検索したがヒットしませんでした。中原中也で検索しました。
中原中也の繊細な詩集です。
年譜、資料、解説もあります。
邪道かもしれないが、曲をつけたいものがいくつかあった。
Posted by ブクログ
中也の詩は、忘れていた日本語の美しさ、言葉と言葉の間の無限の可能性を思い出させてくれる。残酷なことに、美しいことに、理由なんてない。湖上という詩が、とてもロマンチックではかなくて、素敵。
Posted by ブクログ
何度も読んだことのある詩でも、こうしてタイトルや装幀を変えて売っているとつい買ってしまう。このシリーズ、いいと思う。年を取った今読んでも、若い頃とは違う部分でまた引き込まれる。
Posted by ブクログ
教科書に載っていたものしか知らなかったので、改めて解説もついたものを読む。リズムが良くて何度も繰り返し口ずさみたくなるのが歌みたい。今でも好きな人が多いのがわかる気がした。
Posted by ブクログ
中原中也の詩集ですね。
私の中也との出会いは、解説の川上未映子さんと同じく中学校の国語の教科書でした。トラウマのように、詩と言えば中也を彷彿します。
実際は中也の詩の深い意味を理解していたとは言えず。蝶のイメージが強烈に焼きついて私の心に住み着いただけようでした。
中也の詩集をあらためて読んで、中也の内包の格闘を解説の高橋順子さんと共にふれる事が出来たように思えます。
もちろん、宮沢賢治さんと同じようにすべてを思い至れる訳ではないので、中原中也さんの詩を吟じてみて感じたままに私流に想い受け止めてみました。
永遠の詩のシリーズは、作家の作品から選び抜いた作品集です。選択がとても好ましくとても気にいってしまいました。
一つのメルヘン
秋の夜は、はるかの彼方に、
小石ばかりの、河原があって、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射しているのでありました。
陽といっても、まるで硅石か何かのようで、
非常な個体の粉末のようで、
さればこそ、さらさらと
かすかな音をたててもいるのでした。
さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それでいてくっきりとした
影を落としているのでした。
やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
今迄流れてもいなかった川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れているのでありました……
中原中也さんの詩集を少しずつ読み起こすきっかけになりそうです。
Posted by ブクログ
詩というものに馴染みがないのだけど、
永遠の詩シリーズは、そんな私でも読みやすくて、この本をきっかけに八木重吉など詩を好きになるきっかけを得ている。
装丁も綺麗で、解説も読みやすく、
中也がどんな人生を歩んで詩をつくってきたのかということが分かる。
川上未映子のあとがきも、中也ファンの心境がよく表されていて、いい。
生々しくて、痛々しい言葉、
リズミカルで反芻したくなるような美しいリズム、
あやうさ、
いいです。
Posted by ブクログ
中原中也は高校の授業で取り上げられて少し気になっていた詩人。
やっと「永遠の詩」シリーズで見つかったので読みました。
「頑是ない歌」「湖上」「雨が、降るぞえ」あたりが気に入りました。
後は七五調のもいいですね。
今度はもう少しちゃんとした詩集も読んでみようかな。