【感想・ネタバレ】竜の医師団4のレビュー

あらすじ

カランバスのもと元首にして真の主治医ニーナ氏率いる〈医療交流団〉一行が、竜医療先進国イヅルへ赴いた。目的は幼竜チューダの翼の治療法を聞き出すこと。そう簡単に教えてくれるとは思えないので、餌もちゃんと用意してある。竜の細胞を移植した目をもつリョウの存在だ。そのため成績優秀なレオやリリと一緒に赤点すれすれのリョウも同行したのだ。〈竜舞う国〉イヅルは、その名のとおり沢山の竜が訪れる豊穣の地。そこでリョウは治療のためにイヅルに降りた竜〈青のアルワン〉を見た。医療と人のあり方を問う、異世界本格医療ファンタジイ。/【目次】プロローグ/カルテ10 竜舞う国の、夜の目の医師/カルテ11 幻の竜の、幻の病/カルテ12 竜人の血と、青き竜の血/エピローグ 青の翼と、奇跡の翼

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Posted by ブクログ

ネタバレ

グッときた文章(ネタバレ含みます)


「でも先生も仰いましたよね。医は未熟だって。医療によって、却って不幸にする命は、本当にないんですか」
「ある」
極北の赤き人は、冷厳に告げた。
「だが、少年。その『不幸』とやらを誰が決めるのかね。お前か?私か?クズリか?あるいは世界の皆で票決でも取るか?‥‥‥いいや。自分以外に、幸不幸を決めさせてはならんのだ」
不幸と定められて生まれる命はないと、氏は静かに説く。
(中略)
死にたくない、死なせたくないと泣き叫ぶ者がいてこそ、医学はこの世に誕生したのだと。命がこの世に生まれ落ちた瞬間から、その叫びは始まり、医療はそれに応え続けていく。
生きたいと、幸せになりたいと、患者自身が望む限り。
「そのあがきを醜いと目を逸らす者は、医療者ではない。ましてや見るに堪えんからと、命そのものを否定する権限は、医師にない。この世の苦しみに抗いたければ、どんな命も生きられるよう、知恵と技を追求し続けるのだ。ー--医療とはそうした、茨の道なのだよ。」

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2025年05月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

子竜チューダの翼の治療法を学ぶため、竜の医療先進国のイヅルにやってきたリョウたち。そこで片翼に異常があり骨接ぎ治療で飛べるようになった竜アルワンを見ます。
チューダの治療に希望を見出すリョウ。
イヅルの医療長官で英雄、リョウと同じヤポネ人のクズリの技術に感嘆するも、「優るる生」のため「断種」をしようとしているクズリの考え方に戸惑います。
アルワンの手術をとめようとするリョウたちは間に合うのか ―― 。


人間が自然に逆らい生きる個体を選んで良いのか、考えさせられます。確かに飛べない翼をもった竜が生まれるのは不幸かもしれないし、それによって人間が受ける被害も甚大なのかもしれませんが…。
でもチューダが元気に飛ぶ姿を見られたら、それはとても嬉しいことだと思うのです。チューダの為にカランバス国に来てくれたアルワン、ありがとう!

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2025年08月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

イヅル行ったかー
今回は「医療の思想」がテーマなようだ。
「優るる生」を残し「断種」。その線引きは「誰」が、なんの「権利」があって下すものなのか。
まさに「優勢保護法による断種」が行われた日本の問題でもある。
医療は「生」を巡り常に矛盾を抱える。「生かす事が目的」だからではないか。慢性疾患、先天性の疾患の治療に追われる中で、それが最善かどうか。医師は常に問われ続ける。
それならいっそ「病の種」を断つ方が楽じゃん!と思っても不思議ではない。
「優るる生」の定義は「病がない事」なのか。「血統」「純血である事」「名家の血筋」なのか。それは作中ではわからない。しかし、どちらにしろ人間のちっぽけな脳が考え出した傲慢な思想だ。

グズリ医師が「羊たちの沈黙」に出てくるレスター教授のようで、時期をみていつか脱獄する予感。楽しみである。

それはそれとして、早くお爺ちゃんと赤ちゃんの話が読みたい!

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2025年06月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本巻より若干物語の様子が変わり、竜と人間の関わり合いだけでなく人と人の関わり合いとそれに伴う思想の話が色濃くなった。これまで語られてきた様々な国や人種の背景を鑑みると当然の帰結とも言える。本巻で判明した人間の思想の違いの話が今後どう展開されていくのか興味深い。

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2025年05月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読み始める前、うら表紙に、「医療と人とのあり方を問う」と書いてあって、

あれ、今までそんな話だったっけ?
と少し意外だった。
この物語は、医療を通じて、リョウの人としての成長を描いているけれども……?
でも、読み進めたら、この巻はまさにそのとおりの内容だった。

奇跡の赤ちゃん竜・テューダの羽根の治療のため、竜医療先進国であるイヅル国へやってきた一行。
ニーナ先生が、竜の目を持つリョウを交渉のネタにしたため、リョウ、レオ、リリは留学という名目で同行している。
実際にやって来たイヅル国は、医療の技術も医師のレベルも高く、リョウたちは驚き感心するばかりだが、この国にも独特な民族差別・階級差別があった。
ヤポネ一族で竜の目をもつことが最上位の階級に位置づけられるため、竜の目を持つ子どもが生まれやすい遺伝子の結婚相手を国が推奨しているのだ。
天才外科医・クズリ医師はそのピラミッドの頂点におり、リョウのことを気に入って、ある勧誘をしてくる……。

――なるほど、人間にデザイナーズベイビー論を適用させている国では、竜の命すら選別しようという発想が出てくるんだねー。

クズリ医師は、イヅル国の在り方を是としているわけではない。むしろ、憎んでいるかのような空気を感じた。が、イヅル国で優遇されてきた自分に、国を批判する資格はない。その程度には、クズリ医師はフェアだ。根っからの独裁者気質だけれども。

「医療とは患者のため」程度の言葉では、この巻のそれぞれの医師たちの逸脱は説明できない。
誰もが、自分こそは「患者のための理想の医療」を考えているつもりなのだから。

「真に患者のための医療とはどんなものか」という問いに自縄自縛になりそうなリョウに、だからこそ、最後のニーナ医師の喝破が、ほんとうにスカッとした。

やっぱ、ニーナ先生、最高!
この物語は、じつはオトナがかっこいい。
今回、ナスターシャお嬢様の伯父・サイラト外交官も、ひじょうにかっこよかった。
リョウから見れば「悪代官みたい」なこの2人は、180度価値観の異なる国でも、己の足場を失わず、かつ柔軟性を保っている。

そして、お子ちゃまたちはみんな一生懸命がんばってる!
今回は、特権階級と差別される者の立場がひっくり返った。
リョウは生まれて初めて尊重され、優先扱いを受ける立場になった。それはそれで居心地悪いものなのだと知った。レオは、その場にいないものとして扱われたのは初めてだろうし、ナスターシャお嬢様は耳を隠さずに自然体で過ごせた。まあ、リリはいつもどおりだけどもw
リリとナスターシャが仲良くなって、わちゃわちゃしているところが、今回の癒しだった♪

そして、やっぱり圧巻はエピローグ。
ああ、この世界はやはり竜のものなのだなあ、と実感させられる。
「青のアスラン」と山吹色の赤ちゃんテューダの愛情あふれる邂逅に、うるっときた。

そう、医療はこのためにある。
病を克服した者が、次の患者に希望を渡すために。

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2025年05月22日

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