【感想・ネタバレ】真夜中ハートチューン(10)のレビュー

あらすじ

「深夜ひとり、ベッドの上、キミの声だけが救いだった。もう一度キミと話したい。言いたいことがあるんだ」。
高校2年生の山吹有栖は、「アポロ」という名の、顔も本名も知らないラジオ配信者の少女を探していた。だがある日、有栖は進学先の高校の放送部にアポロの手がかりを得る。そこにいたのは「声に関わる仕事に就く」夢を描く美少女が…4人!!

声優養成所の昇級審査を目前に控え、スランプ気味のしのぶを見かねた山吹が提案したのは、なぜか浅草デート!? 一方、イコと六花が共同制作したオリ曲が遂に完成をバズらせるため山吹はみんなを巻き込み“ある作戦”を決行する! さらに、学校では修学旅行の話題で持ち切り!放送部の4人はそれぞれ夜景を一緒に見るため山吹を誘おうとしていて…!?

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Posted by ブクログ

昇級審査を前に実力不足に関する懸念が露呈するしのぶ。単純に実力を鍛え直して評価を上げるというのも一つの手だけど、その手段を取るよりもしのぶという個人を知ってアナウンサーを目指す動機を足掛かりに彼女のメンタルを安定させるのも一つの手
ただ、そこで山吹が堂々としのぶをデートに誘うとは思わなかったな。しかも、実態は他の何かだったという事もなく普通にデートじゃん!

けど、2人は付き合いそうなわけでも付き合っているわけでもない。昇級審査を前に何の理由もなくデートはしない。そう判っていてもテンションが上がりっぱなしになるしのぶの様子は可愛いね
そんなしのぶが明かした動機はいじらしさが有りつつもとても等身大の理由と思えたな。アナウンサーになって大きな事がしたい訳ではない。けれど、今の高みでは出来ない事ではある。彼女の夢にかこつけて、これからしのぶが持つべき目線を意識させる山吹の台詞は良かったね。というか、もうあれって愛の告白な気がするよ…?

山吹の応援もあってか無事に寧々含めて合格できたようで。これまでは3人仲良しこよしであたふたしていた。ここから先のしのぶは1人で夢に向けて技術を学ぶ訳だけど、そうした局面にも立ち向かえる強さを無事に手にしたように思えるよ


前々からオリジナル楽曲を制作しようとしていたイコの頑張りが遂に結実する時が
それ自体は喜ばしい話だけど、イコとしては自分の恋心を表現したような曲を六花に作らせた事に少し罪悪感が有るようで
二人の関係って普通の友人だった筈なんだけど、同じ人を好きになってその感情を互いに知っている仲でも在る。別に抜け駆け禁止とかそういう制約を課している訳では無いけれど、だからって自分の恋の為に相手を利用する事に後ろめたさは有るわけで

そんなイコに対して六花の方も自分の遣り方を通す事で山吹に良く見て貰いたいと自己の為にイコを手伝った心を明かす様は良いね。二人は恋のライバルになるのではなく、恋の協力者としてこれからも過ごしていく構図が浮かび上がるかのようだったよ

ただ、気になるのはイコの曲が流行るように百歳あおが協力した点か。以前登場した際にはイコというより山吹に注目している感が満載だった彼女だけど、ここで山吹の策略に乗ったのはイコを自分と同じステージへと上げて山吹と直接対決するため…なのかな…?
あと、もう一つ気になるのはバズらせる過程にて六花のダンス動画が思った以上にウケていた点か。こちらはこちらで彼女の音楽活動に何らかの影響を生みそうだ


話は切り替わり学生らしいイベントが。修学旅行といえば、何処を訪れるかよりも誰と訪れるかを期待してしまうもの。山吹への好意を隠せなくなってきたしのぶ達にとって修学旅行が絶好の機会となってしまう事態は避けようがなく
ここで山吹への好意が割とあからさまに感じられながら、4人の絆も重視する寧々が友人の誘いを邪魔するとはね。この方針は山吹の狙いに反しないものだから彼は受け入れるけど、山吹が偉いのは寧々がそのような邪魔をせざるを得なくなった背景をしっかりと理解している点だね。だから彼はもっと強い形で少女達を牽制する為にあんな縛りを設けるわけだ

これって何とも言えない事態だよなぁ……。山吹としては六花達と恋愛するより彼女らの夢を応援したいと考えている。そして寧々は自分の感情がありつつも4人としてずっと一緒に居たいと願っている。でも、あの牽制で六花達の想いは抑えきれないし、口を開いた寧々自身も言語化し辛い曖昧な感情を抱いている

そんな寧々の感情に対する一つの答えが『アンビバレンス(両価性)』となりそうだね
彼女は友人達が恋に浮かれる中であろうとも、決して自分も山吹を好きだなんて認めやしない。それがこれまでは彼女にとって山吹や六花達と向き合う上で負担となっていた
けれど、正反対の感情を持つ正しさを知った彼女はようやく自分の感情に対して一つの踏ん切りをつけられたようで

山吹が寧々に問い掛けたのは「俺のこと好きなのか?」、これに対する彼女の答えとその表情は寧々という少女が己の在り方に迷いを抱かなくなった決定的瞬間であるように思えたよ

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2025年09月18日

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