あらすじ
文明はなぜ爆発的な進歩を遂げ、近代ヨーロッパは世界の覇権を握ったのか? 帝国・科学・資本を中心に未来への幻想が生まれる歴史を解く。文明は人類を幸福にしたのか? ついに文庫化!
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Posted by ブクログ
非常に面白かった。
人類史の書籍を初めて読んだが、これまでにない切り口で、人間とはなにか、どこへ向かうのかを考えさせられる内容だった。
狩猟から農耕へのシフトが、これほどまでにインパクトを与えたというのは印象的だった。
人間のもつ特性について、これまでの長いスパンでの進化という視点で考えると納得感のあるものも多々あり、その点も興味深かった。
Posted by ブクログ
歴史を踏まえながら、現在の経済について書かれている本
現在の資本主義経済は明日の生活の安全があるからこそ成り立つことがわかった。
また、将来の安全が確保されているから他人を信用できる余裕を持つことができることがわかった。
経済を支えてるのはホモサピエンスが得た見てないものを信用する力が根本にあると感じた。
最後の「私たちは何を望んでいるのか」は自分が何をしたいのか考える良い言葉だと感じた。
Posted by ブクログ
下巻は宗教、資本主義、科学革命、そして未来の話。
拡大するパイという資本主義のマジック。資本主義の出現まではパイの大きさは変わらず、誰かが富んだ分、誰かが貧しくなる。キリスト教の教えとしても、金持ちが神の国に入ることは難しいとしていて、余った富は慈善事業に回すような文化だった。信用とは今日と明日のパイの大きさの差。パイが拡大することで信用が生まれ、経済が回りだす。貨幣や資本主義経済というサピエンスが造り出したシステムのすごさを感じる。
そしてコロンブスの話も印象的。歴史の教科書ではコロンブスがスペイン女王の援助を得て西回り航路を開拓したと記載されているが、その時代のことを考えると、援助を得るのにどんな苦労があったのか推して知るべしという感じだ。
家族というコミュニティの変化についても触れられていた。以前は家族というコミュニティが年金や医療、介護、福祉、教育などの役割を担っていた。それが今では家族というコミュニティに縛られずに生きられるようになっている。家族の絆が資本主義、産業革命によって弱められたと表現されていた。過去と比べて家族の在り方は変化し続けていて、それは今でもそうなんだろうと思った。平成から令和でも親戚の人たちとの関わりは変わってきている気がする。変わってきていることを悲しむこともあるけど、現状を受け入れつつ自分の接したいように接していくのがいいと思った。
最後には文明の進歩と幸福について話が及んでいる。昔と比べてサピエンスは幸せになったのか。上巻では農業革命によってサピエンスはより労働が必要になり、幸福になったかはわからないという話があった。そしてここでは生化学的な考え方として、物質的に現代人は豊かになっているが、体内で分泌されるセロトニンの到達濃度は変わらない。つまり幸福感は微塵も上回らない。そしてそのセロトニンの分泌量は人によっても異なる。会社の研修でこれまでの人生の各点で幸福度をパーセント表示するものがあって、他の人と全然水準が異なることがあった。これはこの時のようなことを言っていたのかと思った。
他にも認識を改めさせられるような事柄がたくさん記載されていた本書。1回読んだだけでは沁みない内容もあったに違いないので、読み返す必要もあるだろうと思う。
Posted by ブクログ
サピエンス前史
第一部
安静時、脳は25%のエネルギーを消費する
250万年前 東アフリカにてホモ属が出現
200万年前 アフリカを出る
30万年前 火の利用。調理。チンパンジーが一日五時間の咀嚼。人間は一時間。長を短くしてそのコストで脳を大きく。
7万年前 中東に到達。
五万年前 デニソワ人、ネアンデルタール人との交雑の証拠となるDNA
3万年前 ネアンデルタール人絶滅。
7-3万年前 認知革命→言語の柔軟性、噂話説。150人の親密な集団の壁を虚構によって突破。想像を語り、虚構を共有する力。
4.5万年前 オーストラリアへ。大量絶滅。
1.8万年前 最終氷期が終わる。気温上昇、降雨増加。
1.5万年前 犬を飼いならす
1万年前 南北アメリカ大陸への進出
人は出産が早期。直立二足歩行の代償。女性は腰回りを細める必要があり産道が狭くなった。早い段階で出産を行う必要があった。さもなくば命の危険が。早期の出産を行う遺伝子が生き残る自然選択。他の哺乳類と比較してヒトの赤子は未熟。
9500-8500年前 トルコ南東部からイラン西部にかけて 農耕の開始。 農業革命。
AD 0-1000 二億五千万の農耕民。
農耕民は人間による、人工的な「島」に棲んでいた、
未来に対する不安が生じる。農耕民はミライのために働いていた。
農耕を始めて、後戻りができなくなった。気が付いた時には狩猟採集民に戻れない。
人口が増えすぎた、荷物が大きくなりすぎた。狩猟採集の時代を忘れた。
片手間で始めた農耕だが、気が付いたらそれに頼り切っていた。
農業革命は詐欺だったのかもしれないが、もう後戻りはできない。
BC1776ごろ ハンムラビ法典
古代バビロニア人の協力マニュアル、法律と裁判の判例集(300の判例の定型)。@メソポタミア文明
ハンムラビ王が公正な王であるとするよりどころにもなった。
上層自由人、一般自由人、奴隷✖男or女、三つの階級と二つの性
AD1776 アメリカ合衆国の独立宣言
想像上の秩序。人間が創出して勝手に信じているだけ。
二つとも、この宇宙に普遍の原理であるわけはない。
進化的な成功と個々の苦しみ。
第二部 農業革命
単位面積あたりから得られるカロリーは安定して多い。→人口が増加してしまう
子どもが多くなり、離乳が早まる。母乳による免疫の強化が不十分となり、乳児は死ぬ。
定住により、女性はいつでも妊娠可能に。子供が移動の邪魔にならなくなった。そもそも移動しないから
後戻りはできなかった。人口が増えたし、狩猟採集の時代は何世代も前のことだから。
BC3500-3000 書記体型の発明。 シュメール人 不完全な書記形体
6つの数。 1,10,60,3600,36000 と名詞。 大麦、クシム→個人名なのか、役職なのか。
「29086 大麦 37カ月 クシム」
BC3000-2500 アラビア数字の開発。 0-9までの10個の記号、記述の効率性が上がった
第三部 貨幣・帝国・宗教による人類の統一
貨幣
100種の品物が市場にある時、交換レートは4950通り。
1000だと499500通りにもなる。貨幣が役に立つ
共同種間的現実。
他の物の価値を体系的に表すために人々が進んで使うもの
貨幣は、私が、隣人が、聖職者が、王がそれを信じているから。
はじめは、「本質的価値」があるものを貨幣とせざるを得なかった。大麦とか@シュメール塩とかもおそらくそう
本質的価値を欠くが、保存・運搬が容易な貨幣を信じるようになったことに貨幣の真の力がある。
これにより飛躍的発展を遂げた。BC3000古代メソポタミアの貨幣。銀のシュケル 1シュケルは8.3g
ローマのデナリウス硬貨。
貨幣の普遍的原理。ふたつ
普遍的交換性→もの、ことと交換可能
普遍的信頼性→仲介者として、異なる立場の者を協力させる。
帝国
帝国とは? 他の民族を支配していること、変更可能な境界と無限の欲
宗教
規範と価値観のシステムの総体。
超自然的な法に基づく。
二元論と一神教
悪の説明に重きを置くか、秩序の説明に重きを置くか
二元論といえばゾロアスター教。善:アフラ・マズダと、悪:アングラ・マイニュ
仏教
渇愛が苦しみの元となる
渇愛の火を消せば幸せになれる 「涅槃」とは消火の意味
第四部 科学革命
15章
1945/07/16 AM5:29:45 世界初の原子爆弾。
過去500年間で、人類は、お金を払って自分の力を高められることに気づいた。
近代科学は無理を認める。仏教やコーランは違う。過去の偉大な人物の悟りを学び、正しく解釈することで幸せになれる。
最初の麻酔(クロロホルム、モルヒネ)は19世紀。
史の克服が夢物語ではなくなってきている。
16章 拡大するパイ、資本主義
経済は「成長」する!!これがなにより重要
かつて、経済の成長は期待されていなかった。ゼロサムゲームであり、誰かが設けるとき、誰かが割を食うと考えられていた。
→信用に基づく融資はほぼなく、経済は成長しづらかった。
科学革命によって、「進歩」、生活は改善し、力は強くなることが徐々に分かってきた、→経済が成長することが経験的に理解された
資本主義では、稼ぐことが善とされた。いままでの宗教とは異なる。 「国富論」アダムスミス
ただし、利益を再生産にまわす、という条件つきで。
コロンブスもスペインの融資を受けた。スペインはこれで大成功!植民地で荒稼ぎ。
17世紀末、オランダの失脚。
イギリスがロンドン証券取引所を基盤とする経済で帝国主義のトップに躍り出た。
オランダは戦争。フランスはミシシッピバブルの崩壊で力を弱めた。
ミシシッピバブル→
ワニと沼地しかないミシシッピ(米)の開拓に乗り出す。前評判がよすぎて
ミシシッピ社の株がとんでもなく高騰。資本家たちはミシシッピ社に投資。かしこい誰かが、ミシシッピ開拓の実体と、株の価値の解離に気づく。一斉に売りの注文が殺到。フランス政府は国庫をはたいて、株を買い支えようとしたが失敗。資本家たちだけが売り逃げた。
資本家たちは国にすら影響するようになった。
イギリスは、イギリス東インド会社で、インドの植民地支配。
1840-42 アヘン戦争
イギリスの議員、閣僚は製薬会社の株を所有。30s後半に、中国がアヘンの禁止を宣言。議員らは国に圧力をかけた。
自由貿易の名のもとにイギリスは中国と戦争。大勝利。自由貿易を妨げないこと。香港の割譲を要求。(~1990)
ギリシア独立も資本主義の影響がある。 ギリシア独立債をロンドン証券取引所で発行することを持ちかけた。
金儲けをたくらむ、もしくはギリシア独立に賛同する資本家が独立債を購入。
ギリシアの戦況が芳しくないとき、イギリスの軍隊が参戦した。ギリシアは独立したが、莫大な独立債の返済に苦しめられた。
投資家たちは、エリザベス女王が必ず、我々の富を守ってくれることを知った。→戦争への投資はすすむ。
17章 産業の推進力
1700年ごろ 石炭をもやしてピストンを動かした。@炭鉱 非常に悪い効率だったが水をくみ上げていた。
1825 改良された蒸気機関により、炭鉱と港を結ぶ25km区間で初の蒸気機関車が開通
1830.09.15 リヴァプール=マンチェスター間で初の営利鉄道の開通
産業革命は第二次農業革命でもあった。
トラクター、化学肥料、殺虫剤、輸送手段、冷蔵庫→様々な面で生産性が上がった
資本主義とともにある消費主義も発達。
資本主義の成長のためには消費が不可欠。不要な消費も促進された。
現在、富裕層は「投資せよ!!」、それ以外は「消費せよ!」というスローガンが善とされる。
18章
時間、時刻の統一も産業革命の影響。
鉄道会社はそれぞれの街の時刻が異なることに悩んだ。リヴァプール、マンチェスター、グラスゴーの時刻をグリニッジ天文台のものと統一
さらに、ラジオの発達で時刻の統一される範囲は広がった。
個人とは、国民国家の作り上げたもの。それまで、人間は、家族や地域コミュニティで生きていた。
しかし、行政サービス(警察、裁判所etc...)の有効性を高めるために、個人の概念は広められた。
家族や地域のつながりが非常につよく、これらが有効に機能しにくかったために、弱めようとした。
家族に代わって、現代人は、国民・消費グループをよりどころにしている。 ある球団のファンとか
核による平和
1945-2014 大きな戦争は起きていない。核兵器の開発によって、それは集団自殺となったから。
戦争の代償は大きくなり、利益は減少した。
冨の変化が根底にある。かつての富は、土地や資源。今は知能や技術。戦争で容易に奪えるものではない
カリフォルニア。かつては金(ゴールドラッシュ)で栄えたが、今となってはシリコンバレーで働く人々の知能に価値がある。
19章
物質的豊かさはコミュニティの参加度低下によって相殺された?
心の空調システム
各人のある一定の設定温度に自動的に戻される。一時的な所得の増加、事故によるケガで上昇下降するものの、そのうち一定となる。
現代人は、ホルモンや生理作用による快感で、生化学的特性を満足させることに重きを置けば幸せになれると知っている。
「すばらしい新世界」オルダス・ヘックスリー 無害な薬物で幸福になれるSF 不穏で不快感を覚える新世界が描かれる
20章 超サピエンスの時代へ
知的設計。 生物工学・サイボーグ工学・非有機的生命工学
サピエンスはサピエンスの枠から外れようとしている。
欲望すらコントロールできるようになるかもしれない。
「何を望みたいのか?」という問いの答えを探すとき。