あらすじ
東京地裁の判決は、2人の被告の明暗を分けた。毎朝新聞記者の弓成亮太は無罪、元外務省高官付き事務官・三木昭子は有罪に。その直後、弓成は新聞社に退職届を出し、とある週刊誌には昭子の赤裸々な告白手記が掲載された。傷ついた弓成の妻・由里子はある決意をかためる。判決後、検察側はただちに控訴。「知る権利」を掲げて高裁で闘う弁護団の前に立ちふさがるのは、強大な国家権力。機密は誰のためのものなのか? それぞれの運命が激動の渦に巻き込まれる第3巻。
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Posted by ブクログ
これぞ山崎豊子の真骨頂。
難解な裁判内容ですら1日で読みきらせる筆力。
一審での無罪判決を勝ち取るも、控訴審での逆転有罪判決、上告棄却、絶たれた記者生命、堕ちていく弓成氏・・・
三木昭子の下劣極まりない手記は裁判の結果に等しいほど世論が弓成氏を裁いた。そして家族も・・・
「ママはまだ夏の真ん中だ」なんて慰めてくれる息子の優しさに落涙を辞さない。
安っぽい勧善懲悪ではなく、国に楯突くとはどういうことか、厳たる現実を前に様々な考えを巡らさざるを得ない。
Posted by ブクログ
沖縄返還での地権者への土地原状回復費に関する密約の外交文書漏えい事件を描いた小説。第三巻。
一審から最高裁までほとんど裁判で終始。その意味ではやや盛り上がりに欠けるかも。
Posted by ブクログ
いわゆる『外務省漏洩事件』、『西山事件』を題材にする本作。
・・・
第一巻・第二巻で、特ダネ記者弓成の、過剰気味の自信を実績で証明するかの仕事ぶり、外交官や政治家への食い込み、外務省事務官との情事、情報漏洩による逮捕、警察への尋問、そして起訴までの様子でした。
第三巻は、概ね裁判の様子にあてられます。そして主人公弓成の境遇が右肩下がりに落ちてゆきます。
結果的に一審は勝訴(無罪)ながら、三木は有罪とされ、情報源の秘匿をできないという記者としての誇りをもズタズタにされた弓成。会社でも疎まれはじめたことを察し、職を辞する。そして家庭に顔向けできないと実家の九州へ単身戻り、実父の会社へ入社。最悪やな。
その間、控訴審が進行し、控訴審では有罪。
弓成側の大野木弁護士、もう一方の被告の三木と弁護士の坂本。加えて裁判官の様子がドラマティックに描かれます。端的に言えば、今度の裁判官は保守側ということでした。
なお最高裁では控訴棄却ということで、弓成=悪者、の印象が確定。三木の手記が週刊誌に掲載され、あることないことが流布されることになります。
こうして失意の中、実家の仕事にも身が入らず、博打にうつつを抜かします。
自暴自棄になりつつある弓成の様子は、幾許か自業自得的に私は感じます。でも一層気の毒なのは奥様と子どもたちでしょう。このあたりは夫婦にしか分からないこともあろうかとは思いますが、胸が苦しくなります。
・・・
ということで第三巻。
裁判といえども、ポジションを取る(つまり裁判官の意見も相対的正しさ)ということが良く分かります。また、家庭をないがしろにする感がなかなかひどく、ショーワという過ぎし時代を感じました。
裁判の様子、ジャーナリズム、社内政治、家族とは何か、等々に関心のかる方にはお勧めできる作品であると思います。
Posted by ブクログ
弓成は果たして有能だったんだろうか。
敏腕記者であったが、途中変な理想に目覚め野党議員に密約の証拠となる文書を渡すも、野党担当の記者を介してやり取りしたため詰めが甘くニュースソースが明かされてしまう。
大変な苦労をかけた奥さんにきちんとした謝罪や労いの言葉もなく別居。
果ては亡くなった親の会社を継ぐも頑固さから合併の話を蹴り倒産に追い込んでしまう。
だが思うに、弓成に限らず、人間には核となる特性みたいなものがあり、それが周りの環境とうまく噛み合えば「有能」ということになるし、合わなければ「無能」ということになるんじゃなかろうか。
フィクションであれば最後に弓成の再起が描かれるのだろうが、どうなるのだろうか。気になる。