酒井健のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
聖なるものへの覚醒とはなにか。
エロチシズムとはなにか。
熱き情念に突き動かされながら、人間の思考のあり方を問い、その限界の彼方を指し示した人バタイユ。
ヘーゲルを頂点とする西欧文明における理性の体系に対し、彼は「非―知」「好運」を看板に掲げて果敢に戦いを挑みつづけた。
現代のヨーロッパはいまだ彼が投げかけた問いのなかにあるといえるだろう。
そこにバタイユの思想を問う意味があるのだ。
「死とエロチシズム」の思想家といわれて久しい彼の活動の全貌を新たな視点から明快に解き明かす、若い読者のための入門書。
[ 目次 ]
第1章 信仰と棄教(生涯と作品 ベル・エポックと父親 ほか)
第 -
Posted by ブクログ
ネタバレ難解と言われるバタイユについての解説本である。平易でわかりやすい。
バタイユの著書が難解なのは彼の視点で者をした見れない。見るのを拒んでいる我々側の問題である。
少なくても中期までの彼は評価どころか誤解されていた。文章が難解、書いていることが過激。これらは生い立ちや彼が見えていたものから考えれば素直なアウトプットであると言える。
バタイユとて唯我独尊でいたかった訳ではなく社会とつながるため、自分から見えていたものを素直に著しただけなのだと思う。むしろ中期、後期になると彼がそもそも信じていない、頭や理性に訴えるような著作を残している。
アニメのキャラにホシノ・ルリがいる。口癖のひとつが馬鹿ばっか -
-
Posted by ブクログ
眼球譚でバタイユの小説を読み、今度はバタイユその人の人物と思想についての本を繙く。入門…のわりに難しい、と言うのが正直な感想である。哲学や思想なんかは好きだけど、あまりにも知識がつまみ喰い過ぎて、わからない言葉が多かった…。哲学入門とかあったら読んだ方が良いかもしれない。バタイユの浮遊感が好きだ。元々、私自身が浮遊している性質だから、なんとも言えない浮遊感に親近感が。今まで、バタイユ=エロティシズムの印象しかなくて、何か変態なフランス人のおっさん(←失礼/笑)というくらいの認識だったが、それを改めるには十分だった。そして、どうでも良いけどバタイユ氏結構イケメンである。
次は、バタイユの書いたも -
Posted by ブクログ
バタイユの珠玉の一冊。エロティシズムの起源を生物学的に定義付け、その後にエロスと禁止、禁止と侵犯、そして宗教との関連について考察する。
日本では高群逸枝が似たような考察を先んじて行っているが、生物学から演繹して人間の情念を論じるということは近代において避けられてきた部分もある。今日では恋愛感情は自律神経の働きによって分析されているものが最も「科学的」と思われているのだろう。心理学によって実際の行動のパターンは分析されうるものの、それの社会的機能、基盤についての考察においてはこの『エロティシズム』を超える論述は未だお目にかからない。私の勉強不足であるかもしれないが……
情念論はデカルトあたりを発 -
Posted by ブクログ
_専門家_はけっしてエロティシズムのレヴェルにはいない。すべての問題のなかでエロティシズムは、最も神秘的で、最も一般的で、最もかけ離れた問題である。/最高の哲学的な問いはエロティシズムの頂点と一致する。/労働と比較すると侵犯は一つの遊びである。遊びの世界では哲学は解消する。/言葉だけが、限界で、もはや言葉が通用しなくなる至高の瞬間を明示するのである。だが、語る者は、最終的には自分の非力さを告白する。
エロティシズムとは、人間の意識のなかにあって、人間内部の存在を揺るがすもののことなのである。/タブー〔禁忌〕は冷静さと理性の世界を可能にするが、その大元では恐怖の震えなのだ。/女は男の欲望に対し -
Posted by ブクログ
現代フランスの特異な思想家バタイユを、とくにニーチェ、ヘーゲルと対比させつつ解説している。
バタイユは、理性的なものを引き裂いて非理性的なものが現出する瞬間を重視する。彼の思想は、そうした瞬間に生じる至高的な体験に基づいている。ただしそうした至高的な瞬間は散発的であり、現出すると同時に解消される運命にある。
この点で、バタイユは、ニーチェの「力への意志」を批判する。「力への意志」は、つねにみずからを高めることをめざす「力」(puissance)だ。バタイユが主張する「力」(force)は、それが現出するや否やただちに異議申し立てを受けなければならないような、「弱い」力である。そうした力の現