酒井健のレビュー一覧

  • バタイユ入門

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    ネタバレ

    皆さん、推し作家は居ますか?
    では、推し翻訳者は?

    私は酒井さんのバタイユ翻訳本がなにかと好きです。
    なので訳者あとがきも毎回楽しみにしています。

    本作はその推しが書いてくれたバタイユ入門!

    酒井さんとバタイユ哲学のドラマチックな出会いから始まり、サクッとバタイユの過去経歴・そこから考えられる思想・そして人生の流れと共に変遷していく表現とその作品たち……と順に説明してもらえます。

    とても良かった。
    とても嬉しい。
    本人の著作じゃわからない部分(バタイユと父親の関係とか)がわかるのとても助かる。

    哲学者ってどういう生活してどんな活動してるのか、いまいち本読んでるだけだとわかってなかった

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    2025年12月06日
  • シュルレアリスム 終わりなき革命

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    現代において「シュール」という語が,不条理や意味不明なものに対してよく用いられる。しかしそれは元の意味のほんの一部に触れているに過ぎない。

    シュルレアリスムは第一次世界大戦を終えた1920年代,フランスで生まれた文化運動である。簡単に流れを言えば,偏った理性主義への批判から始まり,特に戦争体験より超現実を取得して,フロイトの精神分析を取り込み,マルクスの革命思想をも飲み込んで政治にまで拡張した。

    本書では,主に「シュルレアリスム宣言」の著書であるブルトンに焦点を当てて解説している。また周辺においては,バタイユやアラゴンなど,フランスでの潮流がメインである。

    難しいようにも思えるが,文学や

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    2021年06月30日
  • バタイユ入門

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    西欧を西欧たらしめている思想の根を撃つ思想家バタイユ。マルクス、アウシュビッツなどその論は冴え渡っていた。

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    2021年04月08日
  • 「魂」の思想史 ──近代の異端者とともに

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    近代合理主義からこぼれおちる「闇」=「魂」の存在。
    自明に思える現実や歴史を解体する視点。

    ピカソのアヴィニヨンの女性は単なるキュビズム表現ではなかった。
    ヘーゲルの弁証法に絡み取られない、生のあり方に固執したキルケゴール。
    『古事記』すら新しい記述と喝破したハーンの感性。
    ブランショ「誰かが、絶望に限定されて文章を書き始める。しかし、絶望は何ものも限定できないのだ」。

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    2021年03月29日
  • ロマネスクとは何か ──石とぶどうの精神史

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    円環する、自然の荒ぶる力と交感するキリスト教の歴史。人間、そして宗教とは本来どういうものなのか示唆に富んでいる。

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    2021年03月11日
  • エロティシズム

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    言葉で表すことの難しいエロティシズムを議論の的とした意欲作。

    エロティシズムという感情は禁止の侵犯という宗教や衝動的な暴力と同じ精神的基盤に立つという視点から至極主観的な事象を語っていく。

    この本と他の本との決定的な違いは「議論が完結していない」ということ。
    訳者あとがきでも述べられている通り、多くの問題提起と議論の余地を残したまま議論が進んでいく。

    よって、一度読んで終わりといった本ではなく、この本を契機に様々な本を読んでまたこの本に戻ってくるということを繰り替えすことで読者に考えることの楽しさを知らせてくれる。

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    2013年04月23日
  • バタイユ入門

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    ネタバレ

    五つ星の評価は、
     著者の酒井氏への綿密な研究成果に対してです。バタイユ自体には、たいした興味はありません。こわいものみたさの好奇心だけです。バタイユの思想や評論は面白いものがあると思いますが、プラス・マイナス=ゼロと言ったカンジでしょうか。
     この書籍の端々に、海外で、マイナーな思想家を研究することの大変さがうかがえます。

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    2012年05月06日
  • シュルレアリスム 終わりなき革命

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    美術の方では様々な流れを作りながらいまも確実に息づいているシュルレアリスムだが、この運動のリーダーだったアンドレ・ブルトンの名聞くくことがめっきり少なくなってしまったのは、詩文学の不人気とポスト・モダン思想の奔流に負けてしまったからだろうか。
    本書はバタイユ研究者が、そのブルトンに敬意をこめて語りつくした現代思想史の一断面である。ブルトンの発想、行動力、影響力は稀有なものであり、フロイトとマルクスを初めて目に見えるモノと言葉に表現した。唯一音楽に価値をおいていなかったことが残念だがそのユニークな解釈と方法は意外なところまで広がっている。

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    2011年05月12日
  • エロティシズム

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    読む前から一度読んですんなり理解できるとは思わなかったけど、やっぱり読んでみて明確に理解することはできなかった。『同性愛の経済人類学』という論文を読んで、そこにエロティシズムと労働の関係について書かれていたので、おかげで少しは入って行きやすかったかも。

    先に論じたことを後でも繰り返し述べられているような形になっているので、そのあたりは理解しやすかった。
    あくまでこれは男性視点のエロティシズムだな、というのは感じた。女性のことははなから無視されているような。そこになんとなく違和感があった。確かにエロティシズムという問題を論じるときに、男性主体になるのは仕方ないのかもしれないけど。これが書かれた

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    2010年07月05日
  • エロティシズム

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    ネアンデルタール人に道具、すなわち労働が、埋葬すなわち死が観念として発生し、クロマニヨン人により洞窟壁画などの宗教観念が認められるものが現された。
    根源的に不連続であるインディビジュアルな人間の存在。聖なるもの、エロティシズム、死への経験、供犠などはそこに連続性、無限定性を介入させる。その暴力、不安、そしてそれを緩和させようとする笑い。
    存在を外に投げ出す経験。
    エロティシズムの本質は汚すことだという意味において、美は第一に重要なのだ。

    /禁止に対する侵犯がエロティシズムである。
    禁止と侵犯は相補的関係。/


    糞便、腐敗、生活動
    「私たちの嘔吐感とは空無感なのだ。吐き気で気を失いそうになる

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    2010年04月04日
  • エロティシズム

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    「序論」でまず、この本の目指すところがはっきりとわかる。それから、とても素晴らしい翻訳(酒井健)だと思う。こちらから入って、澁澤訳の同書を読んだほうがいいかな。「エロティシズムとは、死におけるまで生を称えることだと言える」。

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    2011年07月19日
  • 呪われた部分 ──全般経済学試論・蕩尽

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    久しぶりにバタイユの著書を読んだけどやっぱ理解するのに手間取る手間取る。
    バタイユもニーチェと同様、掴み損ねると火傷しそうな思想家。二項対立の図式から抜け出でる手段を常に模索してる感じ。
    本著の主題は経済学における既存の捉え方にコペルニクス的転回を加え、全般経済学という新たな地平を提示すること。
    生産的生活のなかに余剰を通し現れる蕩尽という非生産的消費活動。
    現代の消費主義とも深く共鳴するバタイユの鋭い視点にうなづく点が多い。
    初期イスラム、プロテスタンティズムあたりの分析は複雑すぎてあんま覚えてないけど、面白かった記憶はある。
    人は自分の欲望を大っぴらに語りたくないが、根本的な部分で人は自分

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    2025年02月01日
  • エロティシズム

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    20世紀フランスの作家、思想家であるジョルジュ・バタイユ(1897-1962)の論考、1957年。エロティシズムの究明を通して人間存在の根源を見出そうとする。一般にバタイユの関心は、人間が理性の裂け目において覗かせる非合理性(エロティシズム、死、暴力、狂気、悪、瀆聖、神秘主義など)に向けられているようにみえる。これは、青年期に第一次大戦を経験し、人間を理性的存在として規定する近代の合理主義的人間観の破綻を目の当たりにした世代に共通する傾向であるかもしれない。思想的にはサド、ニーチェ、フロイト、シェストフ、ヘーゲル(コジェーヴ)らの影響を受けているとされる。また、一時的にシュルレアリストや共産主

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    2024年09月18日
  • エロティシズム

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    禁忌に対する侵犯をエロティシズムと定義する事ができ、それは、人間特有である。禁忌とは何か。宗教のような、後天的な規定。しかしまた、それは先天的なものをも含む。先天的なものがあり、かつ、エロティシズムを人間特有とする。さすれば、人間とは、先天的な本能にして、他の霊長類とも差違的な存在なのか。答えは否。だとすれば、次の二択になる。つまり、人間以外の霊長類にもエロティシズムが存在するか、先天的な禁忌というものは存在しないのか。

    そもそも禁忌とは何か。社会を統制し、利益を傾斜するために守らせるべき約束事。また、人民同士が住みやすい社会を構成するためのルール。宗教上のタブーとは、絶対的存在に対する秩序

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    2014年05月31日
  • バタイユ入門

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    職場で出会った哲学専攻の人から教えてもらった入門書。序文が面白い。人文科学系諸科学の学史のなかでも、現代哲学史というのは畢竟現代思想史であり、観念的な次元でものの是非をする人びとの歴史であるために、ディスタンクシオンの遂行される様を観察するのにとくに適した領域なのではないか、と。

    ──それにしても。バタイユが人間存在の本質として捉えたものについて想像し共感することはある程度は可能ではある。

    けれども──これはニーチェやハイデガーにしてもそうだけど──「ブラックボックス」の内側を分析するというよりは想像し、種々の連想をもってそこに意識を同化していこうとする行為に、個人のトラウマ治療以上の意味

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    2014年05月03日
  • エロティシズム

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    「エロティシズムとは、死におけるまで生を称えることだと言える。」
    ということを説明している本です。
    エロティシズムというどちらかと言えば人間の暗部について考えぬかれた本です。バタイユさんが60歳で出版されてます。書き上がるまでにおそらく二十年以上かかっているんじゃないでしょうか?

    エロティシズムは死や暴力と関係が深いようです。しかも理性から逃れ去る性質があります。ですからエロティシズムそのものを意識化して言語化するのは不可能みたいです。そういうところをしつこく粘りに粘って書こうとされています。

    考えてみれば性衝動は大脳よりも下位の脳(視床下部とか?)が関与しているところのようですから意識化

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    2013年09月15日
  • バタイユ入門

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    ゆらゆらと揺れているバタイユの思想形態やその思想そのものが、日本人の自然観に合ってるように思える。
    脱西洋、しかし西洋的=二項対立という頭になっているため、そういう視点とは違うようだ、少々混乱。
    感動は主体から生まれる。確かに。

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    2013年07月27日
  • シュルレアリスム 終わりなき革命

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    近代国家への闘い。西欧の若き芸術家?たちの悪戦苦闘が興味深くたどっていける。社会の変革と芸術作品へのこだわりという永遠の課題に挑んだ人々だったのだろうか。彼らの理論は弱いところも多いが、その作品の多くが、今の私をこんなにも惹きつけるのは何故だろうか。

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    2011年11月26日
  • エロティシズム

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    数年前に読んだ時は、[聖なるエロティシズム]=神の追求、及び 神への愛との一体化 [芸術様式のエロティシズムと美の境界] の視点で、さらさらと読み済ませていたが…
    その時、私はクンデラを知らなかったのだろうか…。存在の重さ軽さ、連続性と不連続性、生の彼方、死からの出発…

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    2011年08月09日
  • シュルレアリスム 終わりなき革命

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     ジョルジュ・バタイユの研究者として知られる著者による、おそらくは国立新美術館における大規模な「シュルレアリスム展」に合わせて刊行されたこの20世紀を代表すると言ってよい芸術運動の紹介書。シュルレアリスムが生じてくる背景をなす、第一次世界大戦の経験から説き起こして、1924年のシュルレアリスムの誕生からその基本的な芸術変革の方向性を取り出すとともに、さらにはその運動の政治との関わりについても見通した好著。所与の現実を乗り越えるところに、新たな唯物論の可能性を見て取ろうとする第二宣言のテーゼや、ベンヤミンのシュルレアリスム論が検討されている点も興味深いが、後者の捉え方がやや表面的なのが惜しまれる

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    2011年03月22日