野口雅弘のレビュー一覧

  • マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家

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    ウェーバー没後100年に合わせて刊行された中公新書。ウェーバーの人生や学説を順に追っていくスタイルではなく、関連する学説・思想や事項を縦横無尽に挟むスタイルになっている。登場するのは、たとえば、ロールズ、カフカ、丸山眞男。忖度、公文書公開、自民党総裁選、など。「天職」や「鉄の檻」といった有名な概念についての著者の見解も、説得的。

    結果として、入門書としてはそこそこハードルが高いようにも思われたが、ウェーバーの膨大な著作が今なお読まれるに値する古典であることを、身をもって示した1冊。

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    2020年06月07日
  • マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家

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    『プロ倫』の著者であって官僚制についての定義などをしている社会学者マックスウェーバー、つまり著作があって著者がいるという程度の認識であった私のイメージを転換させ、著者である人間マックスウェーバーが様々な家庭内不和などを経験する中で『プロ倫』などの著作を生み出していったのだという、いってみれば当たり前のことを知らしめてくれた。ウェーバーの論だけでなく、様々な思想家などとの比較などもできるように組み立てられていている。ウェーバーとは対抗関係にある(ことを初めて知った)ロールズやアレントのことなどである。ウェーバーがドイツナショナリズムに共鳴的であることもしらなかったし、ドイツ革命の混乱に対するウェ

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    2020年06月03日
  • 仕事としての学問 仕事としての政治

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    ネタバレ

    「指導者による体験の伝達を望む学生」に対して「教師による事実の伝達を通した思考こそが学生の仕事である」という説教は、同時に大学と教師の腐敗にも一石を投じており、新自由主義による大学の競争主義・暗記型の教育・人文科学軽視などの教育問題が見られる現代にも示唆的であった。

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    2020年04月27日
  • 官僚制批判の論理と心理 デモクラシーの友と敵

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    名前からして丸山真男の『超国家主義の論理と心理』をもじっているのは明らかであり、内容も大変な良書だと思う。

    近代官僚制に対する批判的言説は、その制度が確立されて以来一貫してして存在する普遍的なものであることを政治思想史的に確認するところ始まり、昨今、なされている官僚制批判=脱官僚に孕まれる問題を批判的に検討していくという内容。
    著者の危機意識は、かなりクリアなもので、昨今為される政治/行政不信に由来する脱官僚制の批判論理は、台頭している新自由主義的な言説に回収されてしまう恐れがある(行政のやることに不信があるのなら、市場に任せた方が安心だよね的な誘惑)し、カリスマ的な政治家を招聘してしまう恐

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    2012年09月18日
  • 官僚制批判の論理と心理 デモクラシーの友と敵

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    ネタバレ

    マックス・ウェーバーの官僚制論を軸に現代の官僚制批判の問題に迫る良書。結語において議論の内容がテーゼの形で要約されているので、示しておこう。

    【テーゼ1】官僚制に対する批判的な情念は普遍的である。(日本における1990年代以降の官僚批判がもっともわかりやすい例示だが、最近になってはじまったことではなく、ロマン主義にルーツをもつ官僚制批判の情念は根深い。)

    【テーゼ2】官僚制はデモクラシーの条件でもある。(官僚制はその画一主義がデモクラシーを窒息させる面があると同時に、ユニバーサルな行政サービスを提供する上で不可欠でもある。)

    【テーゼ3】正当性への問いは新自由主義によって絡め取られやすい

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    2012年02月07日
  • 仕事としての学問 仕事としての政治

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    政治家の宿命や運命、学者の使命等、現実を冷徹かつ正確に把握できたからこその、説得力溢れるウェーバーの2つの講演の書籍。

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    2025年11月03日
  • 官僚制批判の論理と心理 デモクラシーの友と敵

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    官僚制は民主主義の敵のように扱われがちだが、官僚制のもたらす画一的な支配は民主主義の求める平等の理念に資する。官僚制は民主主義の求めに応じて巨大化していった。
    しかし、官僚制には批判がつきまとう。ハーバーマスは官僚制の危機として、「合理性の危機」と「正当化の危機」を指摘する。合理性の危機とは、行政の経済への介入が深まれば深まるほど首尾一貫した態度が取れなくなること。正当化の危機とは、後期資本主義において国家の介入すべきこと(責任を負うべきこと)が増えすぎて常に政府は「無策」と批判されて大衆の忠誠心が得られなくなること。
    このような官僚制の危機に応答する形で、新自由主義は現れた。政府の市場への介

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    2025年03月27日
  • 支配について Ⅰ 官僚制・家産制・封建制

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     学生だった云十年前、政治学や社会学の講義では、ウェーバーの『プロ倫』は必読文献、『支配の社会学』は大体参考文献に挙げられていた。当時『プロ倫』はなるほどと思う程度には読んだものの、『支配の社会学』は、いかにものドイツ的な固い文章が読みにくかったし、叙述されている事項について基礎知識にそもそも乏しかったため、官僚制とカリスマの箇所をつまみ食い的に読みはしたものの、途中で挫折してしまった。
     今回、文庫版の新訳が出たということで、再チャレンジ。

     はじめに、「支配」の定義その他の概論的事項について叙述。続いて、「官僚制」「家産制」「封建制」の議論に。
     「官僚制」は現代にまで続いている仕組みで

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    2024年02月03日
  • マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家

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    頻繁に目にする名前ではあるけれど、何をした人なのか、いつの時代の人なのか、わかりませんでした。この本では、彼の多分野にわたる活動がまとめてあり、人物像を掴むにはよいと思います。

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    2022年08月13日
  • マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家

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    ヴェーバーの思想と生涯を、主に宗教社会学と政治理論に重点を置いて紹介している本です。

    ヴェーバーの宗教に対する態度や、彼の政治的心情の根幹に存在していたナショナリズム、官僚制とカリスマにまつわる問題の指摘など、ヴェーバーの思想のなかから重要な論点をとりだしてわかりやすく解説しながら、それらの論点が現代の議論のなかでどのように受け継がれているのか、あるいは批判されているのかということにも触れられています。さらに終章では、大塚久雄による近代主義的な立場からのヴェーバー受容と、山之内靖に代表されるニーチェ的な反近代主義的解釈など、日本のヴェーバー研究の経緯が簡潔にたどられており、現代においてヴェー

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    2021年06月14日
  • マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家

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    本書は、ドイツの法学者・経済学者・社会学者のマックス・ウェーバーの「哲学的・政治的プロフィール」を描くことを意図しており、マックス・ウェーバーの生きた時代、重要著作、基礎概念などに言及しつつ、基本的に年代順にウェーバーの生涯を解説している。日本におけるウェーバー受容についても触れている。
    本書は、マックス・ウェーバーの生涯がどのようなものであったのか、また、主要著作やウェーバーの思想のエッセンスがよくまとまっており、ウェーバーについて理解するための入門書として優れていると感じた。また、今、ここの自分たちの社会を理解するためにも違う時代、場所の社会との比較が重要であるということや、その上でウェー

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    2021年05月09日
  • 仕事としての学問 仕事としての政治

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    二つの講演1917年「職業としての学問」
    1919年「職業として政治」を邦題変更新訳版。
    支配三類は合法的支配、伝統型支配、カリスマ的支配。
    10年後再び会おうと締めくくりも1920年没
    ドイツは第一次世界大戦敗北で多額の賠償金で苦しみ1929年10月世界大恐慌後扇動的演説と暴力装置を用いた
    カリスマ型極右ナチス党総裁ヒトラーを1933年首相誕生させることを選んでしまう。どの時代もリーダー選びは難しい





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    2021年03月19日
  • マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家

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    とてもわかりやすく時代の流れとともにウェーバーがどのように在ったのか、という内容。
    丸山眞男とかでもう少し詳しく読む必要ありそう。

    ちょうどカフカの本も並行して読んでいたので、時代背景からの思想の移行についてもなんとなる察せられるところもあったり。

    ティモシー・スナイダーも併せて読み解いていく必要ありそう

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    2021年03月17日
  • マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家

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    テクスト、概念、生き様ではなく、各地での受容、思想的関連に重きを置いた記述。
    ヴェーバーを読むということは、極端を排するということか。今もう一度、テクストを読みたくなった。

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    2020年12月10日
  • マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家

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    思想家マックス・ウェーバーの生涯を追いながら彼の思想に迫った本。終章には日本におけるマックス・ウェーバー研究の内容にも触れている。
    正直、自分の実力不足できちんと読み込めていない部分が多かったが、近代についての議論としては特に現代社会を考えるうえで大いに参考になる内容が多くの箇所で読み取れた。もっと多くの知識をつけて再度挑戦したい。

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    2020年10月20日
  • マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家

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    マックス・ウェーバーを扱った本。

    ウェーバーは日本で社会学を学ぶ上で避けて通れない人。私は大学は社会学部だったが、中退したのでウェーバーの本をちゃんと読んでない。有名な「プロ倫」も。なので、入門書としてこの本を手に取った。

    この本ではウェーバーの生まれや育ちから入っているが、私にはそれが理解しやすかった。いきなり理論から入るより、どんな人物がその理論を唱えているか?の方に私は興味があるので。

    なるほど、「ヨーロッパ近代の特殊性」をプロテスタンティズムに求め、神が死んだ(魔術が解けた)後でも、その行為態度(エートス)が資本主義を発展させた、ってことか。明治以降に近代化を余儀なくされた日本で

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    2020年10月14日
  • マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家

    購入済み

    簡潔さがいいです。

    個別のものを読もうと思えば、好きな人は読み始めるかもしれないが、本書は、簡潔に要約・時代背景も書いてあって、素早くエッセンスを取り込めるところがいい。いつからできるかわからないが、インテリぶった同僚と、飲み屋で語るのもいい。

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    2020年07月24日
  • マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家

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    高校生の時、『職業としての政治』というタイトルに馴染めなかった。実際、中身もタイトルに合ったものではなかった。馴染めなかったわけがこの本を読んで分かった。著者は「仕事としての政治」と書いている。これなら分かる。もやもやが解けた。
    新書ながら内容は濃い。日本のウェーバー受容の仕方、ドイツでの理解のされ方との違いなど多くの論点が含まれている。

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    2020年06月22日
  • マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家

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    没後100年の記念出版だという。前提知識などほとんどない。名前は知っている。社会の授業で習ったはずだ。「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を略して「プロ倫」と呼ぶことなど勿論知らない。主専攻が法学であることも初めて知った。展覧会への公的支援は手続きが間違ってなければよいのか、中身もみるのか。形式合理主義か、実質合理主義か。合理性にも複数の絡み合いがあるという考え方。愛知トリエンナーレの問題を指しているのではあるまい。「一人称で語れない政治理論は非政治的である」キャスターに中立を求める報道に意味はない。平和主義は非現実的か。原子力発電は現実的か。現実的解が信条的解を排除すべきではない。

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    2020年06月16日
  • マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家

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    「ヨーロッパ近代」と格闘したマックス・ウェーバー(1864-1920)について、その生涯と研究、政治への関わりなどをコンパクトにまとめた好著。とくに日本への影響については、独自の1章「マックス・ウェーバーの日本」(「マックス・ウェーバーと日本」ではなくて「の日本」)を立てて論じられており、面白かった。1931年にクルト・ジンガーが来日し、大塚久雄もジンガーの講義に接してウェーバーのテクストに本格的に取り組んだと書かれてあったが、同時に下村治も聞いていて彼はケインズの『貨幣論』やジョーン・ロビンソンの『不完全競争の経済学』に興味を持ったそうだ。こうした対比も興味を惹いた。

    また「あとがき」でも

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    2020年06月14日