野口雅弘のレビュー一覧
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『プロ倫』の著者であって官僚制についての定義などをしている社会学者マックスウェーバー、つまり著作があって著者がいるという程度の認識であった私のイメージを転換させ、著者である人間マックスウェーバーが様々な家庭内不和などを経験する中で『プロ倫』などの著作を生み出していったのだという、いってみれば当たり前のことを知らしめてくれた。ウェーバーの論だけでなく、様々な思想家などとの比較などもできるように組み立てられていている。ウェーバーとは対抗関係にある(ことを初めて知った)ロールズやアレントのことなどである。ウェーバーがドイツナショナリズムに共鳴的であることもしらなかったし、ドイツ革命の混乱に対するウェ
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名前からして丸山真男の『超国家主義の論理と心理』をもじっているのは明らかであり、内容も大変な良書だと思う。
近代官僚制に対する批判的言説は、その制度が確立されて以来一貫してして存在する普遍的なものであることを政治思想史的に確認するところ始まり、昨今、なされている官僚制批判=脱官僚に孕まれる問題を批判的に検討していくという内容。
著者の危機意識は、かなりクリアなもので、昨今為される政治/行政不信に由来する脱官僚制の批判論理は、台頭している新自由主義的な言説に回収されてしまう恐れがある(行政のやることに不信があるのなら、市場に任せた方が安心だよね的な誘惑)し、カリスマ的な政治家を招聘してしまう恐 -
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ネタバレマックス・ウェーバーの官僚制論を軸に現代の官僚制批判の問題に迫る良書。結語において議論の内容がテーゼの形で要約されているので、示しておこう。
【テーゼ1】官僚制に対する批判的な情念は普遍的である。(日本における1990年代以降の官僚批判がもっともわかりやすい例示だが、最近になってはじまったことではなく、ロマン主義にルーツをもつ官僚制批判の情念は根深い。)
【テーゼ2】官僚制はデモクラシーの条件でもある。(官僚制はその画一主義がデモクラシーを窒息させる面があると同時に、ユニバーサルな行政サービスを提供する上で不可欠でもある。)
【テーゼ3】正当性への問いは新自由主義によって絡め取られやすい -
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官僚制は民主主義の敵のように扱われがちだが、官僚制のもたらす画一的な支配は民主主義の求める平等の理念に資する。官僚制は民主主義の求めに応じて巨大化していった。
しかし、官僚制には批判がつきまとう。ハーバーマスは官僚制の危機として、「合理性の危機」と「正当化の危機」を指摘する。合理性の危機とは、行政の経済への介入が深まれば深まるほど首尾一貫した態度が取れなくなること。正当化の危機とは、後期資本主義において国家の介入すべきこと(責任を負うべきこと)が増えすぎて常に政府は「無策」と批判されて大衆の忠誠心が得られなくなること。
このような官僚制の危機に応答する形で、新自由主義は現れた。政府の市場への介 -
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学生だった云十年前、政治学や社会学の講義では、ウェーバーの『プロ倫』は必読文献、『支配の社会学』は大体参考文献に挙げられていた。当時『プロ倫』はなるほどと思う程度には読んだものの、『支配の社会学』は、いかにものドイツ的な固い文章が読みにくかったし、叙述されている事項について基礎知識にそもそも乏しかったため、官僚制とカリスマの箇所をつまみ食い的に読みはしたものの、途中で挫折してしまった。
今回、文庫版の新訳が出たということで、再チャレンジ。
はじめに、「支配」の定義その他の概論的事項について叙述。続いて、「官僚制」「家産制」「封建制」の議論に。
「官僚制」は現代にまで続いている仕組みで -
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ヴェーバーの思想と生涯を、主に宗教社会学と政治理論に重点を置いて紹介している本です。
ヴェーバーの宗教に対する態度や、彼の政治的心情の根幹に存在していたナショナリズム、官僚制とカリスマにまつわる問題の指摘など、ヴェーバーの思想のなかから重要な論点をとりだしてわかりやすく解説しながら、それらの論点が現代の議論のなかでどのように受け継がれているのか、あるいは批判されているのかということにも触れられています。さらに終章では、大塚久雄による近代主義的な立場からのヴェーバー受容と、山之内靖に代表されるニーチェ的な反近代主義的解釈など、日本のヴェーバー研究の経緯が簡潔にたどられており、現代においてヴェー -
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本書は、ドイツの法学者・経済学者・社会学者のマックス・ウェーバーの「哲学的・政治的プロフィール」を描くことを意図しており、マックス・ウェーバーの生きた時代、重要著作、基礎概念などに言及しつつ、基本的に年代順にウェーバーの生涯を解説している。日本におけるウェーバー受容についても触れている。
本書は、マックス・ウェーバーの生涯がどのようなものであったのか、また、主要著作やウェーバーの思想のエッセンスがよくまとまっており、ウェーバーについて理解するための入門書として優れていると感じた。また、今、ここの自分たちの社会を理解するためにも違う時代、場所の社会との比較が重要であるということや、その上でウェー -
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マックス・ウェーバーを扱った本。
ウェーバーは日本で社会学を学ぶ上で避けて通れない人。私は大学は社会学部だったが、中退したのでウェーバーの本をちゃんと読んでない。有名な「プロ倫」も。なので、入門書としてこの本を手に取った。
この本ではウェーバーの生まれや育ちから入っているが、私にはそれが理解しやすかった。いきなり理論から入るより、どんな人物がその理論を唱えているか?の方に私は興味があるので。
なるほど、「ヨーロッパ近代の特殊性」をプロテスタンティズムに求め、神が死んだ(魔術が解けた)後でも、その行為態度(エートス)が資本主義を発展させた、ってことか。明治以降に近代化を余儀なくされた日本で -
購入済み
簡潔さがいいです。
個別のものを読もうと思えば、好きな人は読み始めるかもしれないが、本書は、簡潔に要約・時代背景も書いてあって、素早くエッセンスを取り込めるところがいい。いつからできるかわからないが、インテリぶった同僚と、飲み屋で語るのもいい。
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没後100年の記念出版だという。前提知識などほとんどない。名前は知っている。社会の授業で習ったはずだ。「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を略して「プロ倫」と呼ぶことなど勿論知らない。主専攻が法学であることも初めて知った。展覧会への公的支援は手続きが間違ってなければよいのか、中身もみるのか。形式合理主義か、実質合理主義か。合理性にも複数の絡み合いがあるという考え方。愛知トリエンナーレの問題を指しているのではあるまい。「一人称で語れない政治理論は非政治的である」キャスターに中立を求める報道に意味はない。平和主義は非現実的か。原子力発電は現実的か。現実的解が信条的解を排除すべきではない。
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Posted by ブクログ
「ヨーロッパ近代」と格闘したマックス・ウェーバー(1864-1920)について、その生涯と研究、政治への関わりなどをコンパクトにまとめた好著。とくに日本への影響については、独自の1章「マックス・ウェーバーの日本」(「マックス・ウェーバーと日本」ではなくて「の日本」)を立てて論じられており、面白かった。1931年にクルト・ジンガーが来日し、大塚久雄もジンガーの講義に接してウェーバーのテクストに本格的に取り組んだと書かれてあったが、同時に下村治も聞いていて彼はケインズの『貨幣論』やジョーン・ロビンソンの『不完全競争の経済学』に興味を持ったそうだ。こうした対比も興味を惹いた。
また「あとがき」でも