【感想・ネタバレ】マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家のレビュー

あらすじ

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』『仕事としての政治』などで知られるマックス・ウェーバー(一八六四〜一九二〇)。合理性や官僚制というキーワードを元に、資本主義の発展や近代社会の特質を明らかにした。彼は政治学、経済学、社会学にとどまらず活躍し、幅広い学問分野に多大な影響を及ぼした。本書は、56年の生涯を辿りつつ、その思想を解説する。日本の知識人に与えたインパクトについても論じた入門書。

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Posted by ブクログ

ウェーバー没後100年に合わせて刊行された中公新書。ウェーバーの人生や学説を順に追っていくスタイルではなく、関連する学説・思想や事項を縦横無尽に挟むスタイルになっている。登場するのは、たとえば、ロールズ、カフカ、丸山眞男。忖度、公文書公開、自民党総裁選、など。「天職」や「鉄の檻」といった有名な概念についての著者の見解も、説得的。

結果として、入門書としてはそこそこハードルが高いようにも思われたが、ウェーバーの膨大な著作が今なお読まれるに値する古典であることを、身をもって示した1冊。

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2020年06月07日

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『プロ倫』の著者であって官僚制についての定義などをしている社会学者マックスウェーバー、つまり著作があって著者がいるという程度の認識であった私のイメージを転換させ、著者である人間マックスウェーバーが様々な家庭内不和などを経験する中で『プロ倫』などの著作を生み出していったのだという、いってみれば当たり前のことを知らしめてくれた。ウェーバーの論だけでなく、様々な思想家などとの比較などもできるように組み立てられていている。ウェーバーとは対抗関係にある(ことを初めて知った)ロールズやアレントのことなどである。ウェーバーがドイツナショナリズムに共鳴的であることもしらなかったし、ドイツ革命の混乱に対するウェーバーの立場など興味深い話が多かった。たとえば、クルトアイスナーの公文書公開に対する批判!これなどは勝手なウェーバーイメージからしたら意外であったし、比例代表制への批判なども新鮮だった。また、ウェーバーは日本では大塚久雄丸山真男などの影響で世界で比較してもよく読まれてきたことも知った。

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2020年06月03日

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頻繁に目にする名前ではあるけれど、何をした人なのか、いつの時代の人なのか、わかりませんでした。この本では、彼の多分野にわたる活動がまとめてあり、人物像を掴むにはよいと思います。

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2022年08月13日

Posted by ブクログ

ヴェーバーの思想と生涯を、主に宗教社会学と政治理論に重点を置いて紹介している本です。

ヴェーバーの宗教に対する態度や、彼の政治的心情の根幹に存在していたナショナリズム、官僚制とカリスマにまつわる問題の指摘など、ヴェーバーの思想のなかから重要な論点をとりだしてわかりやすく解説しながら、それらの論点が現代の議論のなかでどのように受け継がれているのか、あるいは批判されているのかということにも触れられています。さらに終章では、大塚久雄による近代主義的な立場からのヴェーバー受容と、山之内靖に代表されるニーチェ的な反近代主義的解釈など、日本のヴェーバー研究の経緯が簡潔にたどられており、現代においてヴェーバーを読むことが、われわれにとってどのような意味をもっているのかという問題への目配りがなされています。

著者は「はじめに」で、「かなり前に彼の本を読んだことはあるが、長らく忘れていたという人や、最近どこかで彼の名前をはじめて耳にして、少し気になっているという人が、本書が主として想定する読者である」と述べられています。わたくし自身は前者に近い読者の一人でしたが、ヴェーバーについて学ぼうとしたものの彼の多岐にわたる思索の焦点がどこにあるのかわかりにくいという思いをいだいていたので、本書によって一つの参照軸を教えられたように感じています。また後者の読者にとっても、ヴェーバーの現代的意義と問題性に手厚い解説がなされている本書は有益なのではないかと思います。

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2021年06月14日

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本書は、ドイツの法学者・経済学者・社会学者のマックス・ウェーバーの「哲学的・政治的プロフィール」を描くことを意図しており、マックス・ウェーバーの生きた時代、重要著作、基礎概念などに言及しつつ、基本的に年代順にウェーバーの生涯を解説している。日本におけるウェーバー受容についても触れている。
本書は、マックス・ウェーバーの生涯がどのようなものであったのか、また、主要著作やウェーバーの思想のエッセンスがよくまとまっており、ウェーバーについて理解するための入門書として優れていると感じた。また、今、ここの自分たちの社会を理解するためにも違う時代、場所の社会との比較が重要であるということや、その上でウェーバーが描こうとした「ヨーロッパ近代」は比較のための参照軸として今でも有効でありうるということなどを感じ、現代の日本社会を考える上での示唆も得ることができた。

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2021年05月09日

Posted by ブクログ

とてもわかりやすく時代の流れとともにウェーバーがどのように在ったのか、という内容。
丸山眞男とかでもう少し詳しく読む必要ありそう。

ちょうどカフカの本も並行して読んでいたので、時代背景からの思想の移行についてもなんとなる察せられるところもあったり。

ティモシー・スナイダーも併せて読み解いていく必要ありそう

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2021年03月17日

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テクスト、概念、生き様ではなく、各地での受容、思想的関連に重きを置いた記述。
ヴェーバーを読むということは、極端を排するということか。今もう一度、テクストを読みたくなった。

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2020年12月10日

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思想家マックス・ウェーバーの生涯を追いながら彼の思想に迫った本。終章には日本におけるマックス・ウェーバー研究の内容にも触れている。
正直、自分の実力不足できちんと読み込めていない部分が多かったが、近代についての議論としては特に現代社会を考えるうえで大いに参考になる内容が多くの箇所で読み取れた。もっと多くの知識をつけて再度挑戦したい。

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2020年10月20日

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マックス・ウェーバーを扱った本。

ウェーバーは日本で社会学を学ぶ上で避けて通れない人。私は大学は社会学部だったが、中退したのでウェーバーの本をちゃんと読んでない。有名な「プロ倫」も。なので、入門書としてこの本を手に取った。

この本ではウェーバーの生まれや育ちから入っているが、私にはそれが理解しやすかった。いきなり理論から入るより、どんな人物がその理論を唱えているか?の方に私は興味があるので。

なるほど、「ヨーロッパ近代の特殊性」をプロテスタンティズムに求め、神が死んだ(魔術が解けた)後でも、その行為態度(エートス)が資本主義を発展させた、ってことか。明治以降に近代化を余儀なくされた日本で、ヨーロッパ近代を理解する上でウェーバーが読まれたのも納得。「三方よし」の近江商人との親和性も面白い。石門心学の「正直、倹約、勤勉」はたしかに宗教性を感じるし、現代の日本社会にまだ多少なりとも残っている価値観(倫理観)という気はする。

日本の社会学者はあまりにヨーロッパを理想化するよな、と感じてはいたが、その源流が大塚久雄にあった、という話も興味深かった。ウェーバーが西洋の独自性を論じたのは彼が西洋人だからで、他の地域を知る機会がなかっただけだろう。別に西洋が東洋より優位、ということもでないし、逆でもない。今の民主主義・資本主義は西洋発なので西洋社会の人の方が親和性が高いのは事実だが。

しかし、音楽社会学が面白いな。こんな学問分野があるんだ。「情念」を扱う際にたしかに音楽は避けられないもんね。

まだ表面的にしか理解できてないから、何度か読み返してみよう。その上で、いつか「プロ倫」や別のウェーバーの著者にも挑戦してみたい。

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2020年10月14日

購入済み

簡潔さがいいです。

個別のものを読もうと思えば、好きな人は読み始めるかもしれないが、本書は、簡潔に要約・時代背景も書いてあって、素早くエッセンスを取り込めるところがいい。いつからできるかわからないが、インテリぶった同僚と、飲み屋で語るのもいい。

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2020年07月24日

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高校生の時、『職業としての政治』というタイトルに馴染めなかった。実際、中身もタイトルに合ったものではなかった。馴染めなかったわけがこの本を読んで分かった。著者は「仕事としての政治」と書いている。これなら分かる。もやもやが解けた。
新書ながら内容は濃い。日本のウェーバー受容の仕方、ドイツでの理解のされ方との違いなど多くの論点が含まれている。

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2020年06月22日

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没後100年の記念出版だという。前提知識などほとんどない。名前は知っている。社会の授業で習ったはずだ。「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を略して「プロ倫」と呼ぶことなど勿論知らない。主専攻が法学であることも初めて知った。展覧会への公的支援は手続きが間違ってなければよいのか、中身もみるのか。形式合理主義か、実質合理主義か。合理性にも複数の絡み合いがあるという考え方。愛知トリエンナーレの問題を指しているのではあるまい。「一人称で語れない政治理論は非政治的である」キャスターに中立を求める報道に意味はない。平和主義は非現実的か。原子力発電は現実的か。現実的解が信条的解を排除すべきではない。本当に「現実的」かはわからない。読んで知識がついた実感はない。ただ、何かは変わった。

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2020年06月16日

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「ヨーロッパ近代」と格闘したマックス・ウェーバー(1864-1920)について、その生涯と研究、政治への関わりなどをコンパクトにまとめた好著。とくに日本への影響については、独自の1章「マックス・ウェーバーの日本」(「マックス・ウェーバーと日本」ではなくて「の日本」)を立てて論じられており、面白かった。1931年にクルト・ジンガーが来日し、大塚久雄もジンガーの講義に接してウェーバーのテクストに本格的に取り組んだと書かれてあったが、同時に下村治も聞いていて彼はケインズの『貨幣論』やジョーン・ロビンソンの『不完全競争の経済学』に興味を持ったそうだ。こうした対比も興味を惹いた。

また「あとがき」でも述べられているように、本書はウェーバーのテクストを「ゴリゴリと読み解いていく」タイプの「ウェーバー学」ではなく、多くの周辺人物との対比などを上手に交えながらウェーバーが問題にした論点や対立点を浮かび上がらせていく方法を取っており、そのため各章の扉に掲げられた「関連年表」もかなり独自のものとなっている。また世界各国でウェーバー没後、どのように受容されてきたについても多くのページが割かれており、類書にはない本書の特徴と言えよう。

たとえば第3章「自己分析としてのプロテスタンティズムの自己分析」ではウェーバーとレンブラント、エーリッヒ・フロム、ベンジャミン・フランクリン、そしてフィッツジェラルドが取り上げられる。「ウェーバーはもちろんフィッツジェラルドを読んでいないし、フィッツジェラルドもウェーバーを読んでいたわけではないだろう。しかし、ウェーバーが両親の相克から「二つの規律のはざま」を書いたように、フィッツジェラルドもギャツビーとデイジーに託して相克する二つのビジョンの物語を書く。そして高度化する資本主義社会における空虚さに目を向けながら、かつての理想の喪失を語ろうとするとき、この二人の眼差しは交差する」(p.92)など。

こうした対比がいくつもあってそれぞれ面白いのだが、いかんせん新書の分量。掘り下げが少し浅いのが気になった。

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2020年06月14日

Posted by ブクログ

ウェーバーの思想についての解説だと思っていたが、伝記であった。さらに、直接関係ない人物や日本のウェーバー研究者についての説明まであった。
 一見、至れり尽くせりのようではあるが、ウェーバーの思想のみを理解したい人にとっては邪魔かもしれない。

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2020年09月26日

Posted by ブクログ

「社会主義」と「権力と支配」を読んで「ま~難しく語ることで」と思い人の意見も聞いて見ようと手にした1冊!
著者があとがきで記載の通り、本書の特徴が弱点になっている。そこ読んでから買われるのもありかと。

個人的には整理つけるのにはそれなりに役立ったかなと、

以下、思ったこと
 ・派閥に対抗するために派閥が必要になる
 ・抗うことのために導き出した手段は、目的達成後、形骸化する。
 ・全てのことはコインの両面、いい面も悪い面もある

ウェバーの思想は上記のごくごく当たり前のことを痛感させる思想である。



ゾンバルトの「ユダヤ人と経済生活」読んだので「プロ倫」も読んどこうと思ったが、ちょっと食傷気味、、、

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2020年08月01日

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