野口雅弘のレビュー一覧
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日本では最近の流行だが、官僚制批判は西洋における官僚制の登場当時からある点、行きすぎた官僚制は民主主義と対立するが、官僚制がなければ民主主義が維持出来ない点、官僚制は人のいかんによって業務の処理の仕方に偏差が出ないように規則で規定されている、つまり、『「脱官僚」とは人の決断やその決断をもたらした根拠を巡る党派的な争いが顕在化すること。この大きな不可を担う準備がないと、これまで行政組織の中で慣行となってきた物の非正当性を告発し、議論を提起することはできる物の、それを収束することができなくなる。あるいは、政治主導の名の下で、一貫性無く問題をつつきだし、決定出来ないので協議事項ばかりを増やして、いた
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少し前に話題になった政治思想史家による官僚制論です。
本書は、社会保障拡充の要請と相反する形で社会に蔓延する「官僚制批判」が生じた経緯やその本質について、思想史からアプローチすることで新自由主義批判へと接続した、一風変わった1冊です。
各章では、政治思想、社会学、文学などの官僚制に関する幅広い知見が紹介されていますが、中でもM・ウエーバーの官僚制論についてはかなり根源的な考察がなされており、その再評価が本書の目的の1つともなっています。
まず第1章では、「官僚制」の語源そのものが、その保守性等を批判するロマン主義の言説によって提起されたものであり、官僚制批判は時代を超えた普遍性を有するもの -
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【読書】世の中で「官僚」という言葉が良い意味で使われるのはまずない。特に現在は脱官僚を掲げて政権を果たした民主党政権において、その傾向は特に強い。そんな中で本書は、官僚制についてマックスウェーバーの政治思想に注目しつつ、幅広い分野の政治学者の考え方を整理しながら論じており、予想以上に面白い本であった。「官僚たちの夏」のような焼け野原の戦後日本を高度経済成長に導いたような官僚像は終焉し、90年代以降、官僚への批判が噴出し、現在もその傾向は続いている。著者は、政治思想史から見ればそれは現在特有のものではなく、また日本特有のものではなく、18世紀ごろから一貫して続いているものだという。また、不平等や
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本屋の平積みから購入。
野口さんは自分より10歳若い政治学者。文章もやや生硬なところもあるが、ご愛敬か?
あとがきで、傾斜している河原を歩いていると、まっすぐ歩いているつもりでも傾いてしまうように、官僚制についても、自然と反官僚になることを、現在の官僚バッシングを前提に指摘している。(p179)
その傾きの計測をすると野口さんは謙遜されているが、自分からみると、官僚への応援の本とも読める。
主張は結語で要領よくまとめられている。自分として、納得した点。
①官僚制はデモクラシーの要件である。(p154)
一定の規模の政治体制で、公平平等な運営をしようとすれば官 -
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「社会主義」と「権力と支配」を読んで「ま~難しく語ることで」と思い人の意見も聞いて見ようと手にした1冊!
著者があとがきで記載の通り、本書の特徴が弱点になっている。そこ読んでから買われるのもありかと。
個人的には整理つけるのにはそれなりに役立ったかなと、
以下、思ったこと
・派閥に対抗するために派閥が必要になる
・抗うことのために導き出した手段は、目的達成後、形骸化する。
・全てのことはコインの両面、いい面も悪い面もある
ウェバーの思想は上記のごくごく当たり前のことを痛感させる思想である。
ゾンバルトの「ユダヤ人と経済生活」読んだので「プロ倫」も読んどこうと思ったが、ちょっと -
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711で購入する。最近、711で本をよく購入する。平易な文章は好感が持てます。正直、期待はずれです。官僚制に対する素朴な疑問は、いつの時代にもあります。これは、万国共通です。政治家は、その疑問に答えるべく、官僚を攻撃します。これも、万国共通です。しかし、攻撃は出来ても、その後の改革はうまくいきません。理由は簡単です。改革には、形式的合理性が不可欠だからです。官僚の持つ形式的合理性が、庶民の苛立ちの原因なのです。形式的合理性を持った政治家も、苛立ちの対象となるのです。改革に着手した途端に、庶民の支持は失われるのです。日本の状況を考えてみましょう。官僚批判により台頭した民主党は、何も出来ませんでし
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官僚制批判の歴史とは、官僚制の歴史と大きくリンクする。
その意味で本書は、そのタイトルを官僚制批判の論理と心理と置いているが、同時に官僚制自体がどのように捉えられてきたのかという歴史的な言説を追いかけた、思想史的なアプローチで官僚制を分析した一冊とも言える。
著者は官僚制批判の根源を、ロマン主義に求める。画一的な決定を下す官僚機構に対して、多元性を重視するロマン主義が反発するというのがその基本的な構図である。
とは言え、分析の中心は特にウェーバーである。彼は官僚制を「鉄の檻」と捉え、その形式合理性を指摘した。しかしながらテクノクラートによる支配は、ハーバーマス的な後期資本主義の中では政治化して