山本智之のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
[割れていた「一枚岩」]先の大戦にあたり、常に強硬な意見を吐き、海軍との比較で「悪玉論」の主役として描かれることが多い帝国陸軍。そんな陸軍の中にあって、敗戦にいたる早い段階から終戦工作が進められていたという、これまであまり光が当てられてこなかった点に着目した作品。主戦派の服部卓四郎、早期講話派の松谷誠の両名を軸としながら時系列的に意思決定を描いていきます。著者は、本書を通して日本的組織の在り方に警鐘を発している山本智之。
参謀本部の「奥の院」と言われた作戦課に対して、あまり注目されてこなかった戦争指導課の働きが本書で明らかになるのですが、陸軍内にとどまらない工作や根回しなど、従来の陸軍一枚 -
Posted by ブクログ
日本近海で取れる魚介類や藻類が極端な減少傾向を示しており、すでに絶滅危惧種に指定されているものも出ている。また一方で、今までいるはずもなかったものが取れるようになった、といった生態系の変化が各所で起こっている。地球温暖化の影響による水温や水質の変化はもちろん大きな要因といえるが、その他にも我々の生活から出るごみ、それも長期にわたって海中に残留するプラスチック系のごみや、化学物質や放射能による汚染、などによる被害の実態を、十数年にわたって取材活動を続けてきた朝日新聞の記者がレポートする。
マグロや鰻といった日本人の好む食材を確保するための乱獲や、各種の開発事業、河川、海岸の工事などによる生態系の -
Posted by ブクログ
参謀本部/戦争指導課を中心とした陸軍の早期講和派の動きを主戦派との対比で描き、陸軍は戦争継続一辺倒で一枚岩だったわけでは決してないことを論じている。戦況悪化につれ、日和見的だった中間派が次第に戦争終結論に傾き、終戦に至ったわけだが、コンセンサスを形成するまでの過程があまりにももどかしい。とはいえ、早期講和工作を表立って行うことが非常に困難だったからこその苦労だったのだろう。もっと早く決断していれば原爆投下はなかったというのはたやすいが、当時の状況でどのようにすればよかったのか自分自身に問われると、正直戸惑ってしまう。現代においてどのように活かすか。。
-
Posted by ブクログ
要再読。
一般に「聖断」の理由は、原爆投下とソ連参戦と言われるが、本書では1945年6月に、梅津から精鋭と思われていた中国・満州の陸軍がほとんど役に立たないと奏上されたことを理由にあげている。
かつて読んだ、鈴木多聞「終戦」の政治史では、本土決戦用の九十九里浜の防御陣地が完成できないこと。半藤利一(保阪正康だったか)は多くの著書で、やはり1945年6月の梅津の奏上に加えて、皇太后より寝込む程の叱責を受けたことを理由としていた。
陸軍が戦争初期から終戦の研究をしていたとは初聞。また、戦後は天皇を守るために戦争責任を引き受ける工作までしていたとは。