あらすじ
アジア太平洋戦争で終戦の地固めをしたのは、強硬かつ頑迷で悪名高い陸軍内で、極秘の工作活動を行った一派だった! 第二次大戦開始から戦争後期までドイツ軍の戦局に応じて立案された作戦の推移を追いながら、服部卓四郎率いる参謀本部作戦課と松谷誠の戦争指導課との対立を示し、「“陸軍一枚岩”観」を覆す、異色の終戦史。
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Posted by ブクログ
[割れていた「一枚岩」]先の大戦にあたり、常に強硬な意見を吐き、海軍との比較で「悪玉論」の主役として描かれることが多い帝国陸軍。そんな陸軍の中にあって、敗戦にいたる早い段階から終戦工作が進められていたという、これまであまり光が当てられてこなかった点に着目した作品。主戦派の服部卓四郎、早期講話派の松谷誠の両名を軸としながら時系列的に意思決定を描いていきます。著者は、本書を通して日本的組織の在り方に警鐘を発している山本智之。
参謀本部の「奥の院」と言われた作戦課に対して、あまり注目されてこなかった戦争指導課の働きが本書で明らかになるのですが、陸軍内にとどまらない工作や根回しなど、従来の陸軍一枚岩のイメージからはかけ離れたその役割に驚かされました。戦争終結にあたり、それをどれほど「主導」したかについてはさらなる研究が必要だと思いますが、戦争の見方にも少なからず関わってくるその動きを紹介した本書の意義は大きいのではないかと思います。
また、早期講話派の存在故に「陸軍悪玉論」に対する「陸軍無罪論」を説くのではなく、さらに一歩踏み込んだ形での問題の提示を図っているバランス感覚にも好感が持てました。本書において揺れる存在として描かれる中間派、特に敗戦時の参謀総長であった梅津美治郎が取った姿勢について著者が有する問題意識というのは、今日的にも(特に日本に限らず)留意すべきものがあるのではと感じました。
〜戦況に対する判断が分かれる中で、主戦派と早期講話派が主導権争い=多数派工作を行うが、中間派(サイレント・マジョリティ)が戦争後期に主導権を把握し、主戦と早期講話の両方を天秤にかけ、最終的には早期講話派を支持するという政治選択を行うことで、戦争終結へと移行したところに、陸軍における戦争終結過程の特徴がある。〜
まだまだ先の大戦に関する書籍には学ばされることが本当に多い☆5つ
Posted by ブクログ
参謀本部/戦争指導課を中心とした陸軍の早期講和派の動きを主戦派との対比で描き、陸軍は戦争継続一辺倒で一枚岩だったわけでは決してないことを論じている。戦況悪化につれ、日和見的だった中間派が次第に戦争終結論に傾き、終戦に至ったわけだが、コンセンサスを形成するまでの過程があまりにももどかしい。とはいえ、早期講和工作を表立って行うことが非常に困難だったからこその苦労だったのだろう。もっと早く決断していれば原爆投下はなかったというのはたやすいが、当時の状況でどのようにすればよかったのか自分自身に問われると、正直戸惑ってしまう。現代においてどのように活かすか。。