新谷尚紀のレビュー一覧
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民俗学の視点で、弥生時代くらいから今に至るまでの日本の歴史から現代日本人の考え方をやや批判的に分析している、結構左寄りの本。
それぞれの時代の環境で人々の倫理観や死生観も変わってくるものだが、政治体制的には「天皇を頂いた下で」が継続されている。しかし政治体制的にはともかく、大半の国民が貧しかった頃は「他人や他国から奪う」のが当たり前だったことは強調されている。現代日本人の精神構造は主に明治~戦後の中で作られてきているようだが、長い目で見れば島国であることと気候(これは他国でも同様)が大きく作用していると思われる。
啓蒙書、というほどではないが問題提起はあとがきでかなりされている。やや極論に -
Posted by ブクログ
「すぐ忘れる日本人の精神構造」を民俗学の視点から時代に沿って解説していくのか。民俗学者が書いてるのだから、面白そうではないか、ということで手に取る。
すぐ忘れる日本人、と聞いて思い浮かべたのは、イザベラ・バードだったかエドワード・モースだったか幕末から維新にかけて来日した外国人が、日本の家は紙と木で作った簡素なものだが、地震、火山噴火、洪水、大火事などの災害も多く、住人は家屋がぺしゃんこになっても嘆き騒がず、翌日には家を建て直して何もなかったかのように笑いながら日常に戻っている。そのたくましさが凄いという文章を書いていた。パール・バックが日本を舞台に書いた「大津波」もそうだ。津波で家族を亡く -
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民俗学の研究者である著者が、これまでの神社にかんする研究の成果をまとめつつ、「神社とは何か」という問題について考察を展開している本です。
著者は、歴史学や考古学にくわえて、民俗学(民族伝承学)の方法を駆使して、文献史料や遺物史料にものこされていない、もっとも古い神社のありかたについて検討し、さらに現代にいたるまで神社の歴史が多様な変遷の過程について説明しています。
民俗学を主要なフィールドとする著者は、「神社とは何か」という問いに対して、「自然界の生命力を神として信仰し迎え祀る場」という、やや本質主義的な回答を示しています。こうした考えは、前著『神道入門』(2018年、ちくま新書)でも語ら -
Posted by ブクログ
民俗学の視点から、神道の歴史を通覧するとともに、それをつらぬいているものについて論じている本です。
本書のなかで著者は、「すべての事実、事象、言語、いずれもその発生から伝承へという運動の中で、浮動と漂流を重ねていく、だからその動態研究には比較研究が有効なのだ」と述べて、折口信夫の思想のなかに見いだされる「伝承分析論」の立場から、神道の変遷をたどっています。
こうした民俗学の立場から見たとき、神道は一つの伝統文化ないし伝承文化としてとらえられることになります。本書はそうした伝統の変遷をたどることで神道の具体的な内容をわかりやすく説明しています。そのさい、変遷の過程は「古代以来、稲作の王として