ロンドンのレビュー一覧
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極寒のアラスカで生きぬこうとする犬の物語。
圧倒的な自然描写と生きものへの深い愛を感じた。古典新訳がとても読みやすく引きこまれた。
カリフォルニアのお屋敷の飼い犬だったバックは、拉致されゴールドラッシュに沸く極寒の地に連れてこられた。主人が振り上げる鞭や棍棒を前に、尊厳は限りなく踏みにじられていく。人間の冷徹さが容赦なく描かれてあり、そり犬となったバックの心身の痛みが伝わってくるようだった。
厳しい環境に順応していくうち、バックの野獣の血が闘争心を掻き立てる。リーダーの地位を望むバックと先導犬スピッツとの死闘の場面は凄まじかった。
そして第5章、春になり溶け始めた氷の上を積荷を満載したそ -
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ネタバレ英語学習者向けとして読んだ物語の日本語訳版に触れてみた。この訳者の用いる日本語が最適なのか,原文の力強さがそのまま反映されているのかはよくわからないが,細かなシーンにぴったりの言葉の並びに感銘を受けた。野性味溢れた荒々しさとともに共存する美しさが純粋に表現されているのに加え,主人公の犬が擬人化されすぎていない。人間のような感性を動物に当てはめるのではなく,動物が持つ本能的な「悟り」が描かれており,主人公が動物のわりには,ただの動物好きが書いたり読んだりする小説ではないところが素晴らしいと思う。
【ここからネタバレ注意】
それに加えて,この物語は人間に対する危惧の意味も含まれていると感じる。動 -
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昔から大好きな小説でしたが、新訳という事で新たに読んでみました。
確かに、昔の訳より格段にとっつきやすくなっています。
所々以前と違う訳がありますが、どちらが正しいかは原文を読まないと解らないですね(笑)
動物描写は確かに凄いのですが、人間描写になると作者の人種差別や階級差別が感じられてしまいます。が、作者の時代だと仕方ないのかも…と割り切って読みました。1番目の飼主と3番目の飼主の設定が逆転していたら、もっと素直に読めた気がします。
しかし、それを差し引いても、ホワイトファングがかわいくてかわいくてかわいくてかわいくて仕方ないです。モフモフしたい!確実に噛み裂かれますが。 -
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穏やかに暮らしていた飼い犬、バックがふとしたことから過酷な運命に引き込まれ、野生に目覚めていく。
犬ぞりを操る赤いセーターの男に従い雪原を駆け、仲間の犬との闘争の中で徐々に自らの中にある野生を取り戻す課程は最も印象的で読み応えがある。犬ぞりの犬たちはこんなにも賢く、自尊心があり、また使命感やWillがあるのだろうか。真意は別として物語として納得性があると感じた。
郵便輸送隊に従事にて疲弊した後の無謀な3人組との旅路も人間の愚かしさを感じさせ、その後出会うソーントンとの穏やかな日々に癒される。
漫画以外に読む機会があまりなかった動物物、楽しく読めました。 -
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自伝的な作品『マーティン・イーデン』が非常に素晴らしかったことから、まだ未読の作品も多い(翻訳自体がない作品も多いのだが・・・)ロンドンについて、ぱっと手に入りやすい古典新訳文庫から選んだ1冊。40年の生涯という短さの割にはロンドンは多作な作家だと思うが、翻訳されている作品が少ない分、クオリティが高い作品が選ばれているのかもしれない。そう思わせられたほどに本作も素晴らしい作品。
主人公はサンフランシスコの名家で暮らしていた1匹の犬がふとしたことからカナダ・アラスカの極北の地へと売られ、極寒の地で重い荷物を運び続ける橇犬として活躍する様子を描いた三人称小説である。主人公はこの犬そのものであり、 -
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ネタバレジャック・ロンドンによる北方ものと言われる作品。初めてロンドンの作品を読んだ。カルフォルニア・サンフランシスコからカナダ・アラスカの地へ売られてしまう、セントバーナードなどの雑種であるバックの視点から北方のゴールドラッシュに沸く、人間、犬、狼の暮らしが描かれる。その生活は現代の我々からすると、極めて過酷で暴力的であり、死が隣り合わせの生活である。犬に対する暴力、犬同士の殺し合い、人間の横暴による犬の死。野生による脅迫など、とても生きていけるとは思えない生活である。仮に厳しい自然を乗り越えたとしてもインディアンの襲撃によって命を落とすことがあるという世界。そんな中でバックは野生からの呼び声に応え
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裕福な家庭の飼い犬として過ごしていたバックが誘拐され、アラスカの橇犬として売られるところから始まる。健気な犬が前向きに頑張る話ではない。バックは文明的な生活を忘れ、弱肉強食の掟に順応していく。
バックは狼ではなく、あくまで犬である。人間に仕え、鞭を振るわれて橇を引く。忠義を尽くすべく愛した人間もいる。だが、父祖から脈々と受け継がれた眠れる記憶が呼び起されていく。バックをとおして、野生の生き物が持つ警戒心、狡猾さ、容赦のなさ、闘争心は当然に人間にも備わっているということに気が付く。実直や寛容に価値を置く世界に暮らしていても、猛獣の気配を気にしながら闇の中で眠った記憶がその身に刻まれている。 -
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翻訳物であることが影響しているのか、あるいは原文のテイスト自体がそうなのか、壮大な物語である割には、あまりに淡々と進行していく感じがして、特にジョン・ソーントンと絆を深めていくくだりなんかはもっと紙幅を使って盛り上げに掛かればいいのに…などと思ってしまうが、執筆から120年近く経った今も決して色褪せぬどころか、輝きを増しているかのような創作世界の素晴らしさと凄みは充分過ぎる。
動物好きであれば、だからこそ読んでいるのがしんどくなる苦境の描写もあるし、リアルな犬の能力を遥かに超えるブッ飛び展開もあったりするが、やはり必読の名著だろう。
時折、シートンの「狼王ロボ」や高橋よしひろ氏の「銀牙」を思い