二木麻里のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ戯曲は初めて読んだ。会話文ばかりの文章なんて果たして本当に楽しく読みこなせるのか不安だったのだが、この作品に限ってそんな心配は不要だったのだと思い知った。小説のように視点が固定された地の文がないため、台詞の一つ一つが切実で、素直で、情熱的、そしてそれらの掛け合いはまるで音楽のようにリズミカルに私たちの胸に響く。その躍動感は、時に心理描写をつぶさに描く小説よりもダイレクトに、登場人物の感情を我々に届ける。その濃密さを知れただけでも、今回「オンディーヌ」を手にとって良かったと思った。
加えてこの「オンディーヌ」、勘違いに勘違いを重ねて殺したり殺されたりするよくある異類婚姻譚の悲恋物語かと思いきや、 -
Posted by ブクログ
先日読んだ或る小説で言及されていて、その引用文がひどく印象的だったので読んでみた。
訳の違いで随分ライトな感じになってはいたけど、最後の展開は凄くドラマチックでロマンチックで、わりと好きです。
愛した人のことをすっかり忘れて生き続けるのと、
何もかも覚えているまま、その記憶とともに死ぬことは、
どちらが幸せなのだろう。
毎日のあらゆる瞬間の中に刷り込まれたそのしるしさえ、オンディーヌは忘れてしまうのだろうか。
しるしが残ったままだったとして、その意味を、もしくはそこに意味があること自体を、オンディーヌは忘れてしまうのだろうか。
魔法にかかったかのように。
もしくは、魔法が解けたかのように。