ウェルズのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
タイムトラベルSFの始祖、の新訳版。今やエンターテイメントになくてはならないジャンルになったとすらいえる、時間移動もの。その源流はセンス・オブ・ワンダーと人類社会の行く末を見つめる慧眼を感じさせるものだった。
80万年後の世界では、富裕層と貧困層との格差社会が広がったはてに、ヒトとしての種族そのものが分化してしまっていた。そこで語られるのは資本主義への痛烈な批判だ。「持つ者」と「持たざる者」との対立、この小説の発表から100年以上たった今もこの構造は変わらない。
昨今の作品に比べればはるかにシンプルながら、人類の終焉について思わず考えてしまう迫力はさすが。80万年後も読みつがれていてほしい名作。 -
Posted by ブクログ
ユートピア=ディストピアというSF作品全体の流れはこの作品から来てるのだろうな。
その羊肉を一口、取っておいてくれないか。肉に飢えているもので。
映像技術、それが現代最大最高のタイムマシンなのだ。
私はあえてこれを言う。何となれば、成果に乏しい実験や、首尾一貫しない場当たりの論理や、相互不信ばかりが目立つ昨今の世の中が絶頂を極めた人類の姿だとはとうてい考えられないからだ。私はあえてこれを言う。タイム・トラベラーは常々、人類の進歩にあくまで悲観的だった。タイムマシンが完成する遥か以前から、このことについて散々議論を交わして私はよく知っている。肥大する文明の蓄積は、必ずや逆転して、ついに生みの親である人類を滅ぼす愚かしい増殖でしかないというのが持論だった。だとしたら、われわれは、せめてのことに、そうはならないように祈るしかない。しかしながら、私にとっては未来は今なお遠目のきかない不案内な領域である。タイム・トラヴェラーの土産話の記憶が極く稀に微かな光を点すばかりの大いなる暗闇である。幸いにして手元に名も知らぬ白い花が二つある。今はもう、すっかり茶色に干涸びて手を触れれば脆くも粉々に崩れるであろうありさまだが、これこそは人類の知性が退化し、肉体が衰えた後までも、恩愛と情と相身互いの友愛が心に生き続ける証である。 -
Posted by ブクログ
有名な小説だが今まで読んだことが無く、新訳を契機に読むことにした。本編以外にも解説・小伝・補説などたっぷり載っており、固有名詞の含む意味や時代背景、文学史上の位置づけ等が分かる親切設計で、前知識0でも随分楽しめたかと思う。
自分が読んだSFは(両手で数える程度しかないが)どれもこれも人類の将来が穏やかでなかった。本作でも同様で、今のままじゃヤバイよ!という著者の警句がモロに伝わってくる。「人類は自殺を遂げたと言うしかない」(p.133)と、強烈この上ない。
無理やり現代と結び付けて考えるならば、親の収入を頼りに悠々自適な生活を送るニートであったり、自宅通いでフリーター生活を満喫してる自分も”イーロイ”みたいなモノかなぁと思う。働かずとも餓死せずやっていける人種が80万年後を待たずしてこんなにも早く大量発生する現実世界を、当時これを執筆したウェルズは想像していたのかな、と思った。
久々に大きなテーマを扱うものを読めて楽しかった。仁-jin-とかテルマエ・ロマエとか、タイムスリップする系統のものは楽しいなーって思う(仁は読んでない)。温故知新とでも言おうか、過去を振り返ることで浮き彫りになる現代の問題点や気付かなかったけど素晴らしい事とかが見えてくるのは非常に楽しい。
でも、過去と現在の繋がりだけじゃなくて、この小説のように途方もない先の未来を描いたドラマや小説も、もっと触れてみたいなぁと思う。遠い未来に思いを馳せるのはすごくロマンがあって楽しいし、そんな人が描いた物語もすごく楽しい。久々にSF読みたくなった。