下斗米伸夫のレビュー一覧
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⭕️ウクライナ戦争
「ウクライナ戦争後の世界秩序」
下斗米(しもとまい)伸夫
法政大名誉教授
見つけた!
安斎育郎の「ウクライナ戦争論」での主張を裏付けるものがたくさん書かれている。
ウクライナとロシアの関係性、ウクライナが歴史的に抱えている文明や、言語、宗教の分断ラインはもちろん、アメリカの「対ロシア代理戦争」としての意味づけがロシア研究者らしく明快。安斎育郎の提出する週刊誌的証拠(安斎先生ゴメン)より遥かに学術的だ。
ウクライナ戦争の黒幕はアメリカとNATOであり、犠牲となったのはウクライナとロシアの市民だ、という主張ははっきりと重なる。
2014年のマイダン革命は、アメリカ政府内のネオコン系勢力が背後で糸を引いていたクーデターだった。
※ネオコンとは、民主党側にいた反共リベラルや強硬派が共和党に接近してできた潮流。アメリカ国内では保守系、外交では強硬で介入に積極的なアメリカの思想や勢力。
ウクライナ戦争を新冷戦と見る向きもあるが、イデオロギーの対立でなく、宗教や言語をはじめとする「アイデンティティの分裂」が争いの原因だと見ることができる。
下斗米は前著「プーチン戦争の論理」(2022年)でも、ウクライナ戦争の原因はアメリカ国内の対立にあると主張した。ロシアの帝国的思考やプーチン大統領の歴史観に由来するという、日本での支配的な見解の修正を求めたという。
※安斎先生が指摘するように、日本の平和運動の中でさえ浅い捉え方が広がっている。今朝の広島平和祈念式典で広島市長も「ロシアのウクライナ侵攻」と述べた。玉野の平和行進集会でもアメリカやNATOの責任には全く触れず「ロシアの侵攻」という言葉が出ていた。これが日本では普通のことらしい。
本書はソ連崩壊による冷戦終結の経緯やグローバルサウスの台頭、そしてパクス・アメリカーナの終焉についても詳しく、ウクライナ戦争の終わらせ方の展望にまで書き進めている。
ゼレンスキーはロシア語圏の出身であり、当初はロシアとの和平を国民に約束し90%を超える支持を得たが、民族派の圧力下で主戦論に転じ、その後も和平の機会を逃し続け国民の支持を失った。戦争を長引かせたい勢力にいいようにあしらわれた男であるようだ。
NATOを東方に拡大してロシアを衰退させようと画策したアメリカ、中でもバイデンの責任はとても大きい。100万単位の死者を出した戦争にしてしまったのだから。 -
Posted by ブクログ
御近所の書店が閉店するというその日に立寄り、眼に留めて求めた一冊であった。ゆっくりと読んだ。
随分と以前から関心を寄せている事項に纏わる本ということにもなる。主に“政治史”ということで、「ソ連」が辿った経過を振り返る内容である。
ヴャチェスラフ・ミハイロヴィチ・モロトフ(1890-1986)という人物が在る。「モロトフ」は、「レーニン」や「トロツキー」や「スターリン」と同様、往時の革命家が使っていて、そのまま通称として有名になった“ペンネーム”である。本名はスクリャービンというそうだ。
近現代の歴史に関心を寄せる方であれば、「モロトフ・リッペンドロップ協定」という、第2次大戦の前のソ連とドイツとの間の密約という話しを耳にしているかもしれない。この話しに出て来るソ連の外務大臣がモロトフである。
モロトフは、ペンネームを通称として使い続けたことが示すように、革命が成る以前からのボリシェヴィキである。党の仕事や政府の仕事を手掛け、スターリンに近い幹部として要職を歴任した。フルシチョフ時代になって党を離れ、やがて1984年に復党する。そしてゴルバチョフ時代に入った1986年に96歳で他界している。
本書はこのモロトフを“キーマン”と位置付け、彼が関与した事案等を軸に据えながら、「ソ連」が辿った経過を振り返る内容である。
極々大雑把に顧みる。
ロシア革命の後、第1次大戦の後始末や内戦というような状況が在りながら、レーニンを指導者として体制が構築されて行く。レーニンが逝去した後、スターリンを中心とする流れと、その他の流れとの抗争のような情況が在って1930年代に入って行く。
1930年代には農業集団化の件等、実に色々と在って、やがて第2次大戦の時期に進む。戦争を乗り切った後、国際政治の様々な動きも在るが、やがてスターリンが逝去する。
以降、スターリンに近かった人達が排され、フルシチョフの時代に入る。そしてフルシチョフはブレジネフに追い落とされてしまう。やがてブレジネフの下で「停滞の時代」になる。
ブレジネフが逝去した後は、アンドロポフ、チェルネンコと何れも短命政権であった状態が続き、1985年にゴルバチョフが登場する。
ゴルバチョフの下での動き、「上からの革命」が「下からの革命」の挑戦に晒されるような状況、ソ連共産党の維持することや、連邦体制を維持することが困難になり、ソ連の旗は1991年に下ろされてしまう。
こういうような大雑把な流れに関して、様々な事柄を挙げて掘り下げているのが本書だ。
現在、ソ連の旗が下ろされてから30年余りということにはなる。「ソ連の歴史」を振り返ると、バルト3国とソ連後の12の国々が成立して辿る経過、ソ連が旗を下ろすようになって行く頃の「色々と在った…」または「課題を残し過ぎた?」ということが在って、それ故に「昨今の様々な問題」も生じているのかもしれないというようなことを思った。
「30年余り」というのも“微妙”かもしれない。本書の終章辺りに綴られている、1980年代末や1990年代冒頭の色々な出来事に関しては、極個人的な話しになるが、「自身の人生の中での見聞」というようなことで記憶に留まっている場合も多く在った。そういう情況でもあるが、それでも30年以前と最近とでは、色々な事柄を巡って随分と様子が変わってしまっていることも思わざるを得ない。そういう「個人の人生の中での時間」であると同時に「余りにも多くが大きく変わり得る時間」ということで、30年余りを“微妙”と表現したくなる。
そういう訳で、「ソ連の歴史」というようなことになると、やや複雑な想いも沸き起こるのだが、それはそれとして「振り返っておきたい事柄」であると強く思う。これもまた「昨今の様々な問題」を考える大事な材料だと思う。
本書は、最初のモノが2002年に登場していたが、その後の研究成果―ロシア革命の“担い手”というような役割を負った人達に関する事等―を加味して加筆し、2017年に「ロシア革命100年」を意識して改めて登場したモノであるという。「ソ連の歴史」に登場する人名等に不慣れな方に関しては、やや「入り悪い?」のかもしれない。が、自身はその種のモノに少し馴染んでいるので、何か凄く夢中になってしまった。 -
Posted by ブクログ
WW2終結後、同盟関係から徐々に対立関係へと移行していく米ソにとって、争点となったのは「東欧」「核管理」だけで無く「大日本帝国の領土」でもあった。ソ連(スターリン)は当初北海道の北半分の直接占領を要求していたが、それを取り下げるに当たって、核兵器開発のためのウラン入手先としての東欧を優先したからと言うのは目からうろこだった。もしもソ連国内のウラン鉱山が既に発見・発掘されていたら、容易にソ連が折れない展開もあったかと思うと…
また、鳩山政権時の日ソ国交回復交渉においては、ダレスが「二島での妥協はサンフランシスコ平和条約への違反なので、その場合は米国による沖縄併合もあり得る」という発言もまた、日本の中立化を許さないという米国の意思の表れで有り、ここ日本が冷戦の最前線で有り、我々が当事者であったことを思い起こさせるモノである。
なお、日本共産党は、劉少奇とスターリンのパシリだったw(そして中ソ対立で親ソ派を粛清。文化大革命では逆に中国共産党から追放され、宮本党へ)
毛沢東の「核戦争で人類が半減しても…」発言は、元々ロシアよりも中国の方が危険なメンタリティだったんじゃねえの?と構成の視点から見てしまう。中ソが対立したからといって、中国に肩入れしたのは大失敗だったね。<日米共に -
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ソ連〜ロシア研究の専門家によるウクライナ戦争の解説。
ウクライナ戦争については、どうしてもウクライナ側、欧米側にたった記事や論評が多く、ロシア側からみようとしていても、実は、ロシア側というより、反米という視点にたったものが多い感じがする。そういうなかで、長年、ソ連〜ロシアを見てきた著者による本は、新しい視点を与えてくれた感じがする。
著者は、この戦争は、長い時間軸のなかでみることの必要性を述べていて、どこが起点になるかというとキリスト教化、正教化した時点となる。
そして、ソ連という建前上、無神論の時代においても、実は正教的なものが指導者の間にもあって、ソ連崩壊後は、それが前面にでてきているということ。
つまり、いわゆる安全保障のための力の論理だけでみることができなくて、宗教を理解することの必要性を説明している。
その指摘の正しさについて、論評はできないが、そういう視点もあるのかということで、いくつもの発見はあった。
本当にそういう因果関係なのか、もしかするとそういうストーリーがあとで構成されているのかは不明だが、プーチンやロシアの人々が生きているストーリーとしては、リアリティがあると思った。
ロシア側の視点を理解することは、今、ロシアがやっていることを幾分も正当化することにはならないのだが、良くも悪くも理解することは、一定レベル、その行動を許してしまうことにもつながる感覚もあり、その辺りが悩ましいところ。
この本は、どうしてプーチンがこの戦争を始めたかということの説明ではあるが、どうしてこうした過酷で残虐な戦争行為がなされているかの説明にはなってないような気がする。
本のなかでも、あまりそうしたことへの言及がなく、その辺のバランスの悪さは感じるところ。
もしかすると、ロシア側からの情報を得るためには、そういうことに言及することで、ルートがなくなってしまうことを恐れ、その辺りは他の著者にお願いというスタンスなのかな?
という前提をおけば、他の本とは一味違う見解がわかって、有益だと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2014年2月に起こったウクライナの政変に端を発するウクライナ危機によって、欧米諸国とロシアとのあいだに緊張が走った。ロシアのプーチン政権はどのような舵取りをするのか、そして日本との関係はどうなるのか。著者はロシアとウクライナの国家成立の歴史から現在の政治情勢までを非常にわかりやすく説明しながら、今なぜロシア外交が東方へシフトしているのかを繙いていく。筆者の見立てでは、プーチンが進めるユーラシア主義に基づくアジア重視外交は、特に日本に対する接近を強めていくであろうとみている。そして今こそロシアと日本のあいだにある北方領土問題の解決を進めるべきであることを強調する。
日本は中国との関係改善が進まないなかで、北東アジア諸国の多角的な関係を考えれば、日米同盟だけにたよるのではなく、ロシアとの関係を改善していくことは、間違いなく重要であろう。ロシアが求める技術協力と日本が必要とするエネルギー資源が結びついて新たな日ロ間の経済関係が生まれる可能性を示唆している。
出版は2014年12月でありながら、9月のウクライナとEUの自由貿易協定まで触れている。最後の方は、やや筆を急いでいる感じもするが、日ロ関係の行く末を見通す書をこれだけタイムリーに世に出した意義は大きい。
思えばロシアに興味を持ったのは、大学時代に下斗米先生のロシア政治の講義を受けたことがきっかけであった。先生の話は分かりやすい。ロシアや東欧の歴史や政治は日本から見ると複雑でわかりにくい。いつも明快な言葉で教えて頂き感謝です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
アジアの近代は、国民国家の成立を待たずに帝国主義の支配に従い、次いでただちに社会主義の洗礼を受けた。
このため、ヨーロッパでの東西対立のような国家関係が存在しなかった。
こうした、この地域独得の多極的な力関係や歴史的背景を抜きにしてアジアの冷戦は語れない。
本書は、ソ連崩壊前後に公開された機密文書、重い口を開いた証言などを綜合して、アジアでの冷戦の誕生から終焉までをたどるものである。
[ 目次 ]
第1章 アジア冷戦の始まり
第2章 中国革命と中ソ同盟(一九四九―六〇)
第3章 北朝鮮―建国・戦争・自主
第4章 ソ連とアジア、偽りの同盟(一九五四―六四)
第5章 中ソ冷戦とアジア冷戦(一九六四―八四)
第6章 ソ連の崩壊とアジア
第7章 二一世紀のアジア
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