あらすじ
2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、すでに3年以上続く戦争となった。2025年1月に誕生したアメリカのドナルド・トランプ政権は停戦へ向けた交渉を進めるが、その先行きは依然として不透明である。なぜロシアはウクライナに侵攻したのか? なぜ国際社会は、戦争を防ぐことができなかったのか? この戦争の本質を理解するには、ロシアが置かれている軍事的・経済的な状況だけではなく、多くのロシア人がもつ宗教観・民族観、さらには「グローバルサウスの台頭」や「パクス・アメリカーナの終焉」の影響を知る必要がある。ロシア研究の第一人者が、ウクライナ戦争後の世界秩序のゆくえと、新たな「文明の衝突」の核心に迫る。
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Posted by ブクログ
ウクライナ戦争計画は最初から漏れ気味だった、スターリンが核兵器開発を優先したことで日本本土、特に予定されていた北海道へのソ連軍の侵攻は中止された等、興味深いことが書かれていました。
Posted by ブクログ
●ウクライナ戦争の原因とこれからの世界の構図を分析した本。
●筆者は、ウクライナは歴史的に東西の分裂があり、この国内の歪みがウクライナ戦争を引き起こした最大の要因と語る。その上で、冷戦終結時に米ロで約束されたはずの軍事同盟の不拡大を破って、NATOやアメリカによる東方拡大政策もウクライナ戦争の一因だと繰り返し述べている。日本は西洋諸国側の立場だからか、メディアなどではロシアが悪といった風潮があったが、そう単純なものではないのだと改めて思い知った。
Posted by ブクログ
ウクライナ情勢への関心が下がっている事は至近の支援件数や寄付、報道の減少からも明らかなようだ。個人的には、国益最大化を求め合った故のバグという為政者の身勝手な論理が透け、善悪二元論で片方を擁護しようという気持ちが冷めてきている、というか成立しないままだ。特にトランプのディールの介入がそうさせた気がする。唯一、戦争という手段を選んだプーチンは先に手を出したから悪いという論理くらいだ。
長期化するのかも知れない。また、だからといってマンネリ化して受け止め、日本には影響がない事とも言えない。本書のタイトルにあるような〝戦争後“なんて考えられるのか、覗いてみたい気がしたのだが。だが、正直いうとその事について明確に書かれているかは微妙だ。
ー 「ウクライナ」という国名は、スラブ語の「クライ」を内包しているが、これは「辺境」「地方」を意味する言葉である。本来、カトリック側であるポーランドから見た「辺境」という意味であって、東方正教会、つまりロシア側からの視点ではない。現在のウクライナ戦争において、日本はウクライナへ武器を提供しなかった。そうした意味でも、日本にはロシアとウクライナの和平を積極的に仲介する資格があると言えよう。本書がウクライナ和平の一助になれば幸いである。
ー ウクライナの首都キーウ(キエフ)は、ドニプロ(ドニエプル)川のほとりにある美しい町だ。今から一〇〇〇年以上前、キーウを中心都市として栄え、ヨーロッパ最大の版図を誇った大国が「キエフ・ルーシ(キエフ大公国)」である。このキエフ・ルーシが、ウクライナとロシア双方の歴史的起源とされる。キーウのなかでもひときわ美しいと言われるのが、西暦一〇五一年に建立されたキーウ洞窟修道院だ。最も古い正教の修道院と言われているが、現在は「モスクワ総主教庁系ウクライナ正教会」と、コンスタンチノープル総主教庁系の「ウクライナ正教会」とに分裂し、その資産をめぐる論争が国際的な事件にまで発展している。
ー 現在のロシアとウクライナとの関係は、「主権国家」同士ということで言えば、ソ連崩壊から三十数年という短い歴史しかない。だが、民族的・宗教的な観点から眺めると、両国の関係には一〇〇〇年以上に遡る長く複雑な歴史が存在する。西暦九八八年、キエフ・ルーシの統治者で、プーチン大統領と同じ名前を持つウラジーミル大公が、東ローマ帝国(ビザンツ帝国)の皇帝バシレイオス二世の妹アンナと結婚し、キリスト教の洗礼を受けた(キリスト教受洗)。これがロシア正教の原点とされる。その後ルーシ国家が枝分かれし、「マロ(小)ルーシ」「ベラ(白)ルーシ」「ベリコ(偉大)ルーシ」という三ルーシ国家が生まれたのである。この三ルーシ国家を合わせて「全ロッシースキー」と称する。これが「ウクライナとベラルーシ、ロシアは三位一体だ」とするプーチン大統領の「ロシア世界」へのこだわりにつながっている。
歴史や成り立ちについては勉強になった。気を逸らさずに意識して情勢を見ていきたい。