【感想・ネタバレ】プーチン戦争の論理(インターナショナル新書)のレビュー

あらすじ

2022年2月24日に始まった「特別軍事作戦」という名の「プーチンの戦争」が、世界を震撼させている。なぜロシアは、ウクライナへ侵攻したのか? なぜ国際社会は、戦争を防ぐことができなかったのか? プーチンの行動を理解するには、ロシアが置かれている軍事的・経済的な状況だけではなく、多くのロシア人がもつ宗教観・民族観を知る必要がある。ロシア研究の第一人者が、新たな「文明の衝突」を解説。入門書にして決定版の一冊。

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Posted by ブクログ

ソ連〜ロシア研究の専門家によるウクライナ戦争の解説。

ウクライナ戦争については、どうしてもウクライナ側、欧米側にたった記事や論評が多く、ロシア側からみようとしていても、実は、ロシア側というより、反米という視点にたったものが多い感じがする。そういうなかで、長年、ソ連〜ロシアを見てきた著者による本は、新しい視点を与えてくれた感じがする。

著者は、この戦争は、長い時間軸のなかでみることの必要性を述べていて、どこが起点になるかというとキリスト教化、正教化した時点となる。

そして、ソ連という建前上、無神論の時代においても、実は正教的なものが指導者の間にもあって、ソ連崩壊後は、それが前面にでてきているということ。

つまり、いわゆる安全保障のための力の論理だけでみることができなくて、宗教を理解することの必要性を説明している。

その指摘の正しさについて、論評はできないが、そういう視点もあるのかということで、いくつもの発見はあった。

本当にそういう因果関係なのか、もしかするとそういうストーリーがあとで構成されているのかは不明だが、プーチンやロシアの人々が生きているストーリーとしては、リアリティがあると思った。

ロシア側の視点を理解することは、今、ロシアがやっていることを幾分も正当化することにはならないのだが、良くも悪くも理解することは、一定レベル、その行動を許してしまうことにもつながる感覚もあり、その辺りが悩ましいところ。

この本は、どうしてプーチンがこの戦争を始めたかということの説明ではあるが、どうしてこうした過酷で残虐な戦争行為がなされているかの説明にはなってないような気がする。

本のなかでも、あまりそうしたことへの言及がなく、その辺のバランスの悪さは感じるところ。

もしかすると、ロシア側からの情報を得るためには、そういうことに言及することで、ルートがなくなってしまうことを恐れ、その辺りは他の著者にお願いというスタンスなのかな?

という前提をおけば、他の本とは一味違う見解がわかって、有益だと思う。

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2023年07月19日

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