中川裕のレビュー一覧
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声にして『序』を読んでみるのがいいです。
すーっと身体にはいってきます。19歳という若さで書き上げた、自然と祖先への愛とリスペクト 滅びゆく民族への憂い 文章にして残せる幸福感を記した 美しい序文に圧倒されてしまいました
最初のおはなし
『梟の神の自ら歌った謡』
銀の雫 降る降るまわりに
ふくろうの神様が、
銀の滴降る降るまわりに,金の滴降る降るまわりに.
と歌いながら子どもたちの頭上をゆくと
成り上がりのお金持ちの子らと貧しい子どもが ふくろうを射ようとしている。
ふくろうの神様は、貧しい子の味方をして 自らその子の矢に捕らわれ、子どもの家に福をさずけるというお話。
とにかくとにかく 言い回しがかわいらしくおかしく描かれて、なんと素晴らしい文章に触れられたのかと嬉しくなってしまいました
アイヌの人達は狩猟民族で、こうして狩りをすれば、持って帰って祀るように感謝をしてからいただくのですね。
そういう様子が謡の中に描かれているのです。そして最後は必ず
_と,ふくろうの神様が語りました._
神様自から語りました。
というのが神謡(カムイ ユカラ)なのだそうです。
13のお話が収められており、梟、狼、幼い狼、狐、など動物の神様と、人の形の神様、ほかに兎や蛙たちが自ら語りましたというスタイル。
炉端でお婆さんが長い夜、家族や友に語って聞かせてきた口承文芸なのですね。
アイヌであり、日本の学校でもとても優秀だった知里幸恵さんは、アイヌ文化研究者の金田一京助さんに見出され、ユカラを本にする事になったのだけれど、もともと心臓が弱く、アイヌ神謡集を推敲し終えた直後に亡くなったそうです。とても残念な事だけど、神様がこの本を書き上げるまで生かしてくれたのかなと、
幸恵さんの残したこのかわいらしく自然の恵に満ちたお話を読む幸せを私は噛みしめました。 -
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漫画ゴールデンカムイを読みながらそこに隠される北海道の四季の移り変わりやアイヌの人々の暮らしを見る副読本
おも・・しろ・・かった・・・!!!
たとえば明治のころの北海道アイヌの村の描写をされていたとして そこに生える植物や住宅の様子を見て四季を感じられるなんて目からうろこでした。
原作漫画のファンになって3年くらいでしかないのですが ずずずっと面白さに魅了され そこから聖地巡礼に赴くようになり ことあるごとに北海道を訪れ 漫画に出てきた場所を尋ねるのもそうなんですが 単なる社会科に出てくる言葉だった「アイヌ」が色を纏い息づいて目の前に現れるなんて 思いもしませんでした。
漫画からアイヌ文様に興味を抱き、コラボイベントも手伝って各地の博物館に赴き文化に触れ 好奇心がうずきました。たぶん理解しているわけではないけれど触れて感じて心が動くのは大事な一歩だと思うんですね。不敬だという人もいるだろうし軽薄だと笑う人もいるだろうけど 漫画がその一歩だったことに感動を禁じえません。
奈良公園で「あ・・ユクだ・・」と思うほどには沼っています。
アイヌの文化が確かにそこにあります。
ゴールデンカムイお好きな方、言葉や風習を知るとまたさらに面白いのでぜひ! -
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前著『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」 』の時はまだ未完だったが、こちらの本はゴールデンカムイが完結してから書かれた公式解説本。まさに完全版。前著と扱うトピックが被っているところはもちろんあるが、具体例や切り口が違うので2冊とも読んでよかった。分厚いぶん、読み応えがあり大満足。カムイたちと共に暮らすアイヌの人々の生活と歴史が、重厚に描かれている。
漫画の細部までこだわって描かれた絵をふんだんに用いてアイヌ文化の基本的知識を教えてくれる。裏設定までたくさん書いてくれているのが作品のファンとして嬉しい。
物語の中盤〜後半で舞台は樺太にうつり、樺太アイヌやニブフ、ヴィルタといった民族の描写も増えるが、北海道アイヌだけでなくそちらの解説も厚い。それぞれの違いがめちゃくちゃ面白い。
特に印象に残ったのは二章の『コタンの生活風景』。チセ(家)の造りから、囲炉裏まわりのどこに座るかというのがけっこう厳格に決まっているのが、飲み会の時みたいだった。もてなす側の席、もてなされる人の席、上席など別れており、家の中で物を置く場所まで明確に決まっていた。神棚のような、クマの骨を祀る場所や、人からもらった物を飾る棚など、配置を知るだけでも面白い。
あとは『アイヌの一年』『世界史の中に見るゴールデンカムイ』の章も最高だった。戊辰戦争で死ななかった世界線の土方歳三が出てくるのはもちろん、ソフィアも実在する帝政ロシアの盗賊を組み合わせて書かれていたのにはびっくりした。 -
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「ゴールデンカムイ」のアイヌ語監修者による、唯一の公式解説本。めちゃくちゃ面白い。
2025年に東京でアイヌ民族の儀礼「イヨマンテ(熊の霊送りの儀礼)」の公演があって、観に行ったのだが、著者の中川先生はそこでも登壇されていた。アイヌ文化の、特に人間とカムイとの関係についてたくさん教えてくれたのだが、この本は、その時の復習とさらなる理解につながった。
ゴールデンカムイを読んでいてもそうでなくても、第一章を読むだけでもめちゃくちゃ面白いと感じると思う。
「アイヌ=人間」に対して、「カムイ」はアイヌの世界で神様を表すのだと思っていたが、全然違う。もっと広い。
犬、猫、スズメ、カラスもカムイ。
木も草も虫もカムイ。
家、船、鍋、茶碗など人間が作ったものもカムイ。
ガスコンロも火もカムイ。
人間を取り巻いているものほぼすべてがカムイ。
しかし、なんでもカムイというわけではない。
この世の中で何らかの活動をしていると考えられ、人間にできないようなことをするものをカムイというらしい。人間のために何らかの役に立ってくれるものじゃないとダメで、カエルはカムイじゃないらしい。むしろ積極的に嫌われているそうだ。
中川先生は、カムイ=自然や人工物を含んだ「環境」と言う。アイヌとカムイが良い関係を結ぶことによって、お互いに幸福な生活が保たれるとされているそうだ。アイヌ文化を知ろうとすれば、この関係を知ることが全ての始まりになる。
カムイはカムイモシリ(カムイの世界)におり、そこでは人間と同じ姿をして暮らしているらしい。クマもカラスも火も木も火もみな人間の姿で、食事したり結婚したり彫刻したり裁縫したりしている。それは霊魂の状態であり、人間には見えない。
カムイモシリからアイヌモシリ(人間の世界)にやってくるとき、カムイたちは衣装を着てくる。火のカムイは火の衣装、ヒグマのカムイはヒグマの衣装(毛皮や肉)。そこで初めて人間の目に見えるようになると考えられている。身につけてくるものは、人間へのお土産でもある。
今書いたのは、ほんの触りだが、八百万の神々がいる日本文化とアイヌ文化の共通点や違いを探しながら読むことができて、めっちゃくちゃ読み応えがあった。世界の見え方、切り取り方がこんなに違うんだと、目から鱗。
他にも「アイヌ文化と縄文文化」「樺太と千島のアイヌ」「アイヌの名前の付け方」「アイヌのグルメ」など、どこ読んでも発見があった。ゴールデンカムイと中川先生に感謝。
購入したのは、映画ゴールデンカムイのロケ地にもなった『野外博物館 北海道開拓の村』の売店。 -
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ページ数560!
新書とは思えない本の厚みです。
この本を読む前に、マンガ「ゴールデンカムイ」を完結まで読んでいることが、必須条件の新書です。
アイヌだけでなく、樺太の少数民族にも触れられていて、初めて知るようなことばかりでした。
印象的だったのが、「第六章 世界史のなかの『ゴールデンカムイ』」です。世界史を履修していないせいかもしれませんが、興味深く読みました。また、マンガを読んだ時よりも、ソフィアのことを好きになりました。
タイトルに「絵から学ぶ」とあるように、ふんだんに漫画のイラストが掲載されています。あらためて、限られた資料からここまでの緻密な絵に再現した野田サトル先生の労力は凄まじかっただろうと思いました。アイヌ語監修の中川先生をはじめ、多くの研究者・関係者の方のチームワークの元、あのような唯一無二の傑作漫画が出来上がったのだなと、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
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漫画ゴールデンカムイはアシリパが好き。
最終話を読み、もっとアイヌについて学びたいと意欲があって探し、この本を知り、即買いました。
ゆっくりと読んでいたのですが、2024年秋から始まった北海道ウポポイのキャンペーンに便乗して旅行に行く準備で忙しく、中断して、旅行から戻ってから続きをじっくりと読みました。
私が特に驚愕したのは、アシリパの真っ白な衣の説明でした。
読んだことのない人に、ぜひ知って欲しい情報です。
アイヌについての入門の書という内容ですが、漫画が好きになった人を仲間のように歓迎してくれる表現や呼びかけがあって照れつつも嬉しく感じました。
明治の時代の、日本、ロシア、世界の動きと一緒にアイヌの世界がどうであったか、より学びたくなります。
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ゴールデンカムイのアイヌ語監修者が作中の一コマを使いながらアイヌ文化について解説する贅沢な一冊。野田サトルさんの書き下ろし短編も収録。
ゴールデンカムイを読んだ方はより一層アイヌ文化に興味が深まり、読んだことのない方は作品も読みたくなるような一冊でした。
起源、言葉、ユカラなどの物語文化、食事などをわかりやすく紹介してくれています。
昨年北海道博物館に行った際に現地で学んだ内容がおおよそ網羅されていて、これを読んだ後に博物館などで展示品、資料などの現物を見るのもまた面白いのではないかと感じました。
やはり漫画から入ってくれるのはとっつきやすい。どんな形でも興味を持って知ってもらうのが大事だなぁと思います。 -
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連載が修了し、物語の最後迄が単行本化もされている、好評な漫画作品『ゴールデンカムイ』をタネに、作中世界で取上げられているアイヌ文化に纏わる話題等を供する本である。同じ著者による「前著」で言及していることと一部は重複するが、それを避けても「こんなにも多くの話題」ということで驚く面も在る。
本書は「前著」以上に、アイヌの一年の暮らしというような事柄や、独自な精神文化を背景にしていると考えられる社会の中での人々の所作や、何かの言い方というような事柄への言及が多い。それらは非常に興味深く、『ゴールデンカムイ』という漫画の描写等を例として示すことで内容が判り易くもなっている。
更に、『ゴールデンカムイ』の物語でも作中人物達が樺太へ渡り、色々な因縁が明らかになり、様々な人達との交流等が生じているというのだが、本書でも「樺太アイヌや他の諸民族、更にサハリンに在ったロシア人」というようなことに関連する事項について、各々の事項に詳しい方達のコラムが掲載され、著者がコメントも加えている。それらの内容が秀逸である。「樺太アイヌや他の諸民族、更にサハリンに在ったロシア人」というようなことは、実は余り知られていないと思う。『ゴールデンカムイ』という漫画をヒントにしながら、余り知られていないことを紹介する形になっているのは非常に好いと思う。
広い範囲でアイヌは活動していたが、人口密度は低い。それ故に「方言」というようなモノが色々と在るのだという。更に樺太と北海道となると、身近な単語というレベルで差異も生じているようで、本書にはそういう説明も在った。そういう様子でも、或る程度広い範囲で往来し、交易等をしていたのがアイヌである。
自身は『ゴールデンカムイ』に関しては、今年になって実写映画を愉しく観たという関わり方であり、作品に通じているという程ではない。が、それでもその漫画を話しの入口や材料にしながら、北海道や樺太のアイヌ等に関して語られている本書の内容は凄く興味深い。新書としてはかなり分厚いのだが、ドンドン読み進められる。興味深い内容で、頁を繰る手が停められなくなる。 -
Posted by ブクログ
本書は2019年に登場している。「好評連載中」であった漫画『ゴールデンカムイ』を踏まえ、アイヌ文化に纏わる話題を提起し、作中の関係の描写等を少し出して少し踏み込んで話題を展開する訳である。その手法が面白い。
正直、自身は漫画『ゴールデンカムイ』を読んではいない。最近公開の実写映画を大変に愉しく観た。そこで作中の時代や、出て来る様々な文物に興味が湧いて、新たに『ゴールデンカムイ』に題材を求めたアイヌ文化等の話題の本が出ると知った時、「同じ著者による“前著”」を押さえようとした訳だ。そういう思い付きで、こちらも読んでみて正解であったと思う。漫画に通暁していなくても十二分に愉しい。
本書は、アイヌの言う「カムイ」という概念に関して詳しく、非常に勉強になった。
アイヌは自然と共生することを意図していたとされるが、必ずしもそれに留まらないということが本書で説かれている。アイヌは身近な様々なモノに魂のようなモノが在って、それらと共に在ることを意図していたようだ。偉大な自然に留まらず、家屋や、家の中等で使う様々な道具や、その他様々なモノに魂が在って、その存在を時に意図する訳である。
そしてアイヌは、自給自足ということに留まらず、酔いすることが可能なモノを多く用意して、それを利用した交易を行うことを旨とするような生き方をしようとしていたという。
或いは厳しい自然の中で生きることを代々受け継いだアイヌは、「自ずと合理的な考え方を持ち、それを実践しようとしていた」というようにも見える。
なかなかに興味深いので御薦めしたい一冊だ。 -
Posted by ブクログ
待ちに待ったゴールデンカムイのアイヌ語監修中川さんのゴールデンカムイ関連の続刊。
まず、分厚さに驚き。すごい分量です。
中でも触れられていた通り、前著より漫画からの絵の引用が多いとのことでより漫画からの関連で語る視点で漫画ゴールデンカムイがお好きならスラスラ読み進められると思います。
途中、樺太、ソフィアの話など道外の話になると世界史真面目に勉強しておけばよかったな〜とはなりました。
実写映画を見てゴールデンカムイ熱があがるタイミングでしたのでこのタイミングでの刊行はとても良く、アイヌについてもゴールデンカムイについても興味がより深まりもっと知りたいと思える相乗効果を生んだなと感心します。
実は、この本を読む前はアイヌ単体への興味は持てないかもしれないと大変失礼なことを思っていたのです。
自分がアイヌに興味を持てるのはゴールデンカムイの物語、キャラの魅力があるからでそれなしでのアイヌ文化は面白いと思えないかも、と。
とても失礼でしたし、わかっていなかったなと読んだ後では思えます。
どれほど野田先生が、ゴールデンカムイという作品を作り上げるためにアイヌ文化を尊敬し、調査、取材をし、綿密に作品に織り込ませ確立させたことか。
アイヌの文化あってこそ、アイヌの文化へのリスペクトがあってこそ不思議な偶然が重なり、作品にパワーがより足されたのではないか。そういうことが納得できました。
ゴールデンカムイありなしとかではなく、ゴールデンカムイはアイヌ文化なしでは語れなく、切っても切り離せないのかなと。
単行本の最後の監修、取材協力のクレジットのページを見るたびに、凄まじい量に圧倒されたものです。
週刊連載で?と信じられないほど。
実写映画を見て、原作漫画へのリスペクトと愛を大いに感じました。実写、2時間の映画として再構築して映画としても素晴らしく、漫画原作の実写としてのプロジェクトとしても素晴らしく、同時期にあった悲しい出来事とあまりにかけ離れていて、よほどこの作品に関わる人は本当に漫画原作を愛し、大事にしているのだなと思えました。
改めてこの本を読んだ時に、連載、単行本加筆修正時に監修の方々や取材協力の方々は野田先生の漫画への真摯な取り組みに賛同して協力してくれたのだろうと今更よりその協力のつながりに感動しました。
それについては野田先生がしっかり描きたい気持ちが強く取材を欠かさず真摯な姿勢で挑み続けたからこそ周りも応えたくなったのかなと想像してます。
本著の「おわりに」で触れられていた、「先人がさまざまな記録・資料として残してくれた」(P541から抜粋引用)ことがどれだけ偉大なことか。
大事なものを後世に繋いでいかなくてはと思わされました。命が尽きても、残したいものを残す努力をして、それが繋いでいく奇跡を信じると、いつか未来にそれを引き継いで大事にしてくれる人がいるなんて素敵だな。それなら、カムイも、野田先生に微笑むよなぁと思えました。
北海道に行ってみたい。